表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/78

第56話 守られる技術

 夜の砦は、静かだった。


 戦場の喧騒が嘘のように消え、残っているのは火のはぜる音だけだった。


 整備区画の隅。


 カイルは、壊れた盾を分解していた。


 釘を抜き、金具を外し、歪みを確認する。


 無言の作業。


 だがその手は、いつもよりわずかに遅い。


「……珍しいですね」


 ミレアが背後から言った。


「手が止まっています」


 カイルは答えない。


 ただ、盾の断面を見ている。


「考えてますね」


 ミレアは隣に座った。


「ヴァルディアの話」


 しばらく沈黙が続いた。


 やがてカイルが言う。


「合理的でした」


「ええ」


「間違っていません」


 ミレアは少しだけ笑った。


「そうですね」


 否定しない。


 それがこの会話の前提だった。


「国家が保護する」


 カイルは言う。


「技術を残す」


「はい」


「正しいです」


 ミレアは頷いた。


「正しいです」


 だが、そのあとに続けた。


「でも、それで終わりです」


 カイルがわずかに顔を上げる。


「終わり?」


「ええ」


 ミレアは壊れた盾の破片を手に取った。


「これ、誰が直します?」


「整備兵です」


「どうやって?」


「規格通りに」


「はい」


 一拍。


「じゃあ、規格が間違っていたら?」


 カイルは答えない。


 ミレアは続ける。


「誰も直せません」


 火の音だけが響く。


「守られた技術って」


 静かな声。


「変わらないんですよ」


 カイルの手が止まる。


「国家が守ると」


 ミレアは言う。


「壊れないようにする」


「はい」


「つまり」


 一拍。


「壊してはいけない」


 それは――


 更新の停止だった。


「技術って」


 ミレアは盾の断面を指でなぞる。


「壊れるから進むんです」


 歪み。


 亀裂。


 失敗。


 それを見て、次を作る。


「でも守られると」


 一拍。


「壊せなくなる」


 カイルの目がわずかに細くなる。


 ミレアはカイルを見る。


「さっきの戦場」


「ええ」


「規格は正しかったですか?」


「……いいえ」


「じゃあ」


 小さく笑う。


「壊れてよかったんです」


 あの盾は。


 あの隊形は。


 壊れたから、変えられた。


 カイルはゆっくりと言った。


「ヴァルディアでは」


「はい」


「壊せない」


「ええ」


 ミレアは頷く。


「壊すと怒られます」


 少しだけ冗談めいた口調。


 だが本質だった。


「守られる技術は」


 一拍。


「死にます」


 その言葉は、重かった。


 カイルは静かに盾の破片を見た。


 歪み。


 亀裂。


 不完全。


 だがそこにこそ、次がある。


 ミレアが立ち上がる。


「カイルさんは」


 振り返る。


「どっちがいいですか?」


 守られるか。


 壊れるか。


 カイルはすぐには答えなかった。


 ただ、壊れた盾を手に取り――


 小さく言った。


「壊れる方が」


 一拍。


「作れます」


 ミレアが、少しだけ笑った。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ