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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第12話 改良という名の改悪

 新装備が前線に回り始めたのは、会議から三日後だった。


「数値は、確かに上がってる」


 訓練場で剣を振りながら、ロッドはそう呟いた。


 攻撃力。

 耐久値。

 どれも、記録上は以前の装備を上回っている。


「……なのに」


 踏み込み、斬撃。


 剣先が、わずかに遅れる。


「くそ……」


 力を入れ直すと、今度は軌道がぶれる。


 重い。

 いや、重さの問題じゃない。


 身体の動きと、噛み合っていない。


「慣れの問題だろ」


 隣で別の戦闘職が言う。


「数値が高いなら、悪い装備なわけがない」


 ロッドは、何も言い返せなかった。


 数値は、正しい。

 それを否定する材料はない。


 だが、実戦では。


 依頼帰りの冒険者たちが、ギルドに戻ってくる。


「……腕、重くないか?」

「前より疲れる」

「長く持たねぇ」


 小さな不満が、あちこちで漏れ始めていた。


 錬金室でも、同様だった。


「薬、効き目は強いんだが……」


 錬金術師が眉をひそめる。


「反動が、きつい」


 回復量は増えている。

 だが、使用後の倦怠感が強い。


「基準内だ」


 管理担当は、そう言って書類を閉じた。


「数値上は、問題ない」


 その言葉で、議論は終わる。


 だが、現場は終わらない。


 数日後。


 高難度依頼の帰還報告で、事故が発生した。


「防具の継ぎ目が、戦闘中に外れた」


「致命傷にはならなかったが……」


 会議室に、重い空気が流れる。


「設計通りなら、あり得ないはずだ」


 セインは、報告書を見ながら言った。


「数値は満たしている」


「なら、使い方が悪いのでは?」


 誰かが、そう口にする。


 その言葉に、誰も反論しなかった。


 ――使い手の問題。


 それは、最も簡単で、最も安全な結論だった。


 一方、その頃。


 路地裏の工房では。


「……問題、ありませんね」


 カイルは、返ってきた装備を確認していた。


 刃も、防具も。

 歪みはない。


「前より、楽です」


 冒険者は、そう言って笑う。


「無茶しても、壊れない」


 カイルは、何も言わずに頷いた。


 報告は、どれも同じだった。


 安定している。

 疲れにくい。

 壊れない。


 数値の話は、誰もしない。


 それが、すべてだった。


 同じ街で、

 同じ魔物と戦っているのに。


 一方は、静かに積み上がり。

 もう一方は、少しずつ崩れていく。


 その差は、まだ致命的ではない。


 だが。


 確実に、埋められないものになりつつあった。



ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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