第41話 王の名で
招請状は、紋章が違った。
国家技術局の印ではない。
商会の封でもない。
金糸で縁取られた、王家の紋章。
「……王権直属審議局」
ミレアが、封を切る前に呟く。
内容は簡潔だった。
『王権審議会への出席を求める。
例外技術保持者として』
技術者ではない。
保持者。
「肩書きが、妙ですね」
「ええ」
カイルは、静かに読む。
命令ではない。
だが、断りにくい。
「拒否は?」
ミレアが問う。
「可能でしょう」
「ですが?」
「理由が要ります」
そして理由を出せば、それは記録に残る。
逃げではなく、立場の宣言になる。
扉が叩かれる。
入ってきたのは、見慣れた人物だった。
「久しぶりです」
エルザ・フォン・リヒト。
だが今日は、技術局の装いではない。
「審議会補佐官として同行します」
「立場が変わりましたね」
「ええ」
わずかに苦笑する。
「あなたの報告書が、上まで届きました」
沈黙。
「今回の招請は、調査ではありません」
一拍。
「確認です」
「何をですか」
カイルの問いに、エルザは真っ直ぐ答える。
「あなたが、王国にとって何なのか」
敵か。
味方か。
それとも――
「危険か」
言葉は静かだった。
その夜、工房はいつも通り火が灯っていた。
「行きますか」
ミレアが問う。
「行きます」
迷いはない。
「属するためではなく」
火を落としながら続ける。
「説明するために」
翌朝。
王都への馬車が、路地に入った。
今までとは違う空気。
市場でも、国家でもない。
もっと上。
王宮の塔が、遠くに見える。
エルザが、小さく言った。
「審議会には、軍拡派と改革派がいます」
「想定しています」
「軍拡派は、あなたを嫌っています」
「理由は?」
「統制できないから」
カイルは、わずかに頷く。
「正しいですね」
馬車が王宮の門をくぐる。
重い扉が閉じる音。
これまでの敵は、構造だった。
これからは――
秩序そのもの。
王の名で呼ばれた。
それは、無視できない位置に来た証だった。
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