7振り、誤解しないでくれ
「ブモオオオォォォ!!!!」
「うおぉ!?重っ!」
ミノタウロスの猛攻を俺は捌く。防げば防ぐほどミノタウロスの技はレベルが上がっていくのだ。スキルがレベルアップするわけでもないと思うし、非常に不可解だ。モンスターが手加減をしてくれていたとも思えないし。
「えいっ!」
「ブモッ!?」
そんなミノタウロスの猛攻の最中。ユーカが隙を見て攻撃してくれる。そのお陰で、一瞬ではあるが俺への攻撃が中断されるのだ。ミノタウロスはうっとうしそうにユーカを振り払おうとするのだが、
「やらせねぇよ!」
そんなことは俺が許さない。隙を見せたミノタウロスへ俺は剣を突き出した。狙いは顔。運が良ければ目をもらいたいところだ。
が、当然そう上手くはいかない。ただ、鼻を深く傷つけることに成功。血が垂れて鼻や口の周りに行くので、ミノタウロスはうっとうしそうにしている。呼吸がやりにくくなるからな。気持ちは分かる。
そうしている間にミノタウロスに向かって、
「はっ!」
今度はまたユーカが刺突。首の傷を更に深くした。あと2回くらい攻撃すれば倒せるかもな。
まあ、流石にすぐには無理そうだが。
「ブモオオォォォォ!!!!!」
危険を感じたのか、ミノタウロスは斧を振り回し始めた。狙いは定めず、近づけないようにしていると考えて良いだろう。ここで俺たちの取れる選択は2つ。
「ユーカ。きついなら逃げるぞ!」
「だ、大丈夫!キシィ君はポーション飲んで回復して!」
ユーカはまだ戦えるらしい。俺は彼女の言葉に甘えてポーションを飲む。阻止しようとミノタウロスも迫ってきたが、振り回している状態だとなかなか速度は出せないらしく問題なく回復できた。
「ほらよっ!」
俺はポーションを飲み終わった後、すぐに攻撃に転じる。攻撃と行っても石を投げるだけだ。ほとんどダメージにはならないが、
「ブモォ」
煩わしそうにしている。お陰で、俺の方への斧の振り回しが多くなった。
逆にそれはユーカの方の警戒が薄くなると言うことで、
「えい!」
またもやユーカの突きが決まる。だが、ここで問題が起きた。
「え?あっ。抜けなっ!?」
「ブモォォオォx!!!」
「きゃっ!?」
ナイフが抜けなくなり、固まってしまったところを吹き飛ばされた。
俺はすぐにカバーに入る。吹き飛ばされたところへ回り込んでユーカをキャッチ。
「大丈夫か!?」
「う、うん。……で、でも、足に力が入らないかも」
折れたのかは分からないが、足に不調があるらしい。ポーションは今は無理だな。俺たちが1つに固まったから、またミノタウロスは素早さ重視の戦い方に変えてきた。モンスターのくせに知能が高くて嫌になるぜ。
「よっ!」
「ブモッ!?」
相手が変えるなら俺も戦い方を開ける。というか、さっきまでの戦い方は出来ないからな。暴れたときにやったみたいに俺は石を投げた。できるだけ顔面に行くようにしたから、そのお陰でミノタウロスの動きが一瞬止まる。顔を攻撃されるのはまずいって分かってるみたいだからな。
そして止まったところで、
「えいっ!」
「ほっ!」
「ブモッ!?」
俺たちは屈み、2人で石を投げ続ける。ミノタウロスも迂闊に近づいてこれない状態だ。暫く煩わしそうにして後退していたが、すぐに斧で顔を隠し、
「ブモオオオォォォォ!!!!!!!」
突進してくる。ただ、これは予想済みだ。俺はすぐに跳んで回避する。それから、
「お返しだ!」
「ブモォッ!?」
突進の勢いが収まったところで腰の辺りに攻撃。流石に猛スピードで走ってるコイツの首を切るのは無理だった。攻撃のために止まってくれないときついな。
因みに背中はそんなに硬くなく、そこそこ深い傷をつくることが出来た。背中の筋肉を発達させるのは難しいからなぁ。腹筋はまだ着きやすい方ではあるけど。
「ブモオオオォォォォォ!!!!!!」
着られミノタウロスは振り返り、また俺めがけて突進。今度は顔を隠していないためホーミングもバッチリだ。俺は木の後ろに回り込んで直撃を回避。
すぐにミノタウロスは回り込んで斧を構えるが、
「はぁ!!!」
その斧が振り下ろされることはなかった。死角から飛び込んできたユーカの刺突によって、首を完全に貫かれたのである。これで、
「勝った、のか?」
「うん!……あっ。違うね。ここは、やっったか!?って言うところかな」
「いや。それフラグだから」
俺たちは軽口をたたき合う。なぜなら、すでにミノタウロスを倒し終わったと確信できているからだ。この世界だと宝箱のドロップがあるからな。生死が分かりやすくて助かる。
「さて、ユーカ開けてくれ」
「うん!」
ユーカは運が高いからレアドロップが出る可能性もある。…………今まで出たこともなかったし、大した期待はしてないがな。
少し宝箱が開いたところで、
《レベル64(5UP)になりました》
レベルが上がった。最近は上がりにくくなってたのに5も上がったのか。かなり格上だったんだな。ただ、流石にスキルを獲得したりスキルが進化したりはしなかったか。最近はスキル関係の通知が少なくて寂しい。ユーカと接し始めたときは夜関係のスキルが手に入ったりはしたけど。
「……あっ!」
「ん?どうした?」
宝箱の中身を見たユーカが声を上げる。俺も声につられて目線が移動する。宝箱の中には
「随分と強そうなものが入ってるな」
「こういう武器もあったんだね。こっちの世界で始めてみたよ」
入っていたのはボウガン。名前の通り銃型の弓矢だな。弓と違って弦は引っかけるだけで良いから、狙いを定舞える間にあまり筋力を使わなくて済む。それが利点だな。
「それはユーカが使え」
「え?いいの?」
驚いたようにこちらを見るユーカ。俺としては全く問題ない。ユーカがいなければミノタウロスは倒せなかっただろうしな。それに、
「これでお前ともお別……れ、になるかもしれなくもないし」
「むぅ~」
突き放すように言うつもりだったが、上目遣いで顔をのぞき込まれて微妙な言い方になってしまった。美少女の上目遣いはズルいな。
俺のそんな反応を見てユーカは不満そうに頬を膨らまし、
「私がいたからミノタウロスも倒せたでしょ?これからも大変なことはあるかもしれないし、一緒にパーティー組んでくれないの?……勿論。今まで通りの報酬も渡して良いから」
「…………」
「…………」
俺たちは無言で見つめ合う。今回助けになったことを言われてしまうと返答が難しいな。本当は1人で行きたいところだけど、助かったのも事実だし、
「……ユーカがレベル15になるまで」
「え?」
「15になるまでは、組むことにしよう」
「あ、あ~…………」
頬を引きつらせるユーカ。どうしたというのだろうか?レベル5になったばかりだし、レベル15になるまでかなり時間は掛かると思うのだが……
「え?もしかして、もう15になったのか!?」
「……う、うん。ミノタウロスに攻撃できるまで10くらいにはなった方が良いかなって思って11まで上げたし。ミノタウロス倒したら25超えて」
「…………はぁ~。なら、50まで。50まででどうだ?」
俺は最大限の譲歩をする。レベルが20以上上がるのにはかなり時間が掛かるだろう。俺も後半のレベルを上げるのには時間が掛かった。……いや。考えてみると2週間も掛かってないけど。
「……一生じゃないの?」
「お前もここの人間と関わってからもう1度考えろ。こっちには美形が多いぞ」
こちらの世界、かなり美形が多い。しかも種類も様々。爽やか系もいればワイルド系もいる。肉食も草食も、甘やかしてくれる年上も甘えてくる年下も。イケメンの種類は様々。
なのだが、俺の発言をユーカは別の意味で捉えたようで。
「っ!カシィ君は私よりこっちの世界の人が好きなんだね!」
「な、なぜそうなる!?」
「だって、こっちの世界には美形が多いって言ったじゃん!私よりも現地で適当に付き合いをした方が楽しいとか思ってるんでしょ!」
掴みかかってきそうな勢いで言ってくるユーカ。そういう意味じゃんかったんだけどな。
……こういうのは余計に情が湧くから言いたくなかったけど、ここは言うしか無さそうだな。
「ユーカ」
俺は真面目な顔、そして真面目なトーンでユーカに話かける。
「な、何?」
ユーカはたじろいだような顔。俺はそんなユーカへ更に1歩距離を詰めて、
「俺はユーカのこと、可愛いって思ってるぞ。それこそ、こっちの世界のヤツにも負けないくらい」
「なっ!?」
俺の突然の告白にユーカは赤くなった。こういう本心言っちゃうと別れずらくなっちゃうんだけどなぁ。ユーカと別れたくないって気持ちも強いし諦めるか。
「でも、だからこそユーカには優しいイケメンと一緒になってもらいたい。俺だと、……不誠実すぎるからな」
俺はユーカに諦めさせるためだったとは言え、身体の関係を迫ったような人間だ。しかも、しっかりその関係を築いてしまっている。誠実と言うことは出来ないだろう。
そんな気持ちを込めていったのだが、
「……良いよ。カシィ君が不誠実だって。不誠実とかそんな理由で、カシィ君を嫌いになんてならないから!」
「っ!」
真正面からの好意。俺、こう言うのには弱いんだよな。やめて欲しい。
「……と、とりあえず、レベル50までな。その間に気持ちが変わるかもしれないし。な?」
「むぅ。カシィ君のバカァ。……でも、良いよ。今はそれで許してあげる。ただ、一生逃がさないから覚悟してね?」
「お、おぅ」
くっ。押され気味だ。このままでは籠絡されかねん!ここは逆に押し返すことで距離をとらせよう。
俺は顔をユーカに近づけ、
「ん//」
唇を塞ぐ。森の中とは言え日中だ。誰かに見られるかもしれないし、こんな所でこれは嫌なは、ず。だよな?なんか逆に口内むさぼられてるんだが。俺よりユーカの方が異様に積極的なんだが!?
「……ぷはっ!」
1分近く口内をなめ合った末。呼吸がきつくなってきた俺は唇を離す。まさか俺が逆に負けるとは、なんということだ!
ユーカは俺の顔を見てニヤニヤと笑いながら、
「ふふっ。順調に私に落ちてきてるね。絶対離さないんだから」
そんなことを言って抱きついてくる。そして今度は俺の方が口を塞がれ、
うぐっ!やめろぉ!まだ息が上がってて苦しいんだよ!呼吸はそんなに続かないから!
とは思うが、なぜか無理矢理ユーカを押しのけることが出来ない。そのまま俺はさっきよりも長く口づけさせられて、
「はぁ!はぁ、はぁ」
「ふふっ。夜、頑張ろうね」




