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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第70話 監査官

 朝の空気が、いつもより張り詰めていた。


 訓練場にいる五人の兵士も、それを感じている。


 いつも通りのはずの動き。


 足を半歩。

 衝撃を流す。

 止めない。


 だが今日は、妙に静かだった。


 ミレアが小さく言う。


「……来ますね」


 カイルは答えない。


 ただ入口を見る。


 次の瞬間。


 足音が揃って響いた。


 無駄のない歩調。


 兵士ではない。


 軍人とも違う。


 入ってきたのは三人。


 中央の男は、黒い外套を着ていた。


 装飾はない。


 だが視線だけで空気を変える。


「監査局です」


 短い言葉。


 エルザが一歩前に出る。


「記録官エルザです。受け入れ準備は完了しています」


 男は頷いた。


 視線はすでに訓練場全体を見ている。


 五人の兵士。


 ミレア。


 カイル。


 そして、足元。


「……簡易訓練ですか」


 淡々とした声。


 評価ではない。


 確認。


 ミレアが答える。


「再現工程の構築です」


「再現?」


 男はわずかに首を傾ける。


「例外技術の?」


「はい」


 一拍。


「可能な範囲で」


 男は一歩進む。


 兵士の動きを見る。


「やってください」


 命令ではない。


 指示。


 五人が動く。


 押す。


 受ける。


 流す。


 安定している。


 昨日より明らかに良い。


 だが。


 男は言った。


「再現率」


 エルザが即答する。


「現在六割です」


「低い」


 即断だった。


 ミレアが言う。


「段階的に上げています」


「評価対象は結果です」


 一拍。


「過程ではありません」


 空気が変わる。


 冷たい。


 ミレアが一瞬だけ言葉を止める。


 だがすぐに言う。


「結果は出します」


 男は興味なさそうに頷く。


 そして。


 カイルを見る。


「あなたが例外技術保持者」


「はい」


「確認します」


 一歩近づく。


「あなたの技術は」


 一拍。


「再現可能ですか」


 カイルは答える。


「一部は」


「一部では足りません」


 即答。


 男は続ける。


「制度とは」


 一拍。


「全体に適用できるものです」


 正論。


 だが。


 カイルは言う。


「全体に適用しません」


 男の動きが、わずかに止まる。


「……どういう意味ですか」


「分けます」


 一拍。


「再現層と最大層」


 エルザが横で補足する。


「二段構造です」


 男は少しだけ考える。


 初めて。


「……非効率ですね」


「はい」


 カイルは頷く。


「ですが」


 一拍。


「効果は出ます」


 男は沈黙する。


 そして言った。


「証明を」


 短い。


 だが重い。


「本日中に」


 ミレアが目を見開く。


「今日?」


「はい」


「それは――」


「評価期間は一ヶ月です」


 一拍。


「ですが」


 視線が鋭くなる。


「途中評価はあります」


 エルザの手が止まる。


「……中間監査」


「はい」


 男は淡々と続ける。


「ここで不合格なら」


 一拍。


「終了です」


 静寂。


 五人の兵士が息を呑む。


 ミレアが歯を食いしばる。


 だが。


 カイルは変わらない。


「分かりました」


 男は頷く。


「では」


 一歩下がる。


「準備を」


 時間はない。


 今日中。


 結果を出せなければ。


 終わる。


 ミレアが小さく呟く。


「……いきなり潰しに来ましたね」


 カイルは静かに言った。


「いいですね」


「何がです?」


「条件が明確です」


 一拍。


「作れます」


 ミレアが笑う。


 緊張の中で。


「やるしかないですね」


 五人の兵士が剣を握る。


 まだ完成していない。


 だが。


 やるしかない。


 カイルは静かに言った。


「最大層を使います」


 エルザが振り向く。


「今ここで?」


「はい」


 一拍。


「証明します」


 例外が。


 制度になるかどうか。


 その分岐点が――


 今、始まった。

ここから一気に緊張を上げていきます。


「時間」「評価」「監査」という“逃げ場のない条件”を入れたので、

ここからは毎話が勝負になります。


次は――「証明」です。


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