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【5/2コミカライズ一巻発売】【完結保証】およそ100年幽閉されていた魔術師夫婦は世界を巡る  作者: 吉野茉莉
第四話 心ない人々

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第四話 心ない人々 ⑧

 塔に戻った私たちは荷物を持って、外に出た。アランは何も言わなかったし、私も何かを聞ける雰囲気ではないのを感じていた。


 道に誰かがうつ伏せに倒れている。そばに寄ってもピクリとも動かなかった。昨日会った女性だ。


「操っている魔術師が死んだのだから、人形はもう動けない」


 私が彼女に触れようとするのをアランがやんわりと言葉で止める。


「いや」


 私は彼女の前で屈んで抱える。思っているよりもずっと軽い。熱も感じない。呼吸もしていない。これは人間が死んでしまったのか、人形が動かなくなってしまったのか、どう判断すべきなのか私にはわからない。


 なんとか彼女を引きずって、近くにある木の幹に背中を預けるように置いた。


 それからアランの元へと戻る。


「バチストは」


「クロードが操っていたのなら同じことだ。彼が特別製だとしても、いずれ身体の中にあるクロードの魔力が切れて動けなくなる。私と同じように」


 アランは私の魔力供給があってようやく動くことができている。長時間離れてしまえばアランは意識がなくなって動けなくなる。まるで魔術人形のように。


「でも、あなたは生きている」


「そう、生きている。私は私を生きていると認めることができる、主張することができる。それだけだ。それが彼とどのくらい違いがあるのか、外側からではわからない」


 珍しくおどけたようにアランが言った。


 私は急に怖くなって左手でアランの手首を掴む。手首はいつも通り、ひんやりとしている。


「私も、アランは生きていると思っている。だから、アランは生きている」


 どうしてか、涙が出てきそうになる。すごく抱きしめたいのに、やってはいけない気がする。確かめるのが怖いのだ。その結果ではなく、確かめる、という行為そのものが何か大事な違反を犯してしまうのだという感覚がある。


「そうだね、そうだといいんだが」


「うん」


 アランはそれを察してくれたのか、正面に立って私を包み込む。


 アランの息遣いを感じる。


 やはりアランは生きているのだ。


「死が二人を分かつまで、だろう?」


「うん」


 彼に見えないように胸元で涙を拭いた。


「行こうか。日が暮れる前に村か転送門を見つけられればいいのだが」

4話はここまでです。

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