表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5/2コミカライズ一巻発売】【完結保証】およそ100年幽閉されていた魔術師夫婦は世界を巡る  作者: 吉野茉莉
第六話 救援、もしくは罠

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/74

第六話 救援、もしくは罠 ⑪

「そ、そうか、そういうことだったのか」


 突然、ルネとは違う口調の声がした。


「ニコ!」


 ニコだ。


「あ、頭の中で聞いていた。今は、俺だ。俺がここにいる。頭の中のあいつは奥にいる。逃げようとした俺を誘導していたのはあいつだったんだな。どおりであの鳥がいなくならないわけだ。アラン、あんたのことは知らないが、あいつの言った通りなら、あんたの専門なんだな。でも、あんたにもどうもできない」


「一人の人間に他人の魔力が混ざる例がある。意図的にできるというよりも、事故のような偶発的な事象だ。魔力が混ざる、というのは、青い色水に赤い色水を無理矢理混ぜるのと同じだ。混ざったものは溶け、そしてそれは青でも赤でもない色水になる。時間が経てば元の青の部分が多くなり赤は薄まっていくが、それでも赤の要素がなくなることはない。これは人間にとっては致命的な問題だ。大抵はその前に意識が混乱をして自分がなくなってしまう」


「できないんだな?」


「おそらく。私には信じられないが、ルネが言っていることが本当なら、君はルネに乗っ取られる形になるだろう。さっきの説明でいえば、透明な水に黒を注いで全部を黒にすることができる、と言っているわけだ」


「……そうか。わかった」


 ニコが立って、窓に近づいた。


「手間をかけて済まなかった。二人は島の外に戻ってくれ」


「どうしたの、ニコ」


「どうもしない。このままなら、俺はあいつに乗っ取られるってことだろ。そうなったらあんたらに何をするかわからない。話を聞く分には手荒なことはしないだろうが、それはわからない。俺と同じく閉じ込めるくらいはするかもしれない。それにあいつは魂とやらを伝播させることができるんだろ」


 振り返ったニコが私たちを見た。やつれた顔はそのままだったが、声に力がこもっていた。


「あいつの好きにはさせないさ。それが単なるちっぽけな反抗でも、だ。俺が俺でいられるうちに、俺はすべきことをする。俺だって魔術師だ。俺がどうすべきか、それは俺が決める」


 覚悟をした人間の顔だった。


「わかった」


「アラン……」


「ニコの言う通り、私たちにはどうすることもできない。だから、ニコの意思に従う。今のうちに湖を渡りきろう」


「そうしてもらえると助かる」


 アランが立った。


「もし、あんたらが中央都市に行くことがあったら、うちの母親に……、いやなんでもない。何も言う必要もない。あんたらだけは俺が生きていたことを覚えていてくれ、それでいい」


「うん」


「『互いの選択に、最良の祝福を』。さようなら、アラン、エミーリア。あんたらに会って、最後を決めることができて、それだけでもよかった」


「そんな」


「あんたらのせいじゃないさ。さあ、行ってくれ」


 ニコが笑顔で言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ