第76話 実戦投入
角笛が、もう一度鳴った。
今度は長い。
警戒ではない。
――戦闘。
砦の空気が一気に変わる。
「配置につけ!」
将校の声が響く。
兵士たちが動く。
速い。
だが。
整っていない。
焦りがある。
ミレアが振り向く。
「……行きますよ」
「はい」
カイルは短く答える。
五人の兵士が集まる。
選ばれた三人。
そして補助の二人。
全員の目が変わっている。
訓練ではない。
実戦。
失敗すれば終わる。
エルザが言う。
「配置、中央寄り」
「はい」
「最も圧が来る位置です」
ミレアが笑う。
「分かりやすいですね」
「はい」
カイルは頷く。
「証明に最適です」
砦の外。
視界の先に、影が揺れる。
数は多くない。
だが。
密度が違う。
「……質が上がってる」
ミレアが言う。
「はい」
カイルは見る。
動き。
間合い。
圧。
「統制されています」
つまり。
ただの群れではない。
エルザが低く言う。
「ヴァルディア」
その可能性が高い。
実験。
再び。
だが今度は。
「ちょうどいいです」
カイルが言う。
ミレアが笑う。
「本当に言いますね」
「はい」
「ここで勝てばいい」
それだけ。
将校が叫ぶ。
「接触!」
魔物が突進してくる。
速い。
重い。
一直線。
盾兵が構える。
だが。
揃っていない。
焦り。
乱れ。
衝突。
鈍い音。
一部が押される。
「……まずい」
ミレアが言う。
カイルは動く。
「入ります」
五人が前に出る。
中央。
最も圧がかかる位置。
盾兵の隙間に滑り込む。
「ここでいいですか!」
兵士が叫ぶ。
「はい」
カイルが言う。
「維持してください」
再現層。
三人が構える。
足。
半歩。
固定。
衝撃が来る。
受ける。
流す。
崩れない。
「……止まった!」
後ろの兵士が叫ぶ。
ミレアが言う。
「そのまま!」
維持。
均一。
揃う。
周囲の兵士も、それに引っ張られる。
乱れが減る。
安定する。
エルザが呟く。
「……伝播」
再現層は。
広がる。
その時。
別方向から突進が来る。
速い。
強い。
再現層だけでは足りない。
ミレアが叫ぶ。
「来る!」
カイルが言う。
「切り替え」
一人が前に出る。
最大層。
踏み込む。
振る。
衝撃。
深い。
魔物が弾かれる。
「……入った!」
流れが変わる。
押し返す。
周囲の兵士が続く。
士気が上がる。
だが。
次の瞬間。
横から別の魔物が来る。
速い。
予測外。
一人の兵士が反応できない。
「――っ!」
ミレアが動く。
だが。
間に合わない。
その瞬間。
カイルが一歩出た。
足。
半歩。
流す。
衝撃が抜ける。
そして。
最小の動きで。
最大の位置へ。
振る。
決まる。
静寂。
ミレアが息を吐く。
「……今の」
カイルは言う。
「両方です」
再現と最大。
同時。
それが。
答え。
周囲の兵士がそれを見る。
理解する。
真似する。
完全ではない。
だが。
変わる。
流れが。
将校が叫ぶ。
「押し返せ!」
全体が前に出る。
魔物が後退する。
崩れる。
逃げる。
戦場が。
変わる。
エルザが記録する。
「……効率上昇」
ミレアが笑う。
「見せましたね」
カイルは静かに言う。
「はい」
その時。
砦の上。
一人の影が立っていた。
誰も気づいていない。
だが。
カイルは見ていた。
王。
すでに。
見ている。
そして。
戦場の評価は。
始まっていた。
ここで「理論→実戦」に完全移行しました。
そしてついに――王が登場。
次は「評価」そのものになります。
ここがこの章の最大の山場です。
ブックマーク・評価してもらえると嬉しいです。
続きをお楽しみに。




