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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第52話 測定の崩壊

 第二波は、第一波とは比べものにならない圧だった。


 丘の斜面を埋め尽くすように、魔物が押し寄せてくる。


 中央。

 左翼。

 右翼。


 三方向からの圧力。


 将校が叫ぶ。


「側面隊、持ちこたえろ!」


 弓兵の矢が降る。

 槍が突き出される。


 だが魔物は止まらない。


 猪型が盾にぶつかる。


 衝撃。


 盾兵の足が滑る。


 だが隊列は崩れない。


 斜めの防御。


 傾斜を利用した足場。


 第一波で作った形が、まだ機能している。


 ミレアが低く言う。


「中央は持っています」


「はい」


 カイルは森を見た。


 問題はそこではない。


 敵の技術者は見ている。


 どこで壊れるか。


 どこで崩れるか。


 そして今――


 その計測は進んでいる。


 森の奥で三つの魔石が光る。


 魔物の流れが変わる。


 右翼に圧が集中する。


 将校が歯を食いしばる。


「来るぞ!」


 突進。


 盾が受ける。


 衝撃。


 だが今度は、兵士が半歩下がる。


 斜面を使って衝撃を流す。


 さらに後ろの兵士が肩で支える。


 衝撃が分散する。


 盾は割れない。


 ミレアが小さく笑う。


「測定が狂いますね」


「ええ」


 カイルは頷いた。


 向こうは同じ負荷を繰り返して測定している。


 だが今は違う。


 衝撃が毎回変わる。


 角度も。


 力も。


 計測が崩れる。


 その瞬間。


 森の奥で、魔石の光が一瞬だけ乱れた。


 カイルの目が細くなる。


「反応しました」


 ミレアが頷く。


「計測器が追いついていません」


 魔物の流れが乱れる。


 突進の角度が揃わなくなる。


 盾兵が叫ぶ。


「押し返せる!」


 槍が深く刺さる。


 魔物が次々と倒れる。


 将校が振り向く。


「これは……」


 カイルは静かに言った。


「測定が壊れました」


 技術者は測定を信じる。


 だが測定が崩れれば、判断も崩れる。


 森の奥で、光が消えた。


 魔石の柱が一つ、沈黙する。


 ミレアが息を吐く。


「装置が停止しました」


 カイルは頷いた。


「向こうは理解しました」


「何をです?」


 ミレアが聞く。


 カイルは森を見た。


「この戦場では」


 一拍。


「測れない」


 そしてそれは――


 向こうの技術者への答えだった。

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