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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第57話 王の定義

 王は、静かに座っていた。


 玉座ではない。


 戦地に設けられた簡易の指揮席。


 だが、その場の空気は完全に支配されていた。


 将校たちが並ぶ。


 エルザが一歩下がる。


 ミレアも口を閉じる。


 そして――


 カイルだけが、王と視線を合わせていた。


「報告は聞いた」


 王が言う。


「戦線は維持」


「はい」


 将校が答える。


「損耗は?」


「軽微です」


 王は一度だけ頷いた。


 そして、視線をカイルへ向ける。


「例外技術保持者」


 その呼び方は変わらない。


「お前が関与した結果だな」


「はい」


 カイルは短く答える。


 王はしばらく何も言わなかった。


 ただ見ている。


 値踏みではない。


 確認。


 やがて、王が口を開いた。


「ヴァルディアの観測官と話したな」


「はい」


「内容は把握している」


 当然だった。


 王は続ける。


「合理的だ」


 カイルは答えない。


「属人技術は国家が管理するべき」


 正論。


「技術を残すためには必要な判断だ」


 ここまでは、否定しない。


 だが。


 王は一歩だけ踏み込んだ。


「だから」


 一拍。


「お前を管理する」


 空気が変わる。


 将校たちが息を呑む。


 命令ではない。


 宣言だった。


 王は続ける。


「お前の技術は、国家の資産だ」


「……」


「個人に任せるには危険すぎる」


 合理。


 秩序。


 国家。


 すべてが揃っている。


 ミレアがわずかに眉を寄せる。


 だが口は出さない。


 これはカイルの場だ。


 王は言う。


「拒否は認めない」


 静かに。


 だが絶対の言葉。


「必要ならば、拘束する」


 その瞬間。


 空気が凍った。


 将校すら動かない。


 これは脅しではない。


 本気だ。


 王はできる。


 カイルは、少しだけ考えた。


 ほんの一瞬。


 そして答えた。


「管理された技術は」


 一拍。


「壊れます」


 王の目が、わずかに細くなる。


「理由は」


「変えられないからです」


 静かな声。


「壊せない技術は、進みません」


 王は何も言わない。


 ただ聞いている。


 カイルは続ける。


「今日の戦場」


「……」


「規格装備は正しかったです」


「そうだ」


「ですが壊れました」


 一拍。


「だから変えられました」


 ミレアの言葉が、そのまま形になっていた。


「もし壊せなかったら」


「……」


「全滅していました」


 沈黙。


 王の視線は動かない。


 カイルはさらに踏み込む。


「管理された技術は」


 一拍。


「壊れることを許されません」


 そして。


「壊れる前提で作る方が」


 静かに言う。


「危険です」


 王の目が、わずかに動いた。


 それは初めての変化だった。


「……危険か」


「はい」


「なぜだ」


 カイルは答える。


「壊れたとき」


 一拍。


「誰も対応できないからです」


 現場は止まる。


 兵士は死ぬ。


 それが現実。


 王は、しばらく黙っていた。


 やがて言う。


「ならば」


 一歩、言葉を強くする。


「お前は国家にとって危険だ」


 その一言で、空気が張り詰める。


 処分。


 排除。


 その可能性が、現実になる。


 ミレアの手がわずかに動く。


 だが止まる。


 カイルは、視線を逸らさなかった。


 そして答えた。


「危険なのは」


 一拍。


「壊れない前提です」


 王の目が、完全に止まった。


 時間が、わずかに伸びる。


 誰も動かない。


 やがて――


 王が、ほんのわずかに笑った。


 それは、初めての表情だった。


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