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プリンセス・プリンス 〜名もなき者たちの戦い〜  作者: 四季
4章 決戦、そして……
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episode.129 光と影

『以前術を使ってきていた敵を倒し、器となっていた女性は人の世へ送り返しました』


 杖のプリンセスから急にそのような報告があった。

 私はただクイーンズキャッスルで待機しているだけ。なのに他所ではそのようなことが起こっていたとは。驚いた、としか言えない。だが何にせよ皆が無事ならそれは何より嬉しいことだ。皆が傷つかない、それが最良の結果である。


「皆さん無事で良かった……安心しました」

『クイーン。お気遣いありがとうございます』

「いえ……その、お礼なんて。私は何もしていませんし何もできていません」

『クイーンの座に就いていてくださるだけで良いのですよ』


 そう述べる杖のプリンセスは派手な表情は作らないもののどことなく柔らかで優しげな雰囲気をまとっていた。


『では、引き続き敵襲に備えておきますので』

「は、はい。お願いします」


 杖のプリンセスとの通話はそこで終了した。


 プリンセスのいない森のキャッスルに残っているウィリーとフローラが敵に襲われたという話を耳にした時は不安で胸がいっぱいになったが、大きな被害はなかったようでほっとした。


 もちろんこれで終わりとは限らないのだが。

 でも何事も一つずつ。

 力ある敵一体を倒せただけでも意味はあるだろう。


 あとは敵勢力基地へ乗り込んだ者たち、か。彼女らからは今のところまだ連絡はない。あちらは弱くない者たちで構成されているのでそこまで心配することはないだろうけれど、それでもやはり多少気になりはする。皆生きているだろうか、皆元気だろうか、そんなことを考え答えを知りたくなる。


「基地の方からは連絡はないわね」


 話しかけてきたのはミクニ。

 彼女は言葉を発してから両腕を上へやって上体を大きく上向きに伸ばす。このタイミングで背伸びとは、なかなかマイペースだ。


「気になりますか?」

「心配してるわけではないわ。ただ、たまにふと気になるのよね。そんな感じ」

「気にかけてくださってありがとうございます」

「固いわねぇ」


 そんなことを言われても……。


 ただの流れではないか。



 ◆



 その頃、敵勢力基地。


 プリンセスらは迫る敵を手早く片付けながら奥へ奥へと進んでゆく。

 そうしてたどり着く、基地の深部にある一枚の扉の前へ。

 黒地に銀色の縦線が二本走ったやや近未来的な要素のあるスライドドアへ固く閉ざされている。


「よし、早速扉ぶち破って――」

「待って」 


 海のプリンスは突き進もうとするが、森のプリンセスが制止した。

 それから森のプリンセスは扉に片耳を当てる。


「そう……ウツロが……残念ね」


 扉の向こう側から聞こえてくる微かな声、それはヨクの声であった。


「……まったく、馬鹿な子だわ。単身突っ込んで自滅スルなんて……」


 プリンセスらは全員でその独り言を聞いた。

 そして顔を見合わせる。

 言葉を発することはせずとも目線だけで心は交わせる。


「さ、じゃあ行きましょうか」


 少しして、森のプリンセスが小さく発した。

 皆はそれに対応するように頷く。


 森のプリンセスは柔らかだった表情をほんの少しだけ固めのものに変える。しかしそれでも口もとには余裕の色は残っていて――彼女は心を落ち着けながら右手の手のひらを扉へかざす。一秒後、手のひらから太い木の幹のようなものが一本発生。それが無機質な黒と銀の扉を貫いた。めぎめぎと毒々しい音が鳴り、扉に穴が空く。幹のようなものはそこからさらに質量を増し、穴を大きく広げてゆく。


 やがて、扉に人が通れるほどの大きな穴が空いた。

 プリンセスらは速やかに室内へ侵入する。

 入ってすぐ右側にはほのかに木材の匂いがする和箪笥が置かれており、その横には小物を飾るための細めの台があった。明るい色をした木製のその台の上には、波と千鳥が描かれた板状の飾り物と小花柄の桃色の巾着が佇んでいる。


「……来タワね」


 侵入してきたプリンセスたちに気づいたヨク。

 冷ややかに呟いてからプリンセスらの方へ身体の前面を向ける。


「悪いけど貴方にはここで終わってもらうわ!」

「剣のプリンセス……知っテルわよ。あの男の娘、次の代、でしょう。大人しくあのままコッチにつけば、戦う必要もなかったというのに……残念なことね」


 愛剣を構え攻撃的な視線を向ける剣のプリンセスに対してでもヨクはそれほど感情的にはならなかった。


「悪しき者にはここで消えてもらう!」

「愚かな。……負の感情を悪しきものと決めつけてイルナラそれは間違いよ」


 ヨクは眉間にしわを寄せ、表情だけで圧をかける。


「光ある限り影もある、それは決して変わるコトノナイこの世の理。そうでしょう?影を作らない光などありはシナイのだから」


 剣のプリンセスは床を蹴った。

 手にした剣で斬りかかる。


「それでも!」

「何?」


 ヨクは前に出した片腕に黒いものをまとわせて斬撃を受け止めた。


「それでも! 人々に黒い感情を持たせることは正義ではない!」


 叫ぶのは剣のプリンセス。


「アナタが影のない世界を作りたいなら、まずは光を消すことね」


 剣のプリンセスは一旦一歩分後退する。

 しかし再び攻撃を仕掛けることは諦めておらず、いつでもすぐに動き出せる体勢をキープしている。


「そうすれば……イズレ、影も消え、絶えゆくわ」


 言い終えて、ヨクはくいと片側の口角を持ち上げる。

 そして手のひらをぱんと音を立てて合わせる。

 瞬間、その手もとから黒くどろりとした見るからに怪しい光が発生し、それらは意思を持っているかのようにプリンセスらへ襲いかかった。


「任せて」


 それを防いだのは森のプリンセス。

 彼女は素早く皆の前へ出ると植物で編んだ板を盾のように使って攻撃を防ぐ。


「行って!」


 森のプリンセスが発した瞬間、剣のプリンセスと海のプリンスが左右からヨクに襲いかかる。

 両側からの同時攻撃。

 しかしヨクは黒いものをまとわせた腕を上手く使いつつ抵抗する。


 ――しかし。


「ふにゅみゅ!」


 ヨクは見逃していた――和箪笥の陰にさりげなくいた愛のプリンセスを。


 愛のプリンセスが放ったハートがヨクの鼻に直撃する。


「っ、ぐ、ぶぱッ」


 ヨクに隙が生まれる。


 そして。


 剣のプリンセスが手にしている剣の先がヨクの喉もとに突きつけられた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『episode.129 光と影』まで拝読しました。 二手に分かれていて正解だったかもしれませんね。 そのお陰でウィリーたちも助かってよかった(^^) 愛のプリンセス、可愛い~ 敵に隙…
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