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追放された鍛冶錬金師は、数値を信じるギルドを見限って静かに最強になる 〜評価されなかった生産職ですが、使った人だけが違いに気づきます〜  作者: 神崎タクミ


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第11話 原因は、別にある

 冒険者ギルド本部の会議室には、重たい沈黙が落ちていた。


 机の上に並ぶのは、数枚の報告書。

 装備破損率。

 錬金薬の失敗率。

 前線での事故件数。


 どれも、じわじわと悪化している。


「……数字だけ見れば、誤差の範囲だな」


 ギルドマスターのバルドが、そう口にした。


 副長のセインは即座に頷く。


「はい。致命的な異常ではありません」


 彼は立ち上がり、用意していた資料を広げる。


「まず、装備の破損についてですが――」


 指し示されたのは、最近の依頼内容の変化だった。


「高難度依頼が増えています。魔物の質も、明らかに上がっている」


「確かに、前線は厳しくなっているな」


 幹部の一人が同意する。


「錬金薬についても同様です」


 セインは続ける。


「素材の流通経路が変わり、個体差が大きくなっている。

 同じ配合でも、結果にばらつきが出るのは当然です」


 誰も反論しなかった。


 数字上は、筋が通っている。


「つまり」


 セインは、結論をまとめるように言う。


「原因は“外部環境の変化”です。

 技術や工程そのものに、問題はありません」


 その言葉に、バルドは腕を組んだ。


「……なるほど」


 一瞬、カイルの顔が頭をよぎった。

 だが、すぐに振り払う。


 彼がいなくなったことで、状況が悪化した。

 そんな因果関係を、証明する材料はない。


「では、対策は?」


 バルドの問いに、セインは用意していた案を示す。


「装備設計を、数値重視に切り替えます」


 数値。

 目に見える強さ。


「耐久と攻撃力を引き上げる。

 細かな調整は省き、誰が使っても一定の性能が出る形に」


「現場は?」


「慣れれば問題ありません」


 錬金についても、同様だった。


「新配合を導入します。

 成功率はやや下がりますが、理論上の効果は高い」


「……安全性は?」


「基準内です」


 “基準内”。


 それは、誰も責任を取らなくていい言葉だった。


 バルドは、ゆっくりと頷いた。


「分かった。進めよう」


 その決定に、誰も異を唱えなかった。


 会議は、それで終わった。


 ――結論は出た。


 だが。


 その結論には、致命的な欠落があった。


 数値に表れない工程。

 使い手ごとの癖。

 現場で積み重ねられていた微調整。


 それらを、誰が管理していたのか。


 その問いは、

 この会議では、一度も出なかった。


 数日後。


 新装備が前線に配備される。


 数値は、確かに上がっていた。


 だが。


「……前より、重い」


 誰かが、そう呟いた。


 その声は、まだ小さい。


 だが、確実に。


 ギルドは、自分たちの手で、

 傷口を広げ始めていた。



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