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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第51話 境界線

 角笛の音が砦全体に響いた。


 第一波よりも重い振動が地面を伝ってくる。


 将校が作戦室の扉を開け放つ。


「全隊、防衛線へ戻れ!」


 兵士たちが一斉に走り出す。


 カイルも丘へ向かって歩き出した。


 ミレアが横につく。


「第二波……早すぎます」


「ええ」


 カイルは短く答える。


「観察が終わった」


 つまり――


 本番だ。


 丘の上に出ると、森の奥が黒くうねっていた。


 第一波より密度が濃い。


 狼型の群れに加え、大型の猪型魔物が混ざっている。


 兵士の一人が呟いた。


「……多すぎる」


 盾兵たちが再び隊列を組む。


 斜めの防御陣形。


 丘の傾斜を利用した配置。


 だが今回は違う。


 魔物が散開している。


 正面だけではない。


 左右からも迫る。


 将校が叫ぶ。


「側面警戒!」


 弓兵が矢を放つ。


 数匹が倒れる。


 だが群れは止まらない。


 ミレアが低く言う。


「隊形を読まれています」


「ええ」


 カイルは頷いた。


 向こうの技術者は理解している。


 こちらの対応を。


 つまり、試験は終わった。


 これからは――


 対抗。


 その時。


 森の奥で、再び光が走った。


 今度ははっきり見える。


 魔力の柱。


 それが三箇所で点灯する。


 ミレアが息を呑む。


「装置が三つ」


 魔物の流れが変わる。


 群れが分割された。


 中央突破。


 側面突破。


 そして――


 後方回り込み。


 将校が歯を食いしばる。


「三方向だと……!」


 これは偶然ではない。


 戦術だ。


 カイルは静かに言った。


「技術者がいます」


 兵士ではない。


 指揮官でもない。


 戦場を構造として見る者。


 ミレアが呟く。


「ヴァルディア」


「ええ」


 だが問題はそこではない。


 カイルは丘の斜面を見る。


 そして盾兵の配置を見る。


 次に魔物の流れを見る。


 頭の中で線がつながる。


「将校」


 将校が振り向く。


「何だ」


「ここで止めるのは無理です」


 周囲の兵士が息を呑む。


 だがカイルは続けた。


「ですが」


 一拍。


「ここで壊させることはできます」


 将校の眉が寄る。


「何をだ」


 カイルは森を指した。


「向こうの計測です」


 戦場の主導権はまだ敵にある。


 だが。


 測定には弱点がある。


 ミレアが理解したように小さく頷く。


「境界線ですね」


 カイルは言った。


「ええ」


 装備の限界。


 戦場の限界。


 そして――


 技術者の限界。


 それを、ここで見せる。


 森の奥で、誰かがこの戦場を見ている。


 カイルは静かに呟いた。


「今度はこちらの番です」


 戦場は、ただの防衛戦ではなくなった。


 技術者同士の境界線が、ここで引かれる。

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