第四話 心ない人々 ⑤
目を覚ます。
アランはまだ眠っている。アランと繋いだ手を離して起き上がり、大きく背伸びをした。
「ん?」
視界の隅に白い何かが見えた。そちらに目をやる。下に繋がる階段のそばだった。小さな紙が落ちてある。
周囲を気にしながら紙に近づいていく。私たちが上がってきたときにあったのなら気がついているはずだ。だから、私たちが眠っている間に置かれたはずだ。風で窓から入ってきたとも思えない。
折りたたまれた紙を拾い、広げる。
「これは、地図?」
簡易的な村の地図だろう。中央の丸が私たちがいる塔。建っている家らしきものが点で印され、延びる道が線で描かれている。その一カ所にバツが描かれていた。
「地図?」
「あ、アラン、おはよう」
いつの間にか背後にアランがいた。
「ここにいるってことじゃない?」
アランに紙を渡す。
「魔術師がさ」
「ここに来い、ということか」
「どうする?」
「相手の意図が汲めないが、歓迎、というわけでもないみたいだ。エミーリア、君はどうしたい?」
「私たちを捕まえたりしたいならもうしていると思う」
「その通りだ。他に思うことは?」
アランが私の意見に同意をしつつ、話の続きを促す。テストをされている気分だ。いや、魔術師としてのテストそのものなのだろう。頭を捻る。
「直接話をしないのは、ここに来てほしいから。それは、何か見せたいものがあるから、それか自分自身は動くことができないから、かな」
「そうだね」
「もちろん私たちが魔術師であることも知っている。アランの感知結界に触らないよう、ギリギリの距離で紙を置いたから。結界を見ることができる能力がある」
「その上で」
「うん、そこまで気づくことを見抜いた上で、選択を私たちに委ねている。それで、たぶん、私たちが『行く』という選択をするだろうと思っている」
「君もだいぶ魔術師的思考になってきたね。あまり手のひらの上で転がされるのは気が進まないが、招かれているのであれば仕方ない」
「アラン、全然気が進まないって顔をしてないよ」
アランが楽しそうにしているのが見てわかる。
「そうかい?」
「うん、方向は……」
アランからまた紙を受け取って、塔の窓から外を見る。
「あれだね」
一軒の家を見つける。他の家と変わったところはない。
「あ、猫だ」
屋根の上に黒猫が丸まって寝ている。
「行こうか」






