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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第47話 衝撃を流す

 将校は一瞬だけ迷い、すぐに声を張り上げた。


「盾兵、二列目前進!」


 兵士たちが戸惑う。


 だが命令は命令だった。


 第二列の盾兵が半歩前へ出る。


「左半歩ずらせ!」


 今まで真っ直ぐ並んでいた盾が、わずかに斜めになる。


 ミレアが小さく呟く。


「角度……」


「はい」


 カイルは頷く。


「正面で受けると、衝撃は一点に集中します」


 だが斜めにすれば違う。


「流れる」


 魔物の突進が再び来る。


 盾がぶつかる。


 鈍い衝撃。


 だが今度は――


 兵士が一歩だけ横へ滑る。


 盾の縁から衝撃が抜ける。


 割れない。


 将校が目を見開いた。


「……持った」


 次の突進。


 同じ角度。


 同じ衝撃。


 だが兵士たちはもう理解している。


 正面で止めない。


 流す。


 後ろの兵士が肩を支える。


 力が分散する。


 ミレアが息を吐く。


「装備じゃなく」


「隊形です」


 カイルは静かに言った。


 規格装備は変えられない。


 だが。


 使い方は変えられる。


 前線で兵士が叫ぶ。


「割れないぞ!」


 別の兵士が応える。


「押せる!」


 隊列が安定する。


 槍兵が余裕を取り戻す。


 魔物が数匹倒れる。


 将校が振り向く。


「これで持つか」


 カイルは森を見た。


 群れの奥。


 また一瞬、光が揺れた。


「持ちます」


 一拍。


「ただし」


 将校が眉をひそめる。


「ただし?」


「向こうが角度を変えれば」


 また壊れる。


 それは時間の問題。


 将校は歯を食いしばる。


「つまり」


「見られています」


 カイルは森を指した。


 そこに誰かがいる。


 魔物ではない。


 人間。


 エルザが低く言う。


「誘導装置の操作……」


「ええ」


 誰かが戦場を観察している。


 試している。


 装備の壊れ方。


 隊形の弱点。


 すべて。


 カイルは静かに呟いた。


「技術者です」


 兵士ではない。


 魔物使いでもない。


 装備と戦場を理解する者。


 森の奥で、また光が揺れた。


 次の波が動き出す。


 だが今度は違う。


 魔物の突進角度が、変わった。


 将校が叫ぶ。


「来るぞ!」


 兵士たちが盾を構える。


 カイルは、わずかに目を細めた。


 向こうも気づいた。


 こちらが変えたことに。


 戦場は、ただの戦いではなくなっていた。


 これは――


 技術者同士の試し合いだった。


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