5振り、受け入れないでくれ
「あっ。春川君」
「ちゃんと戻ってきたぞ」
俺は死体から色々回収した後、姫崎さんの元まで戻った。俺の持っているもので姫崎さんは全て察したようで、クラスメイトのことを尋ねてくることは無かった。
「じゃあ、近くの村まで行くか」
「うん!……あの。お姫様抱っこして春川君が移動してくれれば、すぐに着くかなって思うんだけど」
期待したように俺をチラチラ見てくる姫崎さん。俺をこき使ってでも早く安全な場所へ行きたいようだな。羞恥心はどこへおいてきてしまったのやら。
「誰かの悲鳴が聞こえたら、一旦運ぶのは中止してそっちの対応をするからな」
「わ、分かった。……お姫様抱っこ、してくれるって事で良いよね?」
「ん?姫崎さんが良いなら、俺は別に問題ないけど」
最初から問題ないと思っていたが、まさかここで聞かれるとは思わなかった。姫崎さんとしては俺に躊躇して欲しかったのか?もしかして、揶揄いたかったとかもあり得るか?
「や、やってくれるなら勿論お願いするよ!」
色々考えたが、姫崎さんは少し顔を赤くしながら寄ってきた。俺もこれ以上色々話したりすると羞恥心が湧いてきそうなので、無言でその身体を抱き上げる。
「飛び降りるから舌を噛むなよ」
「分かった」
姫崎さんが返事をし終わったところで飛び降りる。怖いのか姫崎さんは目を瞑っていた。飛び降りるときに衝撃がいかないよう、できるだけ柔らかく着地。そのまま、膝に掛かった負荷を利用して前へダッシュ!
「は、速ぁい。……サラマンダーより速いかも」
「……こんな時にそんなネタを喋れるとは、随分と余裕があるんだな」
俺はあきれた目線を送る。まさか姫崎さんがこんなネタを知っているとは思ってなかった。姫崎さんは意外とネット民なのか?
そんなことを考えつつ,移動しながら会話をする。さっき悲鳴を上げてたクラスメイトとかについても聞いた。
「……さて、着いたぞ」
「ああ。うん。ありがとう」
村へ到着。村の人々に見られる前に、俺は姫崎さんを地面に下ろす。それから姫崎さんに真面目な顔で視線を向け、
「ここから先は、姫崎さんが自分でどうにかしてくれ。俺がやるのは村まで連れて行くところまでだ。それ以降は面倒を見切れない」
「なっ!?」
降ろした後の俺の言葉で表情は一転。驚愕と絶望の合わさったような表情だ。こんな知らない所に1人で放り出されたらこんな表情にもなるだろうな。
「ここまでの面倒を見ただけでも感謝してくれ。これ以上は俺にメリットがなさ過ぎる」
「そ、それなら!私は『運』にポイントを全部振ってるからレアドロップに」
「必要ない」
「っ!」
俺はバッサリ切り捨てる。『運』特化とか、どこのラノベに夢を見たバカだよ。最低限の攻撃力を持ってからならともかく、最初から『運』に極振りとかあり得ないだろ。『機動力』に極振りした俺が言えたことじゃないかもしれないけど。
「たとえレアドロップが出るとしても、ゴブリンすら倒せない仲間はいらない。それくらいなら、この辺にいる現地の冒険者と手を組んだ方がましだ」
「そ、そんな!」
すがりつくような目をする姫崎さん。だが俺だってある程度の余裕はあるものの、それでも今の生活で手一杯な感じはしている。この状態で姫崎さんのお世話に手間取っていたくはない。
「ねぇ!お願い!何でも、何でもするから連れてってよ!」
「……何でも、ねぇ」
俺は目を細める。その視線で姫崎さんはびくりと身体を震わせた。これはあれだな。アレが使えるな。
「分かった。そこまで言うなら、姫崎さんのレベル上げに付き合ってやっても良いぞ。パーティーを組むんじゃなくて、あくまでもレベル上げに付き合う関係だ。期限はレベルが5になるまで」
「ほ、本当!」
顔を輝かせる姫崎さん。だが悪いな。今から俺はその顔を曇らせることを言うんだ。許さなくても良いから、俺に手間をかけさせないでくれ。
「ああ。ただし、その間お前の身体でその分は払ってもらうことになる」
「なっ!?か、身体って……」
また驚愕に顔を染める姫崎さん。姫崎さんに何があったのかは、ここに運ぶまでに軽く聞いてある。だからこそ、身体の関係を求めた俺は嫌なヤツとして映るだろう。確実に拒否され
「い、良いよ」
るはず…………え?
「ひ、姫崎さん?分かってるのか?」
「分かってるよ。……春川君なら、良いよ」
覚悟の決まった目で俺を見て着る姫崎さん。
ど、どうなっている!?これじゃ計画と違うじゃないか!俺はこのまま嫌われて二度と会わない予定だったのに!
「ひ、姫崎さん。言っておくが、この村にも俺より強いヤツはいるからな!取り入るならそいつらに行った方が」
「ううん。春川君が良い!」
俺の手を握って宣言してくる姫崎さん。俺から身体を求めたわけだし、引くわけにもいかないよな。ど、どうしよ。やるしかないのか?
やるしかないよな。
「……分かった。姫崎さんがそれでいいならその条件で契約しよう」
「うん!……あっ。それと、私のことは由香って呼び捨てで呼んで!名字にさんつけられるのはよそよそしいから。それと、私は春川君のこと花穂君って呼ぶね!」
元気いっぱいにそう言ってくる姫崎さん。……いや、由香か。
「分かった。由香。よろしく。ただ、俺のことは花穂じゃなくてカシィって呼んでくれ。一応異世界ではあるけど偽名を使ってるから」
「カシィね。了解!じゃあ、私も偽名でユーカにしようかな。変えても良い?カシィ君」
「構わないぞ。ユーカ」
こうして俺たちは名前(偽名)で呼び合うことになった。どうせレベル5になったらお別れだし良いかと思ったが、ちょっと早計すぎたか?
その後は村に入ってクラスメイトの遺骨を提出。そして、倒したモンスターの素材などを売ってお金をもらったのだが、
「金貨1枚になります」
「……多いな」
普段より稼ぎが多い。盗賊団のアジトを伝えたときはもっともらったが、それでも収入としては多い部類だ。理由を聞いてみると、
「この嵐狼、レアのモンスターなんですよ。その分素材も貴重でして、かなり高額なんです」
「ほぇ~」
狼がレアモンスターだったらしい。そう言われてみると、こっちに来て始めて見るモンスターではあったな。嵐狼なんていう格好良い名前だったのか。
なんていう思いがけない収穫もありつつ、姫崎さんことユーカを冒険者として登録したりしてその日の仕事を終えた。そのまま宿へ帰って2人部屋に変えてもらい、
「優しくは、してやらないから」
「んっ。良いよ。カシィ君。来て」
ベットに押し倒したユーカへ俺は覆い被さる。その日、かなりお楽しみしましたとさ。
因みに朝までお楽しみだったため、次の日は休みだ。一応クラスメイトが襲われてないか見回りには行ったけどな。




