第四話 心ない人々 ②
村に近づいて、大体の広さがわかった。家々は距離を保っていて、配置が均等というわけでもなく、舗装されているような通りもなさそうだ。見える範囲から推測する二十軒程度だろうか。村よりも小規模で、集落と呼ぶべきかもしれない。
村の境界線と言っていいのか、簡易な柵がぐるっと取り囲んでいた。柵の途切れ目から村に入る。
建物も簡素なものばかりだ。なんだか人がいるのか心配になってきた。外を歩いている人も見当たらなかった。
「宿屋はなさそう」
「そうだね」
私の率直な感想にアランが返す。
「道に戻って別な村を当たった方がいいかも」
「今日中に行けるかどうかわからない」
「野営も仕方ないよ」
「いや、危険はなるべく避けたい」
慎重な意見をアランが言う。
「それは、そうだけど」
私も野営をしたいわけでもないし、ベッドがあればそれにこしたことはない。
「塔があるね」
「監視塔かな」
チェンミィたちの街よりは小さい塔が村の中央に建っていた。
「うーん、誰かいないかな」
村はひっそりとしている。
「あ、あれ」
私が指さす。塔から出てくる人がいたのだ。服装からして男性だろうか。向こうはまだこちらに気がついていないようだ。
「行ってみよう」
私が先頭になって歩く。アランがついてくる。
「あのぉ」
男性がゆっくりとこちらを見て、このくしゃくしゃの顔をほころばせたように見えた。私の父親と同じくらいだろうか。
「こんにちは」
「ああ、旅人さんかい?」
「ええ、途中で立ち寄りました。どこかに一晩泊まれる場所があるといいんですけど」
「ああ、泊まる……、宿屋はないが、ここの塔の上なら自由に使っていいよ。前に来た旅人さんもそこで泊まっていったから」
「そうですか、ありがとうございます」
二人の会話にアランが割って入る。
「この塔は何のためにあるのですか?」
男性は笑顔のまま答えた。
「この塔……、遠くの畑を見るのに使っているだけだよ」
「わかりました、それでは今日は塔を使わせてもらいます。何かお礼ができるとよいのですが」
「お礼……、いやそういうのはいいよ」
「お心遣いに感謝いたします」
アランが右手を差し出す。少し遅れて男性が自身の右手を伸ばす。二人が軽い握手をした。私はアランにしては意外な行動だと思った。アランは好戦的ではないが、人とちょっと距離を取ることが多いと思っていたからだ。
「それでは」
男性は軽い会釈をしてどこかに行ってしまった。
アランは男性と握った右手のひらを見ている。
「どうしたの?」
私がそれをのぞき込む。特におかしいところはないように見えた。
「いいや、とりあえず塔に入ろう」
「うん」
鞄を持って塔に入る、階段を上り三階部分に当たりそうな最上階まで行く。ふかふかのベッドがあるわけではないが、二人が眠るには十分な広さだろう。鞄を置いて両手を上げ背伸びをする。
「ご飯は持ってきたのを食べればいいよね。宿屋がないんじゃ、食事をするところもないよね」
アランは返事をせず窓から外を見ていた。
「ねえアラン」
「うん、ああ、そうだね」
「なんか変。休む?」
私が魔力補充のため手を出す。この行為もほんの少しだけ慣れてきた。その手をアランは取らなかった。
「いや、そうだな、もう少し村を歩いてみたい」
「やっぱり変」
「まあ、ちょっとね」
苦笑いのような、意味深な表情をする。何かを考えていることは明らかだが、それをまだ言える段階ではない、というのはわかった。
「うーん、じゃあ私も一緒に行く」






