第七話 魔術師不要 ⑥
そのあとはキガサワは何も言わず、食事が進んでいった。
デザートはいちごのシャーベットだった。この季節にどうやってシャーベットを作り出しているのかはわからなかったが、口の中でほろりと溶けて美味しい。わざわざ魔術を使って作っているのだろうか。
「どうかな?」
「とても美味しかったです」
「この街は平和だ。中央都市に比べれば物足りないかもしれないが、鉱山からの利益もあり、住人はみな安定した生活を送ることができる」
「どういうことですか?」
「私は君たちにこの街への定住を勧めたい」
「定住?」
「悪い話ではないと思うが。十分な生活は保障できる。魔術師であることは隠してもらった方がいいかもしれないが、私が認めたということなら、街の住人も何も言わないだろう。研究をしたいようなら、その設備も用意しよう」
「ずいぶんと好条件ですね。国家魔術師を呼ぶよりはましだという判断ですか?」
「ああ、そうだ」
「それが残り三人の話と何か関係があるのですか?」
キガサワが頷く。
「彼らはこの街の基盤を支えるために魔術を使っている。住人には機械だと言っているが、水道もガスも魔術を利用している。そうして三十年維持をしてきた。それをとりまとめているのが私、というわけだ。徐々に魔術以外の技術を取り入れ始めているが、まだ完全に置き換わっていない。それに私を見てわかるように、三十年というのはあまりにも長い時間だった。私はもう老人なのだよ」
「三人に何かあったのですね」
「そのうち一人が病気になった。残された時間はそれほど残っていない。現状を維持するには次の魔術師が必要になる」
「それを私たちにさせたいということですか?」
「そうだ。見る限り君たちは優秀な魔術師のようだ。特に君は国家魔術師だったのだろう? どういう理由で離れたかは問わないが、中央都市に戻るわけにはいかないのだと思うが、どうだろう?」
アランは首を傾げた。
「申し訳ありませんが、私たちは旅を続けます」
「そうか、残念だ。自分たちで選んでほしかったが」
キガサワが私をじっと見た。
その瞳の奥に強い意思を感じた。
「エミーリア!」
アランの声が遠くでして、私の意識はどこかに飛んでいってしまった。






