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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第45話 群れの軌道

 防衛線は砦から少し離れた丘陵に築かれていた。


 木柵。

 土塁。

 簡易の見張り塔。


 完全な要塞ではない。


 だが、魔物の群れを受け止めるには十分な位置だった。


 兵士たちはすでに配置についている。


 盾兵。

 槍兵。

 後方には弓兵。


 そして、そのさらに後ろに整備兵。


 カイルは丘の上から全体を見る。


 遠くの森が揺れている。


 最初は風のように見えた。


 だが違う。


 黒い。


 動いている。


 ミレアが小さく息を呑んだ。


「……多いですね」


 群れが森を押し出してくる。


 狼型。

 猪型。

 混ざっている。


 普通、魔物は種類ごとに群れる。


 だが今回は違う。


「統率がない」


 エルザが言う。


「普通はそうです」


 カイルは首を振る。


「違います」


 指を伸ばす。


「統率がないのに、方向が揃いすぎている」


 全ての魔物が、同じ方向へ向かっている。


 それは偶然ではない。


 角笛が鳴る。


 前線の兵士たちが盾を構える。


 弓兵が矢を番える。


 将校が叫ぶ。


「距離二百!」


 矢が放たれる。


 空が黒くなる。


 数匹の魔物が倒れる。


 だが群れは止まらない。


 地面が震える。


 ミレアが呟く。


「……まるで」


「押されている」


 カイルが言う。


 前からではない。


 後ろから。


 群れの流れを観察する。


 何かがある。


 目には見えないが、動きを揃える何か。


 そのとき。


 後方の森で、一瞬だけ光が見えた。


 カイルの目が細くなる。


「今の」


 エルザが振り向く。


「何かありました?」


 カイルは森を指した。


「あそこ」


 兵士たちは気づいていない。


 だがカイルには分かった。


 あれは自然ではない。


 光は、魔力の反応。


 そして――


 誘導装置。


 ミレアが低く言う。


「誰かがやっていますね」


「ええ」


 カイルは頷く。


 魔物はただ暴れているのではない。


 動かされている。


 角笛が再び鳴る。


 魔物群が防衛線に衝突した。


 木柵が揺れる。


 盾兵が踏みとどまる。


 槍が突き出される。


 最前列は、持ちこたえている。


 だが問題はそこではない。


 カイルは装備を見ていた。


 盾。


 槍。


 鎧。


 衝撃が蓄積している。


「あと三十」


 ミレアが聞く。


「何がです?」


「衝撃」


 カイルは言う。


「三十回当たれば」


 一拍。


「壊れます」


 規格装備は平均に強い。


 だが平均を超えると、同じ場所から壊れる。


 それが戦場で起きる。


 前線で盾がひとつ割れた。


 兵士が倒れる。


 すぐに別の兵士が前に出る。


 だが、次の盾も同じ場所に負荷が集中している。


 カイルは静かに言った。


「誘導している」


 ミレアが目を細める。


「装備を?」


「はい」


 魔物の突進角度が揃っている。


 だから負荷の位置も揃う。


 つまり――


 壊す場所を決められている。


 エルザの顔色が変わる。


「そんなことが」


「できます」


 カイルは森を見る。


「技術者なら」


 遠くで、また光が揺れた。


 ほんの一瞬。


 だが確かにあった。


 これは偶然の災害ではない。


 誰かが見ている。


 誰かが試している。


 この戦場を。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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