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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第69話 再現の壁

 選ばれた五人は、すぐに別の区画へ移された。


 通常の訓練場ではない。


 簡易だが、明確に区切られた空間。


 外からは見えない。


「ここからは非公開です」


 ミレアが言う。


 五人が少しだけ緊張する。


 エルザが補足する。


「記録は取りますが、外には出しません」


 つまり。


 “完成してから見せる”


 カイルのやり方だった。


「始めます」


 ミレアが合図する。


 訓練は、昨日までとは違っていた。


 段階が細かい。


 足の位置。


 重心の移動。


 腕の角度。


 一つずつ分解されている。


「止めない」


「逃がす」


「先に動くのは足」


 繰り返す。


 何度も。


 最初はできていた五人も、崩れる。


「違う」


 ミレアが止める。


「今、止めました」


「……くそ」


 兵士が歯を食いしばる。


 もう一度。


 やり直す。


 だが。


 安定しない。


 エルザが記録を見ながら言う。


「再現率、四割」


 低い。


 ミレアが息を吐く。


「やっぱり来ますね」


 カイルが言う。


「はい」


 再現の壁。


 理解できても、できない。


 それが属人技術。


 兵士の一人が言う。


「頭では分かるんだけどな……」


「体がついてこない」


 別の兵士も頷く。


 カイルは静かに近づいた。


「止めてください」


 ミレアが振り向く。


「はい」


 全員の動きが止まる。


 カイルは一人の兵士の足元を見る。


 そして言った。


「動きすぎです」


「……え?」


「逃がしすぎています」


 一拍。


「だから戻れません」


 兵士が考える。


 ミレアが理解する。


「……最小ですね」


「はい」


 カイルは頷く。


「逃がす量を固定します」


 エルザがすぐに記録する。


「基準値……設定可能」


 ミレアが兵士に言う。


「半歩だけです」


「半歩?」


「それ以上動かない」


 再開。


 押される。


 兵士が半歩だけ動く。


 止まる。


 衝撃が流れる。


「……あ」


 兵士が呟く。


「安定した」


 もう一度。


 同じ。


 同じ結果。


 エルザが言う。


「再現率、上昇」


 ミレアが笑う。


「分解できましたね」


 カイルは静かに言う。


「変数を減らしました」


 自由度を削る。


 だから再現できる。


 兵士たちの動きが揃ってくる。


 安定する。


 繰り返せる。


 だが。


 その時。


 一人の兵士が言った。


「……弱いな」


 空気が変わる。


「さっきより安定はしてる」


 一拍。


「でも、威力が落ちてる」


 ミレアが止まる。


 エルザが記録を見る。


「出力低下……確認」


 カイルは静かに言った。


「当然です」


 兵士が聞く。


「なんでだ?」


「制限したので」


 一拍。


「最大が出ません」


 再現性と最大値。


 トレードオフ。


 それが現実だった。


 ミレアが小さく呟く。


「……来ましたね」


 壁。


 カイルの技術は。


 再現すれば弱くなる。


 強くすれば再現できない。


 エルザが低く言う。


「制度としては」


 一拍。


「再現性が優先されます」


 つまり。


 弱い方が正しい。


 カイルは少しだけ考えた。


 そして言う。


「分けます」


 ミレアが振り向く。


「何を?」


「層です」


 一拍。


「再現用と、最大用」


 エルザが理解する。


「……二段構造」


「はい」


 全員が同じではない。


 だが。


 全体として機能する。


 ミレアが笑う。


「それ、制度っぽいですね」


 カイルは静かに言った。


「制度にします」


 例外は。


 個人ではなくなり始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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