第四話 心ない人々 ④
「それで、どういうことなの?」
塔に戻って私がアランに聞く。
「何か気がついたことがあるんでしょ?」
アランは自分の考えを確かめるように何度か頷いた。
「彼らは『人間』ではない」
「人間じゃない?」
「彼らは『魔術人形』だ」
「……なんなのそれ」
「『魔術人形』について君は何も知らないのか」
「うん」
「人間に似せた人形を作り、魔術師がそこに魔素と自身の魔力を与え、特定の命令に従うようにした物体、それが『魔術人形』だ」
「それがあの人たちってこと? どう見ても人間にしか見えなかったけど」
見た目は人間で、外から見る分には人形だとは思わなかった。いや、受け答えは少しおかしかったかもしれない。こちらからの言葉に対してだけ反応している、という風だった。それにこちらから話しかけなければ存在に気がつかないようでもあった。
「そこなんだ。百年前にも魔術的な理論はあり、初期の製作が行われていた。もっとも、できたものは単純な命令を繰り返す程度で、一人の魔術師が同時に使える数も少なかった、というよりも、一体できてよしとされていた。そもそも人間に似せて人形を作ること自体がかなり難しい。だからあまり魔術として有望ではなかった。箒を操って空を飛ぶより難しい」
冗談めかしてアランが言った。箒で空を飛ぶ、は魔術師が言う、『とても大変なこと』を表すためのジョークだ。
「それが実用化されている?」
アランは首を振った。
「何かをしているようには見えなかった。つまり、魔術人形そのものに価値があるようだった。研究用途に近い。そうだとすると、これを観測している魔術師がいるはずだ」
「この村のどこかにいるってこと?」
「おそらく。村にいる全員が魔術人形かどうかはわからない。それに、ケーリュの家にあったここ百年程度の魔術の歴史にも登場していないし、ケーリュも発展した魔術は転送門くらいしかないと言っていた。これはおかしい」
「表には出てきていないってこと?」
歴史書もすべてを網羅しているわけではないだろう。
「研究成果を隠す理由がわからない。いや、あるのかもしれないが、少なくとも国家に属する国家魔術師ではない。国家魔術師の成果はすべて国のものだ」
アランが言うのであればその通りなのだろう。
「どうするの?」
「どうするって?」
「いや、アランはその魔術師に会いたいんじゃないかと思って」
意表を突かれたのか、はっとした顔をした。
アランが顎に手をおく。
「……そうだな、できれば会って話をしたいが」
「じゃあさ」
「いや、危険が大きすぎる。まだ何も接触してこないということはこちらを敵とみなしていない可能性もあるが、私たちの存在を把握していないとも思えない。今日は遅いからここで過ごして、明日の朝にここを発とう。私たちの目的はエミーリア、君の故郷に戻ることだ。それを優先する」
「うん、アランがそれでいいなら」
「念のため、感知結界を張っておこう」






