↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら西瓜のなかだった。鬼退治をするつもりが、鬼が可愛く見える奴らばっかりだった件  作者: 転生者が西瓜だったら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/33

あたしは、子猫じゃないサードアイにゃん

「相棒、山の主以外の呼び名はないのか? 名前で呼びたいんだけど」


「名前など不要じゃ、ご主人よ。我々にはな……」


「相棒なんだから、俺のことはサイカって呼んでくれ。名前は俺が決めるから、気に入らなかったら言ってくれ」


サイカは腕を組み、顎に手を当てて少し考え込んだ。


「それじゃあ、サードアイ。略してサードでどうだ?」


「安直な名前だなぁ……まあ良かろう、サイカよ」


文句を言いながらも、サードのしっぽは左右にぶんぶん揺れていた。


「よし。それじゃ一旦、山のこちら側に戻るか。目的以上の大成果だ」


「あたしもついて行くぞ。姿は小さくできる。この山は、さっきの黒狼に任せれば問題ない」


サードの言葉を聞いて、サイカはふと疑問を口にした。


「というかサード、お前って一体何者なんだ? 人間の言葉も普通に喋るし」


「あたしは、あたしだにゃ……昔は『ケルベロス』なんて呼ばれたこともあったにゃ」


「ケルベロスって猫科だったのか?」


「猫じゃないにゃ! ゴホン……サイカの方こそ、あの団子はなんなんだ? あんな美味そうな匂い、嗅いだことないにゃ」


「サードは相棒だし、話しておくか」


サイカが異世界転生のことや、神さまから貰ったスキルについて一通り説明すると、サードは三つの目を丸くした。


「へぇ〜、そんなこと本当にあるのかにゃ。サイカは嘘をつけるタイプに見えないし、あのきび団子は絶品だったにゃ」


団子の味を思い出したのか、サードのしっぽがまた激しく揺れる。


その時、サイカが急に真面目な顔になった。


「サイカ、いきなり真面目な顔してどうしたにゃ?」


「サード、頼みがある。……ぐぅ〜」


サイカのお腹が派手に鳴った。


「……お腹すいたな。先に帰ろう」


「ズコーッ! シリアスな雰囲気はどこ行ったにゃ!?」


「家に帰ってから話すよ。暗くなったら爺ちゃん婆ちゃんが心配するし、婆ちゃんのご飯は美味いぞ。それに俺、まだ六歳だからな」


サイカとサードは、急いで来た道を戻っていった。


*


「もうすぐ山を出るぞ。サード、仔犬くらいの大きさになれるか?」


辺りはすっかり暗くなっていた。


「なれないこともないが、いざという時にサイカを守れないにゃ」


「大丈夫だ。村には『ドラゴンの加護』があるから、魔物に襲われることはないらしい」


「ドラゴンの加護? そんなもの、聞いたことないにゃ」


「おかしいな……山の主が知らない加護か……」


サイカが首を傾げているうちに山を抜け、村へ入った。


「もう村の中だにゃ。じゃあ小さくなるにゃ。何度も言うが、猫じゃないからな!」


ポンと煙が上がり、サードは小さな子猫のような姿に変わった。


家の前まで来ると、お爺さんが腕を組んで待っていた。


「サイカか! もう真っ暗じゃぞ。何しとったんじゃ。婆さんが心配しとる。早く家に入れ」


「爺ちゃん、お願いがあるんだけど」


「なんじゃ、言ってみな」


サイカは後ろにいたサードを抱き上げた。


「子猫じゃないかい。飼いたいのか、サイカよ」


「うん。すごく懐かれちゃって。可愛いし、お世話もちゃんとするからさ」


すると、サイカの腕の中でサードが口を開いた。


「お願いするにゃ」


「……!」


お爺さんは目を丸くした。


「なんと、喋る子猫とな!? 婆さん、婆さんやーっ!」


――あ。喋るなって言うの忘れてた。


*


お婆さんの手料理をたらふく食べたあと、サイカの部屋で二人は寛いでいた。


「お婆さんのご飯、本当に美味かったから、子猫と言われた件は許してやるにゃ」


「まあ、西瓜から生まれた俺を育ててる爺ちゃん婆ちゃんだし、喋るくらいならすぐ慣れるだろ」


「だ・か・ら! 猫でも犬でもないにゃん……」


サードがすかさずサイカの手を引っ掻いた。


「いてっ! さっき許したんじゃなかったのかよ」


「爺さんは許したにゃ。サイカは今言ったにゃ」


サイカは手をさすりながら苦笑した。


そして、再び真面目な顔になる。


「サード、さっきの続きだ。この村の周辺はドラゴンの加護で守られているって言ったよな」


「さっき聞いたにゃ。だが、ドラゴンがそんなことをするとは聞いたことがないから、少し驚いたにゃ」


サイカは少し間を置いた。


「その加護の代わりに……十年に一度、村の若い娘を生贄に捧げているんだ」


サードのしっぽが止まった。


「俺は、それを止めたい。相手が本物のドラゴンでも」


サイカはサードをまっすぐ見つめる。


「どれだけ強い相手か分からない。それでも、手伝ってくれるか?」


サイカは深々と頭を下げた。


サードは、その頭にポンと前足を乗せる。


「頭を上げるのだ、主人よ。あたしの主人はサイカだけだ。当然、手伝うにゃん」


「ありがとう、サード。本当に助かるよ」


サイカがサードの頭を撫でると、サードは嬉しそうにしっぽを振った。


「それとサード、村の中では滅多に喋らないでくれよ? 怪しまれるからな」


「わかったにゃん」


その時――。


「サイカー!」


外からパタパタと足音が響き、弥生姉ちゃんが部屋へ飛び込んできた。


「弥生お姉ちゃん」


「サイカ! 何そのキュートで可愛い子猫は!? どこから連れてきたの!?」


「山で出会って、懐かれたんだ。名前はサード」


「抱いてみてもいい?」


「もちろん」


「ありがとう! よろしくね、サードちゃん!」


弥生姉ちゃんに抱き上げられたサードは、サイカへ目を向けた。


――生贄ってのは、この娘のことだな。


そう言いたげな目だった。


だが、そのしっぽは激しく左右に揺れている。


サイカは弥生の笑顔を見つめたあと、二つ向こうの山へ厳しい目を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。