第四十三話 不敵で不気味
「第一次選抜合格おめでとうございます。移動していただいて早速ではありますが、このまま第二次選抜へ移ります」
メリートリスっていう巨乳の変態女が話している。
俺達、第一次選抜合格者は、あの後流れたアナウンスに従って広場から移動を開始した。
三時間走らされた。
広場から北へ向かい、森の中に入り要所要所に設置された案内板に従って三時間。現地に着く少し前くらいで、委員長とやらに殺意が芽生えた。
到着すると三時間前に俺達がいた広場だった。
くそったれ。
だが、そこら中に転がっていた脱落者達の姿はなかった。
そして今、第二次選抜が始まろうとしている。
「二次選抜試験内容は集団戦闘です。一次合格者85名をこちらで選ばせていただいた、九つの組に分けます。そして一組に一つ与えられた旗を取り合って頂き、取った組が勝ちとなります。ですが、旗を取られた組が不合格というわけではありません。勝負内容をこちらで吟味して合否を決定しますのであしからず。それでは早速、組を分けていきます。名前を呼ばれた方はこちらへお集り下さい」
なるほど。
一次では個人能力を見て、二次では協調性ってわけか。
騎士は基本的に一対一で戦う事は少ねぇだろうからな。
それにしても、いきなり見ず知らずの奴らと連携取るってのはかなり骨だな。
ていうかやばくね?
協調性?連携?なんだそれうまいのか?
人と口聞くのなんて大不得意中の不得意だぞ。
考えてみれば確かに騎士なんて集団戦闘が基本なのは分かる。だが、いきなり見たことも話したこともねぇ奴らと組んで戦うなんて出来ねぇよ。
うん。少なくとも俺には出来ない。
そんなことを考えててもメリートリスとかいう痴女は、一人一人名前を呼んで組み分けしていきやがる。
どうか俺の名が呼ばれないことを願っちまう。
「以上です。それぞれの組はそれぞれの委員の者に着いて行き移動して下さい」
以上?
「おいねーちゃん。俺様は呼ばれてないんだが」
俺と、今痴女巨乳に声をかけたデブを含めて名前を呼ばれてないのは5人。
そもそも全部で九組なら一組が余る事になる。
「えぇ。貴方方は5名で一組です」
「それはいいが、俺達の相手は誰がするんだ?見当たらねぇみてぇだが」
「はい。ですので特別ゲストを用意致しました」
「特別ゲスト?」
そう言って痴女巨乳は去っていった。
「ま、いいか。じゃあよ。自己紹介でもしとこうぜ。俺様はデーブ。出元は言えねぇが傭兵を長くやってた。それと冒険者登録もしてて一応Bランクだ。やろうと思えばAランクに上がれたんだが、必要なかったんでBのままだ」
やたら喋るこのデブはデーブか。まんまだな。丸々太った腹を丸出しにしたベストを着てる。どんなセンスだよ。
「次は私ですかね。私はナッパと言います。私もBランク冒険者です。以後お見知り置きを」
この丁寧な話し方をするゴリマッチョハゲはナッパか。見た目に似合わなすぎる喋り方が気持ち悪りぃな。
「僕はノビル・エモンドです。家の事情で騎士にならなきゃいけなくなったので、ここにいます。冒険者登録はしてませんが、魔法には少し自信があります。よろしくお願いします」
いじめられっ子みてぇなメガネ野郎はノビルか。多分貴族だな。なんかしら複雑な理由でもあんだろうな。
「で、そこの変な格好したお前は?」
「オーカ」
「愛想のねぇガキだな。んでアンタは?」
デブの問いに答えると、俺に悪態を突きつつ最後の一人に話を振った。
「クフフフ。私はバーベル。よろしく」
そいつは不敵で不気味な笑みを浮かべながら短く名乗った。
気持ち悪りぃ程色白で、吊り目の男。細身の長身で服装は真っ黒のロングジャケットを着ている。
なんとなくだけどコイツからは、なんか嫌な感じがする。
「これで全員名乗り終わったな。まだかよ特別ゲストってやつぁ」
「それもそうですね。デーブさんはどこで冒険者をやられてらしたのですか?」
自己紹介を終えて皆、特別ゲストとやらを待っている間駄弁り始めた。
しかし特別ゲストか。
普通に考えりゃまともな奴らが来るとは考えにくいよな。
そもそもここに残った5人は適当に選んだ5人ではないだろう。なんかしらの理由があって俺たちだけ別枠にされた。素直に考えれば、俺達が他の参加者とのレベルが違い、戦いにならないと思われた。か。
「オーカさん。クフフ。貴方とても良いですねぇ。他とは根本から違う」
そんなことを考えていたらバーベルとかいう不気味な奴に話しかけられた。
無視
「おや、無視ですか。手厳しい。クフフ。いいでしょう。本当は私、ここに来るのは不本意でしたが、もしかしたら貴方のお陰で来た甲斐が出来たかもしれません」
控えめに言って気持ち悪い。
視線がねっとりしてやがるし、笑い方も気味悪りぃし、なんか口説かれてるし。
だが、ただの変態じゃないことは確かだ。立ち振る舞いに一切の隙がない。それと漂ってるオーラがやばい気がする。俺の動物的直感てやつが騒ぐ。
「お待たせした!」
と、突然でかい声で声を掛けられた。振り向くと銀色の重鎧を着込んだ、長い蒼髪を後ろに結んだ男が眩しい笑顔で歩いてくる。
多分コイツも強いな。
その後ろに二人、モブっぽい騎士が追従している。
その三人が俺たちの前に立った。
「いやぁ、急なことだったから二人しか集まらなかったよ。だが、うちの団の者だし文句はないだろう?メリー」
「はい。問題ありません」
蒼ロン毛の優男が痴女巨乳と言葉を交わし、満足そうに頷いた。すると、俺達をじっくりと睥睨して
「うん。強そうだね。メリーが俺を呼ぶのも頷けるよ。おっと、申し遅れた。俺はリヒト。リヒト・ブライトネスだ!僕もダルイスと同じ副騎士長を勤めている!よろしく頼む!」
副騎士長だと。
確か、スクエラ騎士は三つの団で構成されてて、そこの団長がスクエラ騎士の副騎士長をやってるってジジィに聞いた。
って事は、スクエラ騎士の中で五本の指に入る奴が俺たちの相手ってことかよ。
「おーおー、副騎士長さんが俺達の相手してくれるってか?ずいぶんと意地の悪い事してくれるじゃねぇかよ。そんなに俺達ゃ嫌われたって事か?」
デブがまた悪態を突きながら様子を見る。
「違うよ。一次選抜で君達があまりにも優秀だったから俺が呼ばれたのさ。それは誇れる事だ!」
「その通りです。単純に貴方達と同じ公募者では試験にならないと判断してのことです。それに、先にも説明しましたが、合格するのに必ずしも勝つ必要はありません」
「なるほど」
やはりそれだけ俺達が評価されてるって事か。
んで、負けても頑張ってりゃ合格の芽があると。ふざけやがって。勝つに越した事はねぇって事だろ。
「上等だ。副騎士長様に吠え面かかしてやるよ」
「そうですね。相手は副騎士長。勝てば合格は間違いない」
「うん。勝つ気でやろう」
他の奴らとも意見があったな。バーベルってやつはキモく微笑んでるだけで何考えてっか分かんねぇけど。
「じゃあ動くのは面倒だし、まずは地形を作ろうか!アーノ君、頼む」
「はっ」
優男に声を掛けられたモブ騎士Aが頷くと、何やら詠唱を始めた。
「“アースクリエイト”」
詠唱が終わりモブ騎士Aが両手を地面に付ける。と
「うおっ」
「な、なんだ」
「じ、地面が」
平地だった広場の地面が隆起して、地形を変えていく。その迫力たるや上級魔法とは思えねぇレベルだ。
地面の隆起が落ち着き、改めて周りを見ると、広い平地だった広場全体が大小無数の岩山地帯に変貌していた。
「さぁ、始めようか」
キラキラしたヘドが出るイケメンスマイルで優男がそう言った。
やっと第二次選抜試験開始だ。




