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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第24話 記録だけが残る

 国家技術局の執務室は、夜でも明るかった。


 机の上には、分厚い報告書が一冊。

 表紙には簡潔な題名が記されている。


『属人技術に関する調査報告』


 エルザ・フォン・リヒトは、最後の頁をめくり、ペンを置いた。


「……これで、終わりです」


 補助官の一人が、慎重に口を開く。


「採用は、見送りですね」


「はい」


 エルザは即答する。


「国家装備としては、不適合。

 教育不可、再現不可、標準化不可」


 どれも、制度側から見れば致命的だった。


「ですが」


 彼女は、報告書の背を軽く叩く。


「消去はしません」


 補助官たちが、顔を上げる。


「“例外技術”として、正式に記録します」


 その言葉に、わずかなざわめきが走った。


「前例になりますが……」


「構いません」


 エルザは、淡々と答える。


「制度は、想定外を切り捨てるためにあるものではない。

 “扱えない理由”を残すためにも、記録は必要です」


 それは、監査官としての判断だった。


 署名を終え、文書は保管箱に収められる。


 鍵が掛けられ、棚に戻される。


 誰の目にも触れない場所へ。


 だが、確かに存在する。


 一方、路地裏の工房では。


 カイルが、いつも通り火を入れていた。


 特別な依頼はない。

 緊急案件もない。


 ただ、いつもの仕事。


「……終わりました」


 依頼主が、装備を受け取り、何度か振る。


「問題ありません」


 それだけ言って、頭を下げて去っていった。


 数値の話は出ない。

 国家の話も出ない。


 だが、その“普通”が、今は心地よかった。


 夕方、ミレアが一通の写しを差し出す。


「国家の最終報告です」


 カイルは、軽く目を通す。


「採用見送り……例外技術として記録」


「はい」


 それだけで、十分だった。


「残りましたね」


「ええ」


 消されなかった。

 歪められなかった。


 それは、勝利ではない。

 だが、敗北でもない。


 ミレアは、窓の外を見る。


「世界は、すぐには変わりません」


「分かっています」


 カイルは、火を落とす。


「でも、記録は残った」


 それだけで、次に繋がる。


 工房の灯りが消える。


 国家編は、静かに幕を下ろした。


 残ったのは、

 使われなかった技術と、

 消されなかった名前。


 それが、次に呼ばれる時――

 今より大きな歪みが、動き出す。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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