第49話 誘導の証拠
戦線は、ひとまず持ちこたえていた。
盾兵の隊形は丘の傾斜を利用した形に変わり、突進の衝撃は分散されている。槍兵も余裕を取り戻し、魔物の数は少しずつ減っていた。
だが、終わってはいない。
カイルは森の奥を見続けていた。
ミレアが横で言う。
「まだいますね」
「ええ」
光は消えた。
だが視線は消えていない。
戦場は観察されている。
エルザが兵士に声をかけた。
「後方偵察を出してください」
「今からですか?」
「はい。三人でいい」
将校はすぐに頷いた。
「軽装三名、森へ!」
兵士が走っていく。
戦線は持ちこたえているが、長くはない。
カイルは地面を見た。
魔物の足跡。
乱れている。
だが、一つだけ違う。
線のように続く跡。
「……引かれている」
ミレアが屈み込む。
「これは?」
細い粉が地面に落ちていた。
普通の土ではない。
わずかに光る。
カイルは指で触れた。
「魔力粉」
エルザが息を呑む。
「誘導材……」
魔物は魔力に反応する。
その性質を利用した古い技術。
だが普通は――
「ここまで広範囲では使えません」
ミレアが言う。
「量が多すぎます」
つまり。
誰かが準備していた。
戦場を。
事前に。
その時。
森から偵察兵が戻ってきた。
息を切らしている。
「見つけました!」
将校が振り向く。
「何だ!」
「装置です!」
兵士が差し出したのは、小さな金属の柱だった。
地面に突き刺す形。
先端に魔石が埋め込まれている。
エルザが受け取る。
「……やはり」
魔石の加工方法を見て、顔色が変わった。
「王国の技術ではありません」
将校が眉をひそめる。
「どこのだ」
エルザは、ゆっくり言った。
「北方」
一拍。
「ヴァルディア」
その名が出た瞬間、空気が凍る。
王国の北にある技術国家。
軍事衝突はない。
だが関係は緊張している。
将校が低く言う。
「つまり」
「試されています」
カイルが言った。
魔物を誘導し。
王国軍の装備を試し。
戦場の対応を観察する。
これは偶然の災害ではない。
実験だ。
その時。
森の奥で、また光が揺れた。
今度は長い。
明確な信号。
エルザが装置を見る。
「通信……」
ミレアが静かに言った。
「見せているんですね」
「何を?」
「王国の弱点を」
カイルは森を見つめた。
向こうには、技術者がいる。
そして今――
その技術者は、笑っている。
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