第六十四話 暗闇の中
痛ぇなぁ。
馬鹿みてぇに吹っ飛ばしやがって。
だけど大分ミラ達との距離は取れたな。
しかし周りがやたらうるせぇな。
そんなことより瓦礫やら土やらでスーツが台無しだ。
「“ドレスアップ”」
スーツ、黒。
ボロボロになっていた俺のスーツが新品に直った。
うん。完璧。
俺のアーティファクト、レガリアルのドレスアップって能力はスーツを着るってだけの能力。それぞれのスーツになんかしらの付与能力でもありそうなもんだが何もねぇ。
それでも、このスーツを着てるとモチベーションが上がる。気がする。
「さて、と。ありゃなんだ」
俺が瓦礫をどかして出てくると、やたら暴れまわってるバカでかい蛇がいやがる。
っていうかあれ蛇なのか?なんかバリバリしてるし触ったら痺れそうだな。
ん?
周りを見ると、これまたビリビリしてる檻に囲われたバーベルと泣いてるガキがいる。バーベルは既に俺に気付いていて、一瞬目が合った。
どういう状況だよ一体。
「見つけたわァ!」
「あ?」
頭上にペンドラが追いついてきた。
ん?
ありゃパルキアか?
ペンドラに目をやると、目の端に浮いているパルキアが映った。
なんちゅうツラしてんだよ。今まで見たこともねぇ顔だ。
「よそ見している暇なんてあるのかしら!?」
ペンドラが右腕を振るうと無数の黒い何かが飛んできた。
なんだ……ちっ!?あれも虫かよ!
横に飛び避けると、黒いツノの生えた小さな羽虫が追跡してきやがる。
クソめんどくせぇな。
てゆうかアイツの右腕俺が吹っ飛ばした筈だよな。治癒魔法?それとも特性かなんかか?何にせよしっかりとトドメを刺さないと戦闘不能にはならねぇって事か。
「ウフフフフ。その焦った表情。興奮するわァ!」
一ミリも焦ってねぇけどな。
って、おい!
「よっ!」
バリバリ大蛇が後ろから尻尾を薙ぎ払ってきやがった。それを高く飛び跳ねて避けると、追尾してきた羽虫が大蛇に触れて一瞬で消滅した。
こっちの方がよっぽど焦ったっつの。
「なんなのこの憎たらしい蛇は!」
大蛇がペンドラに噛み付きにいった。いや、あんなでけぇ口ならひと飲みか。
しかしパルはあそこで何やってんだ?
あの様子じゃ俺にも気付いてねぇだろうな。
「おいっ!パルー!」
反応無し、ね。悲しくなるなおい。
ん?動いた?杖を軽く振ったな。
なんか、したのか?
あれ?暗くなった。
「って…………おいおいおいおい!マジかよ」
空からバカでかい岩が降ってきやがった!
なんだこれ!シャレになんねぇぞ!城もろともぶっ潰す気かよアイツ!
まだ皇城には人がいる筈だ。
冷静じゃねぇな。なんかあったのか。
なんにせよ、止めなきゃならねぇ。このままあの岩をここに落としたらアイツは更に苦しむ。
仕方ねぇな。
魔力纒身50%!
しゃがみ込んで足に魔力を集中。それを爆発させるイメージで、跳ぶ!
今度は右腕に魔力を集中。メリケンの能力をあの大岩全体に巡らせる程の魔力を。
溜めて、溜めて、振りかぶって、殴る!
よし。大岩が粉々になって弾け飛んだ。
そしてメリケンを外す。細かくなった岩を足場にして更に跳ぶ。そして
「殺す気か馬鹿野郎!」
飛んだままパルキアをぶん殴った。
◇◆◇◆◇◆
辺りが真っ暗になっていた。
何も見えない。何も見たくない。
父さんも母さんも死んだ。
騎士達もみんな死んだ。
僕の味方なんか誰もいない。
リーシャも僕の気持ちを分からないんだ。
やるべき事?実行する力?知らないよそんな事。
アリアも酷い顔で僕を見ていた。
どうしろっていうんだ。
この悲しみを。この怒りを。この悔しさを。
もう、どうにでもなれ。
僕は仇さえ取れればもう何もいらない。
この人たちは僕が全部殺す。
〝パル君。なんの因果か、攻め込んできた魔族が皆ここに集まったね〟
そっか。
じゃあ探す手間が省けたね。
殺そう。
もう、戒めとか、罰とかいいや。
もう疲れたよ。だから全部終わらせよう。
〝パル君。君を呼んでいる人がいるよ〟
岩だ。大きな岩を落としてみんな潰れればいいんだ。
大きな、大きな、岩、落ちろ。
そして、死んじゃえ。
全部終わったらどうしようか。アリアと一緒にどこかで静かに暮らそうか。
アリアは許してくれるかな。こんなダメな兄を。
兄か。
ガルシア兄さんは生きているのかな?あの人のことだ、きっとどこかでうまく隠れているだろう。
あ、僕にはもう一人の兄さんがいた。
でも兄さんも大丈夫か、とても強い人だったから。
僕のヒーロー。
あぁ、兄さんがもし居てくれたら、きっと全て上手くいってたんだろうな。
今の僕を見て、兄さんはなんていうだろう。叱られるかな?仕方ないって、慰めてくれたかな?それとも、僕と一緒に怒ってくれたのかな?
兄さんなら、
「殺す気か馬鹿野郎!」
頭を揺らす激しい衝撃。
その瞬間真っ暗闇だった視界に色彩が戻った。それと共に自分の中の仄暗い何かが吹き飛んだ気がした。




