閑話 ラナの1日
鳥の鳴き声と共に私の朝が始まる。
辺りは日の出前でまだ薄暗いが、布団をたたみ朝食の支度を始める。
「出来れば、ゼルバトス様に夜這いをかけにいきたい所なのですが」
残念ながらゼルバトス様は既に起床され、日課の散歩に出掛けておられます。
本当に残念です。
なので私はいつも通り朝食の準備をします。最近食卓に居候する童貞が増えましたが、やることは変わりません。些細なことです。
朝食の準備を終え、童貞を起こしに行きます。
扉を叩いた後で、扉を開けるとパンツ一枚の童貞が目の前に勃っていました。
「まさか、そんな準備されて待っていたとは、仕方ありません、気は進みませんが手解きを致しましょう」
「てめぇ、勝手に入ってきて何言ってんだよ」
「何を、ってそんな戦闘準備万端で聞かれても」
「分かったからもう出てけ。朝から疲れる」
相変わらず生意気な居候です。私の気遣いが伝わらないみたいですね。私とて童貞を相手にするのは些か気は進まないと言うのに。
私は退出しダイニングに向かう。テーブルにはゼルバトス様が席に着かれていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「いかがでしたか?」
「変わりはなかったのぉ」
朝の散歩と仰っていますが、ただの散歩ではないのです。ゼルバトス様は極秘ですが、国皇より任務を授かっていらっしゃる。
悔しながら具体的な内容までは私にも知らされていません。
ですが家族とも縁を切り、私だけをお側に残し、国皇から賜った任務を全うしておられる。私だけを残して。私だけを。
あれだけお孫さんの事を溺愛されていたのに。私だけを。
私は幼き頃ゼルバトス様に拾われ救われた身であり、既に身も心も捧げた。まだ抱かれてはいませんが。まだ。
ゼルバトス様の役にたてることが唯一の快感であり、幸せであります。出来ることなら、四六時中、ゼルバトス様に求められ、前から後ろから――
「ラナ……ラナさん?」
「はっ!なんでございましょう?」
「オーカも来たので食事を始めたいのだが、少しボーっとしていたのでのぉ」
「申し訳ありません。 直ちにお持ちします」
「おいジジィ。ボーっとしてた時のコイツの目今ヤバくなかったか?」
私としたことが、少し自分の世界に入ってしまったようですね。
さて、朝食を済ませましょう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
右、右、左、右と見せかけてまた左。
「ぬるいっ」
「ごふぉっ!」
最後の左を躱したところで右の拳を腹部に入れる。
只今絶賛午前の調教中です。
とても筋はいい。ただ、今はそれ止まりです。
ありきたりなパターン化された行動をとり、刺激もなく事を終える。相手をしていてすぐに飽きてしまいます。そんなんじゃ誰も濡れてくれません。
それも自力で試行錯誤しながら戦闘方法を独自に作り上げたんでしょう。素晴らしいです。誰にでも出来ることではありません。が、その癖が抜けきらない所がある為に行動が偏り、プレイに柔軟さが欠けています。まぁスポンジのような吸収力は認めますが。
「クソぉ……」
「確かに貴方の攻撃力、攻撃速度、そして何より耐久力と回復力。この四つをこれだけの高基準で兼ね備えてる人間は、なかなかいないでしょう。かく言う私も今の四つの中で貴方に対抗出来るのは、攻撃速度くらいでしょうか。それでも些か貴方に劣るでしょう。ですが、貴方を嬲り続ける事は容易い。何故だと思いますか?」
「……経験、か」
「はい、経験です。それともう一つ。技術です。いくら体力に自信のある人間が腰を振り続けても下手では話にならないのと同じです」
「……で?」
「今、付け焼き刃で体術を覚えても私には勝てないという事。じゃあ勝つ為にはどうしますか?」
「……お前ににない技術を身に付ける」
「そうですね。そしてそれを貴方は今学んでいる。それを身に付けるまで、私の調教の進展は、後一年ほどは見込めないでしょう」
この童貞のステータスは異常に高い。
それこそ、騎士のエースや冒険者のゴールドランカーにも引けを取らない程に。
だけど彼には魔法がない。
これは最悪と言っていい程のハンデです。皆使える物を理不尽に自分だけ使えない中で戦わなければならないのだから。
その為のゼルバトス様の修練。
聞くところによると遅々として進んでいない様子。ゼルバトス様からどういった修練を行なっているかは少し聞きましたが、確かに難儀な事をしているのは理解します。
ですが、この子はやるしかない。
そこしか生きれる道が無いのですから。
修練を始めて二ヶ月と少々。
早いうちに身につけさせなければなりません。
理由は二つ。
一つ目。単純にこの子の設定した期間に間に合わなくなる可能性がある。ただでさえ素人を二年で立派な漢にしろと言われても無理がある話。それを毛も生え揃っていない魔法無しの童貞ショタを、などと土台無理な話なのです。
なので、早いうちに新しい戦闘環境に慣らす必要があり、その戦闘環境を整備しなくてはならないのです。
二つ目。これが一番大事。
早いとこ修練を終わらせ邪魔を排除する為。
もうとにかくゼルバトス様との二人っきりの時間をいち早く取り戻す。
私のモチベーションはそれのみ。
この童貞が騎士になろうがEDになろうが知ったことではないのです。
私はゼルバトス様さえ居ればそれでいいのです。童貞に邪魔されなければ、もう既にめくるめく夜を過ごしていたかもしれない。情熱的で、官能的な、ねっとりとした
「おいエロメイド。そのツラはヤバいって」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その日の晩。
一日の業務が終了し、いつも通りゼルバトス様のお部屋の前で秘密の日課を済ませようとしていると。
「ラナか?」
お部屋の中からゼルバトス様のお声がっ!
「はひぃっ!」
思わず上擦った声で返事をしてしまいました。いけません。やましい事をしていると思われてしまいます。平静を装います。
「中に入りなさい」
!!!!!
さ そ わ れ た !?
ダメです。平静に。
仕事を頼まれた時と同じ様に接するのです。そして、いざその時になったら、一度だけ拒否をする。
それが一番殿方の興奮される……ダメです。
平静に。クールに。クレバー に。
「はい。失礼します」
扉を開けると、大きな一人掛けのソファに腰掛けられた、ゼルバトス様がいらっしゃった。
一瞬ギョっとしたお顔をなされたが気のせいでしょうか?まぁ、ゼルバトス様もご緊張されているのでしょう。
「オーカの事でな」
「童て……はい」
いけない。こんな状況で童貞などと。
「どうじゃ?ここのところ。率直な意見が欲しいんじゃが」
「はい。今の段階では厳しいのではないか、としか言えません。ただ、ゼルバトス様の修練がある程度実践レベルで使える様になれば、或いは」
先ずは業務の話。そこから自然に、で御座いますね?
「儂と意見は同じじゃの。どうしたらいいかのぉ」
どうしたら?ですか?ここに来てゼルバトス様もお迷いのご様子。
どうしていただたいても構わないのですが、希望としては
「多少手荒でも問題ないです。私も準備は出来ていますので」
そう。この日の為のシミュレーションは完璧。だから、もう焦らさないでほしいのです。
「そうか。しかし気が進まんのう。儂も歳じゃ」
「お歳など関係ありません!私はゼルバトス様だからこそ、この身を捧げたいのです!毎日毎日カラダだけは綺麗にしております!いつでも準備はっ!、それでしたら私の方から」
「ラナさん?オーカの話じゃよな?」
…………おっふ
「えぇ。私の方から少し手荒にでも前進させる様に準備しておりましたので、お任せください」
「……おぅ。そう、か」
「はい」
焦ってはいけない。まだチャンスはあります。ゆっくり。少しずつ。
「して、ラナよ。お主は何故下着姿なのじゃ?」
「……おっふ」




