第七話 魔術師不要 ①
アランの横、一歩遅れて私が歩いている。
お互いに無言のままだ。
聞くべきこと、聞きたいことがたくさんあるのに、それらは一つも言葉にならない。
「もう少しだ」
アランが言った。
遠くに壁で覆われた街が見える。次の目的地はあそこだ。
「うん」
私が返す。
この街は私も知っていた。小さい頃に何度か行ったことがある。取り立てて何かがあるという街でもなかったが、あの頃の私には新鮮に思えていたはず。
何か、お菓子のようなものを買った記憶がある。
つまり、私の故郷の街まで近い、ということだ。
この街を過ぎれば、転送門を使うまでもなく、私の街まで行くことができる。
そこまで行けば、最初に立てた目的は達せられる。
その後のことは、正直考えていない。
一歩進んで何も言わずアランの右手を取る。
アランも握り返してくれた。
今の私たちにあるのはこのわずかなやり取りしかない。
街に向かって歩いていたところで、私は妙な光を見た。それは太陽に照らされて、青い光を反射している石だ。
アランの手を離してその石まで駆けていって、拾いあげる。片手で握って隠れるくらいの大きさだ。しかし、宝石のような輝きとも違う。
アランが私の横に立ったのでその石を見せた。
「魔素石だね」
「ああ、これがそうなんだ」
「私より早く見つけられたということは、エミーリア、君も少しずつ目が魔術師になってきているようだね」
アランに褒められて私の顔が赤くなったのを感じる。加えて私が望む魔術師に近づいているという事実が誇らしくもあった。
私が彼と一緒にいる理由を、どこかで考えている自分がいた。
「でも、こんな風に落ちているものなの?」
「ないこともないが、平地に落ちているのは珍しい。誰かが落としたのかもしれない」
「誰かって、でも魔術師でしょ?」
「それはわからない。魔術師にしか感知できないというだけで、そう鑑定されたものを運ぶ商人はいるよ。石炭と同じ扱いだ。一つではさほど価値はないが、まあ何かの役に立つかもしれないからしまっておけばいい」
「うん」
魔素石はその名前の通り魔素が蓄積された石で、魔術を使う補助に使ったり、位置結界を作るときの重要箇所に使ったりする。石と呼ばれてはいるが、鉱物ではなく、元々は植物や動物が死んだ後で長い時間をかけてできあがるらしい。石炭も同じような仕組みでできると考える人もいて、石炭が取れる山のそばで魔素石も取れることが多いらしい。石炭と違うのは、魔素石は魔術師にしか見えないから、発掘場所に魔術師がいる必要がある。それも大事な仕事だとは思うけど、アランならつまらない作業だと言い切るかもしれない。






