表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/78

第37話 数字では買えない

 商会連合本部の会議室は、静まり返っていた。


 机の上に並ぶのは、報告書と数字。


「事故件数は規格内です」


 担当者が、淡々と説明する。


「重大損失は出ていません」


「だが」


 レオニス・ヴァルツは、資料から目を上げた。


「継続契約率が落ちている」


 数字は嘘をつかない。

 だが、全部も語らない。


「再注文の比率が、微妙に下がっています」


「理由は?」


「明確ではありません」


 価格は競合より安い。

 流通も安定している。


 それでも。


「……信用です」


 若い分析官が、恐る恐る口を開いた。


「“前の方が安心できた”という声が」


 数値化できない要素。


 レオニスは、目を閉じる。


「囲った工房の稼働率は?」


「限界です」


 工程は削減され、効率は上がった。


 だが、その分――


「余白がありません」


 トラブルに対処する余裕がない。


 レオニスは、静かに息を吐いた。


「我々は、技術を分解しすぎた」


 会議室が沈黙する。


「効率化は成功した」


 数字上は、だ。


「だが、信頼の余白を削った」


 その言葉に、誰も反論できなかった。


 同じ頃。


 路地裏の工房では、いつも通りの作業が続いている。


 大量生産はしていない。

 急激な拡張もしていない。


 だが。


「前と同じ感じだ」


 受け取りに来た冒険者が、安心したように言う。


「それで十分です」


 カイルは、静かに答える。


 会議室では。


「例の工房は?」


 誰かが、名前を出さずに尋ねた。


「安定しています」


 その一言が、重い。


 レオニスは、小さく笑った。


「投資に向かない、と言ったな」


 自嘲だった。


「だが、崩れない」


 効率では勝てる。

 だが、長期ではどうか。


 レオニスは、結論を出した。


「撤退する」


 即断だった。


「全面的な囲い込みは停止」

「流通制限も解除」

「競合として扱う」


 敗北宣言ではない。


 だが、明確な方向転換だった。


「理由は?」


「数字では買えないからだ」


 信用は、資産だ。

 だが、簿記には載らない。


 工房の火は、今日も静かに燃えている。


 勝ったわけではない。

 倒したわけでもない。


 ただ、崩れなかった。


 それが、最終的な差になった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ