第二十二話 俺は僕は
俺に目的が出来た。
「良いか?お主は確かに強い。だがそれは身体能力のみの話じゃ。この先必ず、魔法、そしてガディの力が必要になる。人族として生まれたのであれば、それは必須じゃ」
ドラゴリア邸地下謎の大広場。
なんのために使うのかよく分からないからやけに広い場所。高さ十メートル横奥行き百メートルくらいあるか?
そこの真ん中で胡座をかいてジジイの話を聞く。
「ガディはもう分かるな?お主は聞くに今年のガディバースフェスティバルでガディを授かるじゃろう」
俺は正直自分の年齢を知らない。
十五歳でガディを貰えるらしいが多分そんなもんだと思う。パルキアと同い年くらいだしな。
これで俺がガディをもらう歳じゃなかったら、俺はパルより年下という事になる。
年下の兄貴。
実に滑稽だ。
それは勘弁してほしい。
ガディを貰える歳になると対象者は勝手に転移され、”叡智の泉”って所に順番で送り込まれるらしい。
正直その転移ってのが俺は楽しみだったりする。一体どんな感覚なんだろうな。
これはパルの授業でもあったが、ガディってのはランクがあるらしい。
下位から
スピリッツ
フェアリー
フォース
ソーサリオン
エクセリオン
この五種類だそうだ。
ジジィのニーズはソーサリオンでよく分かんねぇが、とにかくすごいらしい。
このエクセリオンてゆうのは伝説的なアレらしい。まだ俺にもよくわかんねぇが、人族の勇者とかが得るガディとかがそうらしい。
俺のもジジィのみたいにイカついやつがいいな。間違っても光の玉みたいなやつはごめんだ。
まぁ、最終的には使えりゃなんでもいいけど。
「次いでお主に無いもの。それは魔法じゃな。スラムで生まれ育ったのであれば使えないのも当然じゃ。じゃがこれも使えるようにならんと、お主の目指す場所ではお話にならん」
魔法とは
森羅万象から生まれたとする、火、水、風、土の四大魔素
生きとし生けるものの心や精神から生まれたとする、光、闇、無の三天魔素
と呼ばれ、それら二つを合わせた七合魔素ってやで構成されてるらしい。
だが、七合魔素を全て人が使えるか?って言ったらそうではなくて、適正があるらしい。
人によって得意不得意があるってわけだ。
その適正を見極める為の方法があった。
オールストーンと呼ばれる鉱石に魔力を注ぎ輝く色の数、強さ、種類で見極めることが出来るという。
試しに俺が魔力を流すと全く光る事無く、甲高い音だけが高らかに響いた。
俺は魔法適正無しなのかと思ったが、これは無属性に適正を持っている証拠だという。
逆に言えばその他は適正ゼロという意味か。
控えめに言って俺は魔法のセンスは無さそうだな。そう思っていると
「確かに儂も長い事生きておるが、無属性しか魔法の適正の無い者は初めて見た。じゃがお主ほどの魔力量を持つ者もまた、儂は見た事が無いのぅ」
全く自覚はないが俺の持つ魔力量は異常らしい。ジジィの持つ魔眼でも底が知れないほどの魔力量だという。
宝の持ち腐れにならないような努力はしていこうと思う。
そうしてここまで説明を終えて
「この様に人族は”体技””魔法””ガディ”この三つを巧く使い他種族との戦争に生き残ってきたんじゃ。前置きが長くなったが、これを理解した上で、お主は”騎士”になる為修行をしていく。良いな?」
「あぁ。よろしく頼む」
そう俺はこの国の騎士になる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕に目的が出来た。
「疲れた〜」
〝お疲れ様ぁ。パル君少し頑張りすぎだと思うなぁ〟
皇城内自室。
僕はテラス近くの椅子にだらし無く腰掛ける。
「そんなことないよ。今までかなりサボっちゃってたから、頑張って取り戻さないと」
〝そんなに頑張らなくても、皇選はほぼパル君で決まったようなものじゃないか〟
「リーシャ!滅多なこと言うもんじゃないよ」
そんなやりとりをしているとノックが聞こえる。返事をすると侍女のパロマだった。
「パルキア殿下、お食事の支度が整っております。お持ち致しますか?」
「うん。お願い。それとリーシャの紅茶も貰えるかな」
「かしこまりました。ご用意してあります」
そうして僕の食事とリーシャの紅茶を並べ終わると
「殿下。あれから二週間が経ちましたが、お身体の具合はいかがでしょうか?」
冷たい表情のない顔でパロマが口を開いた。その時、小さくパロマには聞こえない程度のリーシャの舌打ちが聞こえた。
「大丈夫だよ。僕は元々そんなに怪我なんてしてなかったから」
「……一つ、伺ってもよろしいでしょうか」
「どうしたの?」
「あの件以降、パルキア様が変わられた理由が知りたいのです」
僕が、変わった?
「どうゆうこと?」
「あれだけ嫌がられていた体技、実戦の稽古を精力的に受けておられる。人見知りであられた殿下が茶会などに積極的になられた。そして何より、皇位継承戦に本腰を入れられた、と。これもリーシャ=ルミル様のお力なのですか?」
「いや、そ、ん?寒ぃ?」
僕がパロマの問いに答えようとすると、急に肌寒く、というか室内の温度が急激に下がった。
〝随分と好き勝手話すじゃないか女下僕。君、僕とパル君があの夜、君の気配に気付いていなかったと思って聞いてるのかい?それともそれが露見していると思って開き直ってるのかい?〟
「リーシャ!」
描かれた絵の様に変わらなかったパロマの表情に驚愕の表情が塗られる。
〝その顔。まさか前者とは、舐められたもんだね。だけどその事を分かっていて、君に何の沙汰も下されないのは何故なのか、少し考えた方がいいと思うよ〟
はぁ。
あの事件の晩現れた謎のフードの人物。あれはパロマだ。後でリーシャが教えてくれた。リーシャがパロマを初めて見た時、僕の頭の中に直接
〝パル君。コイツ敵だから殺してもいいかな?〟って話しかけきて、びっくりして一人で飛び跳ねちゃったよ。
それでよくよく聞いたらそうだったと。
でも、パロマにも何か仕方ない理由があるのかもしれない。だから次何か起きるまでは何もしないし言わない事をリーシャに話した。
のにも関わらずコレだよ。
「パロマ。パロマの質問に答える前に、僕も一つ聞いていいかな?」
「…………」
「パロマは……僕の事、嫌い、かな?」
「!」
何も答えてくれなかった。
でも、パロマの瞳から沢山の大きな雫がボロボロと溢れた。
「こんな感じになっちゃったけど。もし、まだ僕の侍女を続けられるのなら、僕はパロマ
にお願いしたい」
無言で大きく何度も頷いてくれた。
良かった。
「さっきのパロマの質問。何で変わったのか?だよね。それは、僕に明確な目的が出来たからだよ」
「…………」
あの事件以降兄さんとミラちゃんとしばらく会えなくなった。それから沢山考えた。何でこんな事になるのか。
そして辿り着いた一つの答え。
そして、それを覆す為には
「僕は皇にな、へっくしっ!」
あー寒い。




