第十話 最初の弟子 ⑧
場面が移り変わる。
街を歩いているアランとマリアがいる。紙袋を抱えた背の低いマリアがゆらゆらと動きながらアランについていっている。
「重いー」
「だから私が持つと言っているのに」
「師匠に荷物持ちをさせてたなんて他の魔術師に言われたら嫌じゃない。アランも弟子に甘いなんて言われたら嫌でしょ?」
「そういう意見は私にはどうでもいい。それよりも師匠を呼び捨てにする方がよくないと思うが」
「アランは嫌なの?」
「私がどうではなく、マリア、君が言っているように周りにどう思われるかの話をしているんだ」
「ふうん、じゃあ今誰も聞いていないからいいっか」
「それはそうだが……」
「ねえ、アラン、私たちもう半年経つじゃない?」
「そうだね」
「でも私は基礎訓練ばっかりじゃない? そろそろアランの手伝いがしたいんだけど」
「君は基礎ができていないからね。もうしばらくは基礎訓練だけだ」
「えー、つまんなーい。それなら一人でもできるのにー。私じゃ力不足だっていうの?」
「力不足なのは事実だ。それに長い目で見れば、基礎を確実にした方がいい。君は魔術学校でも実技の成績はあまりよくなかったみたいだね。集中力が足りていないんじゃないか。訓練の様子を見ていてもすぐに気が散っているように感じる」
「それを言われちゃうと……。あ、でも長い目ってことは、長い目でアランが見てくれるってことだよね?」
「それは弟子だからね」
「ふふふ、ならいっか」
紙袋を持ちながらマリアがくるりと回る。
「ねえ、アラン」
「なんだい?」
「他の弟子の魔術師は師匠の家に住み込みで働いているのも多いって聞いたんだけど……」
「そうだね、私もそうだから」
「アランはエチカ師匠に拾われたからでしょ?」
「そう。私には家がなかったからね」
「じゃあさ、アランがエチカ師匠のところを出るなら……」
「なら?」
「ううん、なんでもない」
「そう」
「今日はそっちに行って夕飯作るね」
「師匠が喜ぶと思うよ。私は簡単な料理しか作れないから」
「だからあ……、まあいいっか。アランなんて風邪にでもなっちゃえばいいのに。そうすれば私のありがたみもわかるでしょ」






