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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
4章 決戦、そして……
133/142

episode.131 貫きたいなら

「よく分からないけれど……何だかまずそうね」


 ミクニは目を細めながら盾と槍が合わさったような武器を取り出す。


 戦うことになるのか? ここで? しかしそれだと不安が大きい。私とミクニだけであの大きな邪悪に敵うのか? とてもそうは思えない。ミクニは戦える、でも、あれほどの敵を撃破できるのかとなると話は別だろう。


 でも敵が来るなら戦わなくてはならない。

 生き延びるために。


「クイーンさん、あたしが時間を稼ぐわ。皆に連絡して?」

「は、はい!」


 皆が来てくれれば少しは何か変わるかもしれない。

 取り敢えずプリンセスら全員と連絡を取る。

 ヨクが放った黒い人の形をした影はケラケラ笑いながらミクニに次々襲いかかる。かなりスピーディーな敵だ。ミクニは武器を器用に使いながらその敵たちに対処する。複数の敵の素早い動きを前にしても慌てはせず、効率的に動いている。


『クイーン……! ちょうどよかった。空が黒くなって……これは一体? そちらも変化があるのか?』


 一番に繋がったのは盾のプリンスだった。

 彼も異変に気づいてはいるようだ。


「は、はい、ヨクさんの大きな顔が」

『……敵か!?』

「はい。攻撃を受けていて……今はミクニさんが戦ってくださっています」

『そんな……。分かった、すぐに行く。待っていてほしい、必ず――く――ってい――』


 途中から通信がおかしくなってきた。音声がやたらと途切れる。ところどころは聞こえるのだが安定しない。通信状況が良くないのだろう、恐らくは。


 これでは皆とまともに連絡を取るのは無理か……。


 直後、右側から黒い人の形をした影一体が襲いかかってきた――息を吐き出しつつ右手の手のひらを突き出して攻撃!


 影は後ろ向きに飛んでいって消えた。

 自分の力でもやれた、小さな成功が自信に繋がる。


 このくらいの軽い敵なら今の私でも対処できそうだ。いや、やらなくてはならないのだ。今こそ、密かに重ねてきた訓練の成果を披露する時。それに、クイーンとして、ここで全負担をミクニに背負わせるわけにはいかない。


 しかし……この鏡は何かに使えるのだろうか?


 ふと思い、試してみることにした。


 飛ぶように宙を駆けてきた黒い人の形をした影へ、ティアラから変化した手鏡の鏡面を向けてみる。

 すると、影は、ぼろぼろと崩れて消え去った。


 ……これは使える!


 ここで出し惜しみする意味などない、思いきって使えるものはすべて使おう。


 手鏡の鏡面を外へ向け、ミクニを襲いながら飛び交う影たちへ、その鏡面を見せる。やはり先ほどの事例が偶々だったわけではなかったようで効果はあった。影たちは急速に弱体化し、さらには崩れて消えていった。


「何したの!?」


 これにはミクニも驚いていた。


「ティアラだった手鏡です」

「てぃ、ティアラだった……手鏡?」

「はい。鏡面を向けると影は消えるみたいで」

「理不尽なほど最強のアイテムね……」


 刹那、上空から黒い液体のようにも見える光が降り注いだ。

 取り敢えず手鏡を上へ向けてみる。

 すると禍々しい光は手鏡を避けるようにして地面へ落ちていった。


「……少しは効果があるようですね」

「そうね」


 ミクニと視線を重ねて頷き合う。

 少しだけだが心が楽になる――が、次の瞬間、安堵感は消滅した。


「ミクニさん!?」


 隣にいたミクニが急に脱力し座り込んでしまったのだ。

 彼女は片手で額を押さえている。


「っ、く……」


 頭痛だろうか、額を手で押さえたまま顔をしかめて声を漏らすミクニ。そんな彼女に近づいてきたのは黒いもや。それはみるみるうちにミクニの身体を包み込んでしまった。完全にもやに包まれたミクニは自由を奪われていた。彼女の身体が無重力空間に放り込まれたかのように宙に浮く。


 何が起きているの!? と思いながら見ていると、割れるような音が数秒間響いて、それから黒いもやは消えた。脱力したミクニの身体が地面に落ちる。その時には彼女はかなり疲れたような顔をしていた。元より肌の色は血色が悪そうなものではあるのだが、それとは別のしんどそうな感じが伝わってくる。


「ミクニさん!」


 駆け寄って声をかける。


「……あた、し」


 ミクニはまだ辛うじて意識を保っていた。

 しかし今にも消えてしまいそうな目つきだ。


「思い、出し――の、あた――は、た――」


 途切れ途切れ言葉を紡ぐがよく聞こえない。


「ミクニさん? ミクニさん? あの、いまいち聞こえな」


 その時だ、彼女の身体が光に溶けた。


「え」


 彼女は煌めく光の粉に包まれて――やがて、その中に溶けて消えた。


「ミクニさん……」


 私は何も言えなかった。想定していなかったことが目の前で起き、それによって、脳が完全にまともな動きを停止してしまったのだ。寒気と得たいの知れない恐怖を感じ唇が震えるよう。けれども何もできない。光の粉となったミクニがいた場所を意味もなくじっと見つめることしかできなかった。


「これで一対一ね」

「……ヨクさん」

「邪魔者は一人でも少ない方がイイわ。小蝿だって寄ってキタラ鬱陶しいもの。さて、本命といきましょう……クイーン、アナタはココで死ぬのよ」


 巨大な人に似ない姿となったヨクが語りかけてくる。


「こんなこと! やめてください!」

「それは無理な頼みね、アタチは完全な勝者となるマデやめないわ」

「どうしてそこまで……」

「アタチはアタチの道を邪魔されるのが嫌いなの。だから、ね? アナタにもここで消えてほしいってワケ」


 黒い嵐が襲いかかる。

 強風で髪が激しく揺らされた。


「アナタが己の道を貫きタイなら、アタチを倒すことね」

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