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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第83話 狙撃

 静かすぎた。


 さっきまでの戦場が嘘のように。


 風の音だけが残っている。


 「……引いた、よな」


 誰かが呟く。


 だが。


 その安堵は、長く続かなかった。


 「伏せろ!」


 カイルの声が飛ぶ。


 直後。


 ――爆ぜた。


 音が遅れてくる。


 衝撃が地面を抉る。


 ついさっきまで最大層の一人が立っていた場所。


 そこが、消えていた。


 ミレアが歯を食いしばる。


「……遠距離!」


「はい」


 カイルは視線を上げる。


 見えない。


 だが。


 分かる。


 位置。


 角度。


 狙い。


 「……来ましたね」


 エルザの声が震える。


「最大層、狙撃されています」


 その通りだった。


 さっきの戦いで。


 敵は確認した。


 どこを壊せばいいか。


 そして今。


 壊しに来ている。


 「分かりやすいですね」


 カイルが言う。


 その声は変わらない。


 だが。


 空気は変わる。


 ミレアが叫ぶ。


「分かりやすくてもどうすんのよ!」


「はい」


 一拍。


「対処します」


 次の瞬間。


 また来る。


 音はない。


 気配だけ。


 カイルが一歩動く。


 最小の移動。


 その瞬間。


 地面が抉れる。


 紙一重。


 ミレアが息を呑む。


「……見えてるの?」


「はい」


「嘘でしょ」


 だが。


 それは事実だった。


 完全ではない。


 だが。


 “読める”。


 「全員、散開」


 カイルが言う。


「密集すると終わります」


 兵士たちが動く。


 広がる。


 だが。


 それが逆に。


 「孤立する!」


 エルザが叫ぶ。


 そう。


 散開すれば。


 繋がりが切れる。


 再現も。


 中間も。


 崩れる。


 つまり。


 「詰みじゃない!」


 ミレアが叫ぶ。


「はい」


 カイルは答える。


 冷静に。


「その通りです」


 一拍。


 そして。


「だから変えます」


 ミレアが一瞬止まる。


「何を」


「前提です」


 次の瞬間。


 また一撃。


 兵士の一人が吹き飛ばされる。


 致命傷ではない。


 だが。


 動けない。


 最大層が減る。


 確実に。


 「……時間がない」


 エルザが呟く。


 カイルは頷く。


「はい」


 一拍。


「なら」


 前に出る。


 最大層。


 だが。


 単独ではない。


 ミレアが隣に立つ。


「行くわよ」


「はい」


 二人。


 前に出る。


 あえて。


 目立つ位置へ。


 エルザが叫ぶ。


「何を――!」


「囮です」


 カイルが言う。


 その瞬間。


 来る。


 速い。


 正確。


 だが。


 今度は。


 “見えている”。


 カイルが動く。


 半歩。


 流す。


 そして。


 ミレアが踏み込む。


 逆方向へ。


 「そこ!」


 振る。


 衝撃。


 だが。


 何もない。


 空。


 ミレアが舌打ちする。


「見えないっての!」


「はい」


 カイルは言う。


「ですが」


 一拍。


「位置は確定しました」


 エルザが息を呑む。


「……まさか」


「はい」


 カイルは振り返る。


「中間層、前へ」


 兵士たちが動く。


 未完成の中間。


 だが。


 今は使う。


 広がる。


 薄く。


 広く。


 「網を張る」


 ミレアが笑う。


「やるじゃない」


 再現ではない。


 最大でもない。


 中間。


 その曖昧さ。


 それが。


 今は強い。


 次の瞬間。


 衝撃。


 だが。


 今度は。


 止まる。


 完全ではない。


 だが。


 軌道がズレる。


 カイルが言う。


「そこです」


 指差す。


 遠く。


 影。


 一瞬だけ見えた。


 黒。


 細い。


 人影。


 「……いた!」


 ミレアが笑う。


 その瞬間。


 敵が動く。


 撤退。


 速い。


 だが。


 今度は。


 追える。


 「逃がさない!」


 ミレアが踏み込む。


 だが。


 カイルが止める。


「追いません」


「なんで!」


「意味がないです」


 一拍。


「一人ではない」


 静寂。


 エルザが言う。


「……複数」


「はい」


 カイルは頷く。


「これは」


 一拍。


「運用です」


 戦術。


 仕組み。


 つまり。


 「個人じゃない」


 ミレアが呟く。


 その通り。


 これは。


 構造対構造。


 カイルは言う。


「こちらも変えます」


「どうやって」


 一拍。


 カイルは答えた。


「最大層を隠します」


 その言葉で。


 空気が変わる。


 エルザが息を呑む。


「……そんなこと」


「できます」


 カイルは言う。


「見せなければいい」


 ミレアが笑う。


「なるほどね」


 一拍。


「面白くなってきた」


 だが。


 それは同時に。


 次の戦いの始まりだった。

読んでいただきありがとうございます。


今回は「最大層が狙われる」という、構造そのものの弱点が露呈する回でした。

そして、初めて“敵の運用”が見え始めています。


次は――「隠す戦い」です。


ここからさらに戦いの質が変わります。


ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


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