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第二十九話 良き御縁

 〝パル君、そんな事してても今日は終われないよ〟

「どうしよう。本当に嫌だ」


 今日は縁談当日。リッツカール帝国の第四王女との初顔合わせの日だ。


 僕は自室の鍵を掛けてベッドに潜り込み亀になっていた。


 〝外でわーわーうるさいんだけど。あ、鍵持ってきたみたいだよ〟


 部屋の外でパロマや他のメイド達が扉を開けるように説得していたが、今この部屋の鍵が到着したようだ。


 本当に行きたくない。

 この縁談には父上の、戦争を向こうしばらく起きないようにするっていう意味があるのは分かる。


 アース最大国家のスクエラとアース最強国家のリッツカールが婚儀を結べば他国との牽制になり無駄な戦争が起きにくくなる。

 と、いうのもアースの国家は例外を除いて、ほぼスクエラかリッツカールの属国になる。なのでこの二大国家さえ繋がってしまえばアース内の大きな争い事は大幅に減る。


 それは分かる。

 分かるけど、結婚はまだ早いし、今この時期だし、何より第四王女って僕の一つ年下だし。


 無理だ。また、吃って笑われる。縁談したせいでリッツカールにバカにされるタネを作るだけだ。

 父上の狙い通りになんて動けっこない。


 いやいや!何より僕はまず皇戦で勝たなきゃならないんだよ!そんな時に女性にうつつを抜かすことなんて出来ない!


「さぁ、パルキア様。もう間も無く帝国の方々がご到着なさいます。もうこれ以上、お手間を取らせませぬようお願いいたします」


 扉を開けたパロマの言葉で現実に引き戻された。


 何にしても今日は縁談。

 逃げも隠れもできない。




 本っ当に嫌だ。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 キラッキラの小さめな王冠。

 純白を基調として、ピンクを所々にあしらった礼装。


「え、何これ」

「その礼装は第四王女様の好みだそうです。とてもお似合いですよ。パルキア殿下」


 パロマが淡々と説明と褒め言葉をくれる。パロマはあれ以来、少し感情を表に出すようになったが、基本はお人形さんみたいだ。

 それでも僕はパロマが少し心を開いてくれたようで、少し嬉しいんだ。


 でも


「似合う似合わないじゃなくて、恥ずかしいんだけど」

「……心中お察しします」

「今、一瞬笑ったでしょ!?」

「さて、参りましょう。帝国側もお待ちでありましょう」


 無視かい。


 僕はパロマの後について行く。

 しばらく歩き、貴賓室の扉の前でパロマが僕を通すように少し頭を下げて避けた。


「ご健闘をお祈りしております」

「ありがとう」


 少し引きつった笑みで僕はそう答えて扉を開ける。


「遅いぞ、パルキア。早く座りなさい」

「まぁ、よく似合ってるわ」


 中に入ると、いつもの貴賓室の中とは異なり少し落ち着いた雰囲気の調度や絵画に変わっていた。

 そこにテーブルを挟むように三つずつ椅子が置かれ、その右側に父上と母上が座っていた。


 言われた通り父上と母上の間の椅子に座る。


「向こうの王女様すごく可愛い子みたいよ。お似合い夫婦になれそうね」

「パルキア。礼を失することの無いようにな」


 母上はいつも通り、何も考えていないんだろうなぁ。

 元々、世間知らずが極まっていた公爵令嬢だった母上。そこに父上が一目惚れして、猛アプローチして結婚したらしいけど、未だに世間を知ることがない。逆にそこが可愛いのかな?うちの母上は。


「最善は尽くします」


 そんなこと言ったって父上。こう言ったら申し訳ないけど、この僕が縁談すること自体が既に失礼に当たる気がするんだけどな。


 しばらく待っていると扉が叩かれ、少し間を置いて扉が開かれる。


「失礼します。それでは間も無くこちらにお連れします」


 部屋に入ってきて、そう言ったのはうちの丞相のレイさんだ。


「うむ」

「あれ?パル君緊張してるのかい?さっきチラッとと挨拶したけどすごい可愛らしい子だったぞ」

「あら!パルキアちゃん!やっぱりだわ!レイが言うなら間違いないもの!」

「さっさとお連れしろ!」


 父上に叱られ、レイさんは舌を出してその部屋を退出した。


 レイさんはレイナード・シーラン丞相。シーラン家は代々ブーヤ家の補佐をする家系で、親戚みたいなかんじだ。その中でもレイさんは特に僕の事を可愛がってくれているんだが、割と意地悪な人だったりする。


 歳は確か三十代前半だったかな?

 少しつり目で眼鏡を掛けてて、限りなく黒に近い茶髪を短く切り揃えている。

 細身の長身でスラっとしていて男の僕から見てもカッコいい人。

 それにこの人の魔法はこの国のトップクラスの実力を持つすっごい人だ。


 僕からすればちょっぴり意地悪な可愛がってくれる親戚のおじさん。って感じかな。おじさんって言ったら怒られるけど。


 そんな事を考えていたら、また扉が叩かれた。


「クウェート家のご到着です」


 レイさんがそう言って会釈し、扉から三人入ってきた。

 そして椅子の前で立ち止まる。


「先ずは私から。リッツカール帝国第三王子、ドレイク・クウェート・リッツカールと申します。この度は此方の意向を汲んで頂き有難く思います。本日は両親に変わり私が後見人として参上致しました。どうぞ宜しくお願い致します」


 とても大きい。同じ人族なのか疑いたくなるほど大きい。身長は3メートル位あるのかな、横幅も奥行きも全部でかい。なんか歴戦の戦士ってかんじのおじさんだ。

 あ、顔もものすごくでかい。


「アレサ・フラクリンと申します。この子の乳母です。本日は良き御縁があらん事をお祈り申し上げます」


 お婆さんに近いおばちゃん、かな。腰も少し曲がってるし、顔にシワも目立つ。でも眼力がすごい。なんか少し機嫌悪そう。


 そして次は


「あ、あたし、え、っと。あ、あの。て……あ、うぅ。」


 え、まさかの同属性来たー。

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