第七話 魔術師不要 ⑧
中は狭い部屋ではなく、食事を取っていたところと同じくらいの広いホールだった。
「ようこそ、街の中枢へ」
ホールの中心にいたキガサワが大仰な雰囲気で両手を広げた。
「あの……」
異様だったのはそのキガサワの後ろだった。
背後に、間隔を開けて三つの椅子が並んでいて、中央の席を除いて人間が座っている。いや、人形かもしれないけど、とにかく人間のようなものが座っていた。二人とも俯いて顔は見えない。男性なのか女性なのかもわからない。服装は、アランと同じ国家魔術師の服だ。
キガサワは後ろを向いて歩き、その余っていた椅子に座った。
足を組み、組んだ足の膝に右肘を置き、頬杖をつく。
「彼らはここの『管理者』だ。私は方向を決めているだけで、実際に魔術を行使しているのは彼らだよ」
キガサワの言葉には彼らは反応しない。
「私たちは四人でここに来た。この街を完全に掌握したあと、どう統治していくか我々は話し合った。君が言うとおり、中央都市との交渉役を買って出るという体でこの街を統治することを決めたのは四人の意思だった。この街はこの街で復興をする必要、つまり、まともに機能させる必要があった。中央都市は中央都市で直接管理をしたがったが、我々はそれを拒否した。我々の存在が明るみになってしまえば中央都市も不利益を被ってしまうから、中央都市もその条件を呑まざるを得なかった」
「どうして、そんなやり方を?」
「あのときはそれしかないと思い込んでいたが、そうだな、我々は、故郷が欲しかった。我々が根付き、安心して住める最後の場所が欲しかった」
「それは……」
「かつて我々の国では常に戦争の危機があった。この国とではなく、内戦だ。我々の国は多くの小国がまとまってできた国だった。何を理由にしてもそれらの間で軋轢がすぐに生じる。いつも戦争をしているから、このような魔術師が生まれたわけだが、我々はそのまとまった国の一つの組織として存在し、国をまとめ続けるために色んなことをやった。君たちが想像できるような汚いことはすべてだ。そうしてやがて束の間の平和が訪れて、国は我々をどうしたと思う?」
「……切り捨てた、ですね」
私の代わりにアランが答えた。
「その通り、どうやら君にも似たような経験があるように見える」
アランは返さなかったが、苦々しい顔をしているのがわかった。キガサワの言うことが図星だったのだろうか。
「そのような力を持つ我々は国にとって他国に対する抑止力であると同時に、不穏分子の集団でもあるのだよ。だから適度に数を減らさなければならない。そのためだけに、我々は『敵』とみなされて追いやられた。見せしめの処刑を逃れた者たちが海を渡り、嵐に呑まれ転覆し、それでも生き残ったのが我々四人だった」
「そんな……」
「まあ、結局はこの国に来てもやっていることは一緒だったがね。誰であれ、自分の手は汚したくないものだ」
キガサワが笑った。
「さて、こちらの番は終わりだ。君たちはどうかね。帰る場所はあるかね? そこは本当に穏やかに暮らせる場所かね?」






