第六話 救援、もしくは罠 ⑨
ニコのいる部屋に二人で戻る。
「どうだった?」
「私たちでも撃ち落とすことができなかった」
「……そう、か」
アランが報告するが、ニコが思っているのと違うということと、私たちは出られるということは言わなかった。
「あの鳥がいる限り君を連れ出すことは難しい」
「あ、あんたらは、認識結界は使えないのか? 二人いるんだろ、一人が水上歩行、一人が認識結界で三人でここを渡れないのか?」
「可能だと思うが、湖を渡ったとしてもそのあと君が襲われない保証がない。そうだろう?」
「あ、ああ、そうだな……」
ニコが明らかに落胆した表情をする。
「魔術師を探した方がいい」
「だが……」
「ニコはここにいてくれ。私たちでこの建物を探してみる」
「俺も探した」
「念のためだ」
アランがソファから立ち上がったので慌てて私もならってアランについていく。
扉を開けてまた薄暗いホールに出る。
「アランはいると思うの?」
「ここに四人いる」
しっかりとした声でアランが言った。
「四人って」
私、アラン、ニコ、それ以外にもう一人だ。
「それが魔術師?」
「おそらく、その気配だけはある。私の仮説が間違いではないことを確認するためにも建物内に潜んでいないかは見ておく必要がある」
「仮説って?」
「まだニコに聞かれてはいけない。ただ君も考えてほしい。この条件なら私と同じ一つの可能性に辿りつくはずだ」
私たちはホールの階段から二階へと上がる。部屋がいくつかある。奥から一つ一つ開けて、中を確認していく。小さな生き物に変化をしていたとしても、現実の人間であることは変わらないから、人間大の空間が必要だ。そのような隙間がないか、部屋を一周して出て行く。
アランは何を考えているのか。
今建物内を歩いているのは仮説を確認するためだと言う。
それはつまり、『見つからない』、『いない』ことを前提としている。しかし、アランは四人分の気配があるという。
二階の部屋をすべて回った。誰もいない。
一階に戻る。
ニコがいる部屋以外を見て回る。
いない。
建物の外にいるのだろうか。
建物を除いた島の面積はほとんどない。
だとすれば、導かれる答えは一つになる。
「わかった、と思う。でも」
「でも?」
「いるのは、ニコの部屋しかない」
「そうだね。それはそうだと思う」
ここまではアランと同じだ。
「でも、ニコの部屋にはいない。少なくともニコは気がついていない。私もわからなかった」
「そう」
アランも認める。
ニコの部屋にいるはずなのに、ニコには気がついていない。
「仮説としては残る一つしかない」
二人がすべての部屋を見終わって、ニコにいる部屋に戻る。
「ど、どうだった?」
「いなかった」
「そ、そうだろう、そうなんだ」
アランと並んでソファに座る。
「だから、魔術師がいる場所がわかった」
「ど、どういうことだ?」
「もう一人の魔術師、それはニコ、君自身だ」






