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【5/2コミカライズ一巻発売】【完結保証】およそ100年幽閉されていた魔術師夫婦は世界を巡る  作者: 吉野茉莉
第八話 変わるもの変わらないもの

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第八話 変わるもの変わらないもの ⑦

 私は目を開ける。


 柔らかいベッドの上にいたはずなのに、そこは私が知っている街から少し離れたところにある草原だった。頬を撫でる風が心地よい。空には雲一つないのに、暑すぎるということもない。左側を見る、そこにいるはずのアランはいない。


 立ち上がって周囲を見渡す。遠くに街の家々が見える。


 反対側、草原に木のテーブルが置かれていた。


 そこに誰かが座っている。


 私はテーブルに向かって歩き出す。


 遠くにあるようで、とても近いようでもある。


 距離が詰まっていって、姿がはっきりとしてくる。


 椅子に座っているのは少女だ。


「ここは……」


 テーブル越しに彼女に問いかける。


 彼女は白いワンピースを着て、白い腕をテーブルの上に置いていて、目を閉じている。


 髪は絹のような細い白で地面につきそうなほど長い。


「世界の狭間。どこにでもあるのに、どこにもない場所。上もなく下もなく、前もなく後もなく、魂以外の何者も存在しない場所」


 抑揚もない声で彼女が言った。


「あらゆる者が知っているのに、誰も彼も何も知らない場所」


「あ、あなたが」


 直感があった。


 彼女が、何かをしているのだと。


「私は何もしない。何もできない。あらゆる力は、何もしないためにある」


 私の思考を読み取ったかのように言う。


 テーブルの上に杖が置かれていた。


 杖があるということは、彼女は魔術師だということだ。


 いや、この杖には見覚えがある。


 これは、私の、杖だ。


「まだ時は来ていない」


 彼女が言って、目を開けた。


 赤い、燃えるような瞳。


 私と同じ。


「さようなら、エミーリア」

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