第八話 変わるもの変わらないもの ⑥
「関係があるかはわからないが」
宿屋に戻ってお互い向き合ったところでアランが切り出す。
「人間が突然消えてなくなったり、反対に人間が突然現れたりする現象は昔からいくつか確認されている。もちろん単に失踪だったり捨てられた子供だったりすることが多いが、それだけでは説明ができないこともある。どちらにも共通しているのは、魔術師、あるいは魔術師の才があるものばかりだと言うことだ」
「アイリーンのことかな」
「アイリーン? あの夢の村の彼女か」
村中を自分の夢の中に取り込んで安全な世界を作り上げた彼女だ。
「そう。ええと、アランも一緒に聞いていたけど、そうだった、あのアランは本当のアランじゃなくて、うん、アイリーンは森の中にいたところを拾われたって言っていた」
「そうか。この現象については、神の存在を仮定して、神に連れ去られたとか、神が運んできたとか言われることもあるが、もしかしたら、マリアが転送門に応用したような、『世界の歪み』が影響しているのかもしれない。転送門が歪みを利用して移動するのなら、魔術師の魔力で自然発生した歪みを広げて引きずり込まれてしまうことはないとは言えない」
「それと私の関係は」
「わからない。『いなくなった』人間は、人の記憶からも徐々に失われていくという報告もある。だが、記録自体がなくなってしまうわけではない」
「そうだよね」
「ああ、だから、魔術師の認識魔術よりも、この歪みの話よりも、更に高位の現象だと思われる。こうな
ると、エミーリア、君の個人の問題かもわからない。もちろん、そうだとしても、このような現象が起きた意図がわからない。意図があればだが」
「アランは、忘れられていなかった」
私たちが出会った『参画者』と名乗る魔術師たちはアランのことを知っていた。単に名前が伝わっている、というだけではなく、彼が何をしていたのか知っていたのだ。
「彼らは私の研究を利用していたから、何か伝わるものがあったのだろう。しかしその点で言えば、ルネと言ったか、ニコを乗っ取ったあの魔術師は君のことを知っていた。私のそばにいる人間が『エミーリア』という名前であることを知っていた。これは何を意味しているのか、きちんと聞くべきだった」
「『いつか来たるべき魂』、そう言ってた」
「何を掴んでいたのか。他の参画者に会うことができればわかるかもしれない。今のこの現象に関係があったかもしれない。参画者があと何人いるのかもわからないが、このままでは推論さえ立てられない」
「うん」
「エミーリア、君はどうしたい?」
「え?」
「このままこの街に留まることもできる。旅の目的はひとまず達せられた。君が望んだ結果ではないかもしれないが」
「うん……」
「まあ、すぐに決めることではないさ」






