第31号 原点
ステップ38 原点
七花は、友達のバスケチームの話を聞いてなかったら、間多理団をつくらなかったかもしれない。
友達といっても、歳の離れた友達で、今は53歳だ。
その人が19歳の時に作ったチームの話が、七花の心を動かした。
みんなでバスケを楽しくやりたい。
その思いでメンバーを集めていったらしい。
12年前ー
七花が20歳の頃、出会いは市民体育館で友達とバレーボールをやっていた時だった。
(七花は助っ人である)
体育館をネットで半分に分けて、バレーボールとバスケットボールが行われていた。
そんな中、バスケの中で一人の選手に目がとまる。
(あの人だけ別格だ‥大学生かな?)
七花はそう感じ思った。
「どした?」友達のりほに聞かれる。
「あ、うん。あの人、すごいなーって‥赤の7番つけてる人」
「赤の7番‥」りほは探す。
「あ、まこひとさんか!」
「りほ、知ってるの?」
「うん!体育館取る時とかによく会うし、譲ってくれたり、空いてるスペース使わせてくれたりと、優しい人なんだよね!」
「へぇー、大学生なの?」
りほが、こっちをみて目をまんまるにしている。
「七花もそう思ったのね‥」
りほはクスクス笑い出した。
「まこひとさんね、41歳だよ!」
「えーー!!!」
さすがの七花もびっくりした。
「ちなみに、まこひとさん、バスケは引退しています!」
「引退?でも、今、あそこで‥」
「あー、あれは、やりながら教えてるらしいよ」
「教えてる?だって、あんなにすごいのに‥」
「だよね!わたしも理由はわからないんだけど、色々あるんじゃないのかな?」
「あんなにすごいのに‥教える‥」
七花は何かを考えていた。
あんなに楽しそうにプレイしているのに、やめて教える側になる。
年齢を聞いても、あの動きをみたら信じられないくらいだ。
「ちょっと待っててね!」りほがそういいバスケのコートの方に向かって行った。
しばらくして‥
「ただいまー!」りほが帰ってきた。
「おかえり!」
「七花、まこひとさん、後で時間とってくれるって」
「え?りほ、わたし面識ないのに‥」
「ん?七花は有名人なのを自覚しなさいよ」
「有名人かな‥だとしても女子野球の世界だけだよ」
りほは呆れた顔とゼスチャーをする。
「ま、とりあえず、この後ね!」
そういい、みんながいるコートに戻って行った。
「りほったら‥」
コート使用終了時間後
りほのジョイントにより、まこひとに七花の紹介をし初対面はすんなり行き本題へと移る。
体育館のロビーは広く、くつろげる場所も多い。
その中で、窓際のテーブル席に座り話し始める。
まこひとは、プレイ中とは違い、とても柔和で、落ち着いていた。
「まこひとさん、七花が色々聞きたいことがあるみたいなんです。よろしくお願いします」りほが頭を下げる。
七花も一緒に頭を下げる。
そんな二人にまことは反応する。
「いやいや、そんな畏まらなくても‥私は大した人ではないんだから、頭を上げてください」
そう落ち着いた適度なスピードの声で言われると、素直に従ってしまう。
「わたし、まこひとさんが、このチームをつくったと聞いてお話を聞きたくて‥」
七花の言葉にニコリと微笑むまこと。
「そうですね、私が作ったでいいのかわかりませんが、創設メンバーでやろうとなりました」
練習後にもかかわらず爽やかな対応のまこひとだ。
「なにがきっかけになったんですか?」りほが聞く。
「そうですね、バスケが楽しいから‥かな!」
その言葉に、七花は頬が緩み笑顔になる。
「最初は色々なスポーツをやってただけなんです。バスケもその中のひとつで、もちろんバレーもやってました」
りほはその言葉に七花の方を向いてニコニコしている。
「まこひとさん、バレーも上手いんだよ!」と、りほは自分のように自慢している。
「昔、やっていただけですよ」
まこひとは、なんの嫌味もなく優しい声でそう言った。
「色々やっていたんですが、バスケがこんなに面白いとは思わなくて‥それで、バスケだけでコートを借りるようになったんですよ」
「当時はバスケブームみたいのあったって聞きました」りほが入り込む。
「そうだね。それもあったけど、私はNBAの影響かな?」懐かしいやら、恥ずかしいやらの顔をするまこひと。
「やっぱりアメリカですか‥」
七花がボソっと呟く。
「朝日さんもですか?」まこひとが食いつく。
「あ、えっと、わたしもなくはないのですが、アメリカだ、アメリカだっていうバカが身近にいまして‥」
それを聞いて笑うまこひと。
「わかります!私もバカですから!」
そういい笑うまこひとを見て、七花は大人なで、できた人だな‥と感じていた。
「とにかく楽しくてね!みんな初心者なんですが、ホント楽しかった」
そういいスポーツドリンクを飲むまこひと。
「みんな初心者ってすごいですね」りほが反応する。
「そうだね、練習、練習して、対戦相手がみつかると試合をして負ける‥その繰り返しだったかな‥でも、楽しかった‥」
七花はキョトンしている。
(毎回負ける?楽しい?)
「‥あの、みんな初心者っていってましたけど、誰が教えていたんですか?」七花は気になったので聞いてみた。
「そうですよね、気になりますよね!‥うちらには、教える人はいなかったですね」
「え?」りほが驚く。
七花もだ。
「みんなで楽しみたい、だから、みんなで色々話したり教えたり注意したりして、やってましたかね!‥なによりNBAがお手本でしたね」
そう言ってニコリとするまこひと。
「一つ面白い話をしましょうか」
そう、まこひとが言ってきた。
頷く、りほと七花。
「私のチームは、初心者ばかりで、負けていたんですが、活躍する選手が必ずいたんです‥そんな選手をみんなで喜び、尊敬してましたね」
まこひとさんのチームは初心者ばかり。
学校の授業でやったくらいの人たちで創設される。
まこひとさん自身も当初は得点力がなく、ディフェンスとゲームメイクに集中していたらしい。
そんな中、まこひとの弟あかひとは、ミドルシュートをバンバン入れていた。
彼も同じ境遇だが、こと、得点に関しては彼に頼らざるを得ない状況だったらしい。
しばらくして、後のスターティングファイブとなる男ケンタが加わる。
彼は加入当初から、すべてをそつなくこなす。
ここから、まこひととケンタのコンビネーションも確立されていく。
徐々に、仲間も増えチームとしても起動に乗っていくが、元全中のチームや全国出場のチームにいた人、有名大学生と対戦していく頃には、連敗から連勝に変わっていく。
どのチームとやっても負けない。
非公式ではあるが、50連勝くらいしたらしい。
その後、創設メンバーは、それぞれの道に行きチームは解散したが、教えたいという気持ちのまこひとの思いで、このチームに残り続けているらしい。
「自分で言うのもアレなんですが、シュート力がない私が、後にエースになりました」
それは、驕りでも傲慢でもなく、全中経験者や全国経験者、大学生達もが認めていたらしく、まこひとの口から言われて嫌味もなかった。
「得点を取れると、さらにバスケが楽しいんですよ」
そういい笑うまこひとの顔が、七花は忘れられなかった。
「うちのチームは、みんな試合にでますよ」とも話してくれた。
まこひとが一番時間が長かったらしいが、交代するし、みんなでる。
自分が例え活躍していても、交代するという。
「まあ、相手はガッカリというか、拍子抜けみたいになりますけど」
まこひとはそう言うが自慢しているわけではないのがわかる。
「私、私ってなってる時に変わるの楽しいんですよね!みんなにも経験してほしいし」
楽しそうな顔をするまこひと。
後からわかったことだが、まこひとは相当すごかったらしい。
チーム解散後、他のチームからも誘われたようだ。
23番をあけておくから‥と言われたことを考えると、まこひとの教科書は、マイケルジョーダンで、プレイスタイルも似ているのだろう。
七花も、まこひとを知るにつれ、それが納得へと変わって行くのがわかった。
「やっぱり、最初のインパクトは伊達じゃなかった」
七花の目は輝く。
「わたしも、まこひとさんみたいなチームをつくりたい!」
七花の心に何かが芽生えた瞬間だった。




