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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第48話 試される戦場

 魔物の動きが変わった。


 さきほどまで一直線だった突進が、わずかに散る。


 正面ではなく、左右から圧をかける形。


 将校がすぐに気づいた。


「角度が変わった!」


 盾兵の隊列が揺れる。


 カイルは森の奥を見る。


 光はもう見えない。


 だが確信はあった。


 向こうは見ている。


 そして考えている。


 こちらが隊形を変えたことを。


「早いですね」


 ミレアが低く言う。


「ええ」


 カイルは頷いた。


「技術者です」


 装備を理解している。


 隊形の意味も理解している。


 だから突進角度を変えた。


 将校が怒鳴る。


「第二列、右に寄せろ!」


 兵士たちが動く。


 だが完全には間に合わない。


 横から来た魔物が盾にぶつかる。


 衝撃。


 先ほどとは違う位置。


 兵士が歯を食いしばる。


 ミレアが呟く。


「今度は別の場所に負荷が集中します」


「はい」


 カイルは言う。


 規格装備は平均値で強い。


 だが平均を外されると弱い。


 そして向こうはそれを試している。


 将校が振り向く。


「どうする!」


 カイルは少しだけ考えた。


 そして丘を指した。


「地形を使います」


 将校が眉をひそめる。


「ここでか?」


「はい」


 防衛線は丘の斜面にある。


 つまり――


 高低差がある。


「盾兵を三歩下げてください」


「下げる?」


「はい」


 将校は迷う。


 だが、また一つ盾が割れた。


 兵士が倒れる。


「……やる」


 決断は早かった。


「全隊、三歩後退!」


 兵士たちが一斉に下がる。


 木柵のすぐ後ろ。


 わずかな斜面。


 魔物の突進が再び来る。


 だが今度は――


 足場が違う。


 魔物の足がわずかに滑る。


 突進角度が崩れる。


 盾に当たる衝撃が散る。


 割れない。


 兵士が叫ぶ。


「押せる!」


 槍が突き出る。


 魔物が倒れる。


 隊列が持ち直す。


 将校が振り向く。


「地形か」


「はい」


 カイルは言う。


「装備は変えられません」


 一拍。


「ですが戦場は変えられます」


 ミレアが小さく笑う。


「工程ですね」


 装備の工程。


 戦闘の工程。


 どちらも同じ。


 森の奥で、また光が揺れた。


 今度は、はっきりと。


 エルザが息を呑む。


「……見ています」


 戦場の向こう側。


 誰かが、こちらの対応を観察している。


 そして。


 次の手を考えている。


 カイルは静かに言った。


「向こうも本気ですね」


 戦場は、ただの防衛戦ではなくなっていた。


 これは。


 見えない技術者との、戦いだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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