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【5/2コミカライズ一巻発売】【完結保証】およそ100年幽閉されていた魔術師夫婦は世界を巡る  作者: 吉野茉莉
第四話 心ない人々

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第四話 心ない人々 ②

 村に近づいて、大体の広さがわかった。家々は距離を保っていて、配置が均等というわけでもなく、舗装されているような通りもなさそうだ。見える範囲から推測する二十軒程度だろうか。村よりも小規模で、集落と呼ぶべきかもしれない。


 村の境界線と言っていいのか、簡易な柵がぐるっと取り囲んでいた。柵の途切れ目から村に入る。


 建物も簡素なものばかりだ。なんだか人がいるのか心配になってきた。外を歩いている人も見当たらなかった。


「宿屋はなさそう」


「そうだね」


 私の率直な感想にアランが返す。


「道に戻って別な村を当たった方がいいかも」


「今日中に行けるかどうかわからない」


「野営も仕方ないよ」


「いや、危険はなるべく避けたい」


 慎重な意見をアランが言う。


「それは、そうだけど」


 私も野営をしたいわけでもないし、ベッドがあればそれにこしたことはない。


「塔があるね」


「監視塔かな」


 チェンミィたちの街よりは小さい塔が村の中央に建っていた。


「うーん、誰かいないかな」


 村はひっそりとしている。


「あ、あれ」


 私が指さす。塔から出てくる人がいたのだ。服装からして男性だろうか。向こうはまだこちらに気がついていないようだ。


「行ってみよう」


 私が先頭になって歩く。アランがついてくる。


「あのぉ」


 男性がゆっくりとこちらを見て、このくしゃくしゃの顔をほころばせたように見えた。私の父親と同じくらいだろうか。


「こんにちは」


「ああ、旅人さんかい?」


「ええ、途中で立ち寄りました。どこかに一晩泊まれる場所があるといいんですけど」


「ああ、泊まる……、宿屋はないが、ここの塔の上なら自由に使っていいよ。前に来た旅人さんもそこで泊まっていったから」


「そうですか、ありがとうございます」


 二人の会話にアランが割って入る。


「この塔は何のためにあるのですか?」


 男性は笑顔のまま答えた。


「この塔……、遠くの畑を見るのに使っているだけだよ」


「わかりました、それでは今日は塔を使わせてもらいます。何かお礼ができるとよいのですが」


「お礼……、いやそういうのはいいよ」


「お心遣いに感謝いたします」


 アランが右手を差し出す。少し遅れて男性が自身の右手を伸ばす。二人が軽い握手をした。私はアランにしては意外な行動だと思った。アランは好戦的ではないが、人とちょっと距離を取ることが多いと思っていたからだ。


「それでは」


 男性は軽い会釈をしてどこかに行ってしまった。


 アランは男性と握った右手のひらを見ている。


「どうしたの?」


 私がそれをのぞき込む。特におかしいところはないように見えた。


「いいや、とりあえず塔に入ろう」


「うん」


 鞄を持って塔に入る、階段を上り三階部分に当たりそうな最上階まで行く。ふかふかのベッドがあるわけではないが、二人が眠るには十分な広さだろう。鞄を置いて両手を上げ背伸びをする。


「ご飯は持ってきたのを食べればいいよね。宿屋がないんじゃ、食事をするところもないよね」


 アランは返事をせず窓から外を見ていた。


「ねえアラン」


「うん、ああ、そうだね」


「なんか変。休む?」


 私が魔力補充のため手を出す。この行為もほんの少しだけ慣れてきた。その手をアランは取らなかった。


「いや、そうだな、もう少し村を歩いてみたい」


「やっぱり変」


「まあ、ちょっとね」


 苦笑いのような、意味深な表情をする。何かを考えていることは明らかだが、それをまだ言える段階ではない、というのはわかった。


「うーん、じゃあ私も一緒に行く」

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