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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第40話 記録を読む者

 王都、国家中央書庫。


 分厚い扉の向こうで、一冊の報告書が静かに開かれていた。


『属人技術に関する調査報告』


 署名は、エルザ・フォン・リヒト。


「……興味深い」


 ページをめくる男の声は、低い。


 机に置かれた紋章は、技術局のものではない。


 王権直属――政策審議局。


「再現不可。標準化不可。制度不適合」


 そこまでは、問題ではない。


 男の指が止まる。


「だが、現場適合率は異常に高い」


 別の資料を重ねる。


 北部拠点の報告。

 市場の動向。

 商会の流通制限と解除の記録。


「……経済圧力にも崩れない」


 視線が、最後の頁へ移る。


『例外技術として保管』


 その一文を、ゆっくりとなぞる。


「消されていない」


 それが、重要だった。


 国家は使わなかった。

 商会は囲えなかった。


 それでも残った。


「技術ではなく、思想だな」


 男は、静かに呟く。


 工程を守る。

 選ばない。

 崩れない。


「この手の存在は、放置すると厄介だ」


 潰すのではない。

 利用するのでもない。


「位置を決める必要がある」


 窓の外、王都の塔が夕陽に染まっている。


 一方。


 路地裏の工房では、いつも通り火が灯っていた。


「依頼は、明日納品ですね」


「はい」


 何も変わらない。


 だが、世界のどこかで

 その“変わらなさ”を読む者がいる。


 男は、報告書を閉じた。


「呼ぶか」


 それは命令ではない。

 まだ、検討段階。


「技術者としてではなく」


 一拍。


「存在として」


 王権が動く時、

 それは制度でも経済でもない。


 “秩序”が動く。


 工房の火は、静かに揺れる。


 次に来るのは、

 金でも、契約でもない。


 もっと、大きなものだった。


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