第32号 出会い
ステップ39 まこひと
「私の武器はスピードとジャンプ力でした」
まこひとの話は続く。
「え?シュートやディフェンスじゃないんですか?」りほは驚きながら聞く。
「そうですね、ディフェンスは武器とというより、私には当たり前のものというか‥最初守りしかできませんでしたからね笑‥ただ、3Pは、チームに私を含め2人しか武器としてシュートできる人はいませんでしたけどね‥そう考えると3Pも武器なのかな?‥」
七花はそのことを聞いて思った。
(それでもチームが勝ち、楽しいなんて‥すごい)
「いいのか悪いのかわかりませんが、うちのチームには、天才はいませんでしたね!上手い人ならいましたし、加入してきましたね」
(わたしからみたら、まこひとさんが天才にみえるけど‥)そう思い見つめる七花。
まこひとが気付く。
ニコリと笑い「私は天才ではないですよ?ただ、強い人、上手い人がいると楽しくてウキウキしちゃいましたね」
話を聞いているだけで、バスケを楽しんでいるのがわかる‥七花はそう感じた。
「あ、ごめんなさい、面白い話っていっといて、話が脱線してばかりで」
首を横に振る七花とりほ。
時計をチラッとみて「だいぶ話しちゃいましたね!私ばかりすみません」と頭を下げるまこひと。
「そんなことないです!お話も聞けてプレイもみてれよかったです!」と、七花はすぐ返答する。
ちなみに、伊藤まこに、後日バスケに誘われて、マイケルジョーダンをみせられてびっくりすることになる。
七花がバスケにハマった理由のきっかけ、原点は、まこひとにあるのかもしれない。
「自分でやってみてわかるんです」
まこひとの言葉も心に染みていた。
この機を境に、七花の中で変化が起こる。
自分は何を楽しんでいるのだろうか?
何に夢中になっているだろうか?
七花の想い描いていたビジョンの、ぼんやりした所々が、徐々に明らかに、聡明になっていくような感じだった。
全体が見えてくる‥
「そうだったのか‥」七花はひとり納得している。
リトルリーグと高校で有名になった七花。
中学のソフトボールもそうだが、野球に関しては、前者になる。
では、大学では?と思うだろう。
「知識は宝!」と、七花はよく言ってらしい。
その言葉通り、七花は、色々吸収していった。
「経験は一生ものです」そう言った、まこひとの言葉も思い出す。
まさにその通りで、七花が色々これから経験することは、無駄ではなく、その一つ一つが、朝日七花を形成していくものになっていった。
そして、七花は、野球の表舞台から突如姿を消すことになるのである。
間多理団を創設したときは、七花が25歳になる前だった。
最初は、選手の悩み、相談が多かった。
七花は、自分の目で見て判断することを一番とした。
先入観や噂に惑わされないためでもある。
もちろん、七花の人をみる力がなければ、それは成り立たない。
話を聞き、自分の目でみて助言する。
そして気付く。
なんて不公平な世界なんだと‥。
子供の時代に、楽しめないなんて‥と。
失敗を恐れず、楽しむ子供の良さが失われつつあると感じる。
人の目を顔色を気にして、または、気にしないといけない環境の中にいるといえる。
子供たちも、七花のこちら側に来て寄り添ってくれるスタイルに気付き惹かれる。
そんな子供たちに、心から楽しんでほしいと教え始める。
そこから、間多理団の時が動きだす。
七花は、まこひとの言葉の意味を理解する。
「負けても楽しいんですよ」
本当にそうだった。
勝つためにやっていることには変わりない。
でも、負けても、その試合からたくさんのものを得る。
(まこひとさん、この事言ってたのかなぁ‥)と七花は感じ思う。
みんなの顔をみると、死んでない。
先に進もうとしているのかもしれない。
「楽しいって、すごいな」
七花は改めてそう思った。
選手の良さを最大限に活かす。
それが七花の役目でもあった。
ただし、助けはできるが、代わりになることはできない。
その場その場を、選手自らがチョイスし切り開いていかなければならない。
親にさせられているのか?自分がしたくてやっているのかでも変わる。
七花はそれも含め、自分で練習に来ることを重視する。
親の送迎はいらない。
誰かに頼ることは悪いことではないが、ここでは、それは違うのだ。
意志と行動力‥この2つが伴ってこそなのだ。
七花の教えを受けたからといって、成長するとは限らない。
それは、七花が悪いわけではない。
やはり、理解してそれを行動に表すことは難しいし、大変なのた。
そんな選手たちでも、七花は対等に接する。
子供たちにとって、野球だけではないからだ。
今は、野球をやっている。
ただ、それだけに過ぎないのだ。
野球でなければダメではないのである。
七花は、間多理団をキッカケに、子供たち自身が考え、道を選択することを望んでいる。
自分自身のために生きて(進んで)欲しいのだ。
そんな思いを知ってか知らないかわからないが、間多理団が形になっていく。
負けてばかりいた間多理団が、勝つようになる。
七花は思った。
「まこひとさんのチームみたいだな」
まさにその通りで、チームの力は絶大で、七花にとって個の力には興味がなかった。
一人だけズバ抜けて活躍する選手がいる。
七花は、だったら、そこに居なくていいのでは?と思ってしまう。
なぜ、上を目指さないのか?と。
自分より格下を相手にして、何が楽しいのかと。
そうは思っているが、今は、口に出さない七花である。
口に出してしまえば、スポーツ漫画やアニメの主人公やキャラが成立しなくなる。
七花は自分が経験してるからこそ、そう思い言えるのかもしれない。
「ひとりじゃないから、ここまでやってこれたんです」
まこひとが言った言葉を思い出す七花。
(どれだけの天才やスターたちが、それを理解しているのか‥)
七花はぼーっとしながらそう思っていた。
間多理団で、入団を断られた選手と言えば、新崎が、真っ先に名前が上がるだろう。
七花は、そうそう拒否はしないが、新崎だけはダメだった。
と、いうよりも必要なかった。
では、間多理団に入ったものの、辞めた選手はいるのか?
答えはYESだ。
家庭の事情でできなくなる。
引っ越しや、家庭内の問題、体調面など、理由はたくさんある。
しかし、それは、間多理団でできないだけであって、野球を、スポーツができないわけではない。
七花は、そういった子たちに、下を向かないよう、前をみることの大切さを見て送り出した。
「場所なんてないの当たり前でしたから、壁や木、ポールとかでシュート練習してましたよ!」‥と、まこひとが笑顔で言っていたことを思い出しながら‥。
七花は、野球は恵まれていると感じた。




