第50話 疑念の会議
戦線は、辛うじて保たれていた。
魔物の数はまだ多い。だが丘の地形を利用した隊形変更によって、正面突破は止まっている。兵士たちは疲労しているものの、崩壊はしていない。
しかし問題は、戦場の外にあった。
砦の作戦室。
粗い地図が机の上に広げられ、その周りを将校たちが囲んでいる。
エルザが回収された装置を机の中央に置いた。
「確認しました」
全員の視線が集まる。
「これはヴァルディア製です」
室内の空気が変わった。
将校の一人が低く言う。
「確定か」
「はい」
エルザは魔石の刻印を指差した。
「魔力制御の刻み方が王国式ではありません。ヴァルディア特有の構造です」
沈黙。
やがて別の将校が口を開く。
「つまり、奴らは魔物を使って試験している」
「可能性は高いです」
試験。
その言葉が重く落ちる。
兵士たちは今、実験材料にされている。
将校が机を叩いた。
「ふざけやがって」
だがカイルは静かに地図を見ていた。
魔物の侵入経路。
丘の位置。
誘導装置の回収地点。
線が繋がる。
「三箇所」
カイルが言った。
全員が振り向く。
「装置は最低三箇所あります」
「なぜ分かる」
「群れの流れです」
地図の森の位置を指す。
「魔物はここで曲がっています」
つまり。
ここにも誘導装置がある。
将校が歯を食いしばる。
「全部壊せば止まるか」
「可能性はあります」
だが問題がある。
ミレアが言った。
「向こうも見ています」
こちらの動きを。
つまり装置を壊しに行けば――
「警戒される」
カイルは頷いた。
将校が腕を組む。
「つまり」
「まだ動かない方がいい」
エルザが続ける。
「観察されているなら、こちらも観察するべきです」
敵は何を見ているのか。
どこまで理解しているのか。
そこを読む必要がある。
将校はカイルを見る。
「お前はどう思う」
カイルは少しだけ考えた。
そして言う。
「向こうは」
一拍。
「装備を見ています」
規格装備の壊れ方。
隊形の変化。
戦場の反応。
「つまり」
ミレアが言う。
「まだ試験段階」
「はい」
カイルは頷く。
「本命ではありません」
室内が静まり返る。
将校が低く呟く。
「これで本命じゃないだと」
「ええ」
カイルは森の方を見る。
「これは、計測です」
王国軍がどれくらい持つのか。
装備の限界。
戦術の柔軟性。
すべて。
その時、外で角笛が鳴った。
兵士が飛び込んでくる。
「第二波接近!」
将校が振り向く。
「規模は!」
兵士の顔が青い。
「……第一波の倍です」
作戦室が凍りついた。
カイルは静かに言った。
「測りに来ましたね」
王国軍の限界を。
そして。
例外技術の価値を。
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