第二十話 光の正体
※第十八話中盤からのパルキア視点です
「オオシよ。一思いにやってやれぇ」
もう何も考えられなかった。
ガルシア兄様から嫌われている事は知っていた。だけど、殺したい程嫌われてるとは全く知らなかった。僕はただ家族みんなで仲良くしたかっただけだった。
ガルシア兄様から死ぬほど嫌われてるのならば、いっそここで死んだ方がいいのかもしれない。
そうすれば僕を除いた家族みんなで仲良く出来るんだ。
僕さえいなければ。
!!!
気付くと僕は兄さんに投げられていた。身体の力をほぼ抜いていた僕は、兄さんの力の振るうままに吹っ飛んだ。
受け身も取らずにそのまま半身を地面に擦り付けながら滑っていった。すると
「お前ならそうすると思ったぜぇ。罠だよ、ぶぁぁかぁぁ!」
ラチュがそう言いながら頭上に何かを投げた。瞬間、オオシが兄さんのいる地面に向かって突風を叩きつけた。地面には風と共に鉄の礫が突き刺さる。
なんで兄さんがあんな攻撃を受けてるんだ。いつもの兄さんなら簡単に避けられるじゃないか。
僕を庇って……あぁ、あぁぁ。僕は馬鹿だ。救いようのない馬鹿野郎だ。
僕は自分が弱いって言う理由で兄さんを追い込んでしまったんだ。
全部、全部僕のせいだ。
ウジウジ考えて行動を起こさないから兄さんとミラちゃんを巻き込んでしまっている。
僕が弱いせいで兄さんがいつも危ない目にあってしまう。
いつも。いつもだ……
もう、いやだよ。弱いのは、もう嫌だよ。
全てが嫌になり目を閉じて現実から逃げてしまいたい。
〝君はそんなに弱いのかい?〟
!?
頭の中に知らない声が直接聞こえる。
目を開けるとそこは真っ白な空間。目に映るのは白だけ。床や壁、天井や空なんかもなく文字通り何も無い場所。
「ここは……」
〝それだけの魔力量を持ち四大魔素、全適正の君が本当に弱いのかい?〟
まただ。頭の中に直接声が聞こえる。
「誰なの?」
〝君の事を君以上に知るものさ〟
「え?」
〝君はとても優しい。でもその優しさを通し続けるには相応の強さが必要なんだ。でもね?人は優しさの分だけ強くなることが出来るんだ。だから君は弱くなんか無い。だって、こんなにも君は優しいじゃないか〟
優しさの分だけ、強く、なれる、?
〝おや、そろそろあっちが良くない状態みたいだ。いいかい?最後にもう一度だけ言っておくね。君は弱くなんかない。だって僕を使役する人族なんだから〟
「君を、使役する?」
〝戻ったらすぐに僕を呼ぶんだ。僕の名前は――――〟
瞬きの刹那、景色がまた変わり元の森に戻っていた。辺りを見るとラチュの頭上にいるオオシが発光しミラちゃんに魔法をぶつける瞬間だった。
「ヤ……メ、ろぉぉぉぉぉ!!!!」
「助けてリーシャ=ルミル!」
兄さんが叫ぶのと同時に僕はさっき聞いた名前を呼んだ。途端に閃光が辺り一面を飲み込んだ。
自分でも驚くくらい落ち着いて名前を声に出せた。何故か分からないけど、もうこれで大丈夫だと思えてしまったから。そして
〝やぁ、パル君。さっきぶりだね〟
と、足元から聞こえた時、既に辺りは銀世界になっていた。周りの木々は全て凍りつき地面すらも固く冷たく凍っていた。兄さんとミラちゃんを除く生き物も死者も全て。
「あっ、ぅ。す、すごい」
僕に呼ばれて出てきたのは、手の平に乗るくらいのサイズの白い蛇だった。鱗一つ一つが宝石のように美しく輝いている。
〝すごいのは君だよ。僕は君の力なんだから。よろしくね、パル君。僕の事はリーシャでいいから〟
そう言ってリーシャは僕の肩にそっと飛び乗る。
「う、うん。よろしく……あ、兄さん!」
兄さんは目を覆いたくなるほどボロボロだ。一刻を争う。僕の治癒魔法で
〝もう全部大丈夫。パル君はこれからのことを考えていて〟
そう言うと暖かい日光のような光が兄さんに照射される。どうなってるのかよく分からないけど、きっと治るんだと思う。
ミラちゃんはリーシャが出て来る直前に気を失ってしまったみたいだ。大した怪我もなくミラちゃんは安心だ。
しかしリーシャはすごいな。これも僕の力だなんて恐れ多いよ。弱点なんかきっとないんだろうな。頭も良いし、これだけの規模の魔法と、適切な魔法選択。こんな優秀すぎるガディを僕が……
〝あぁ疲れた。もうこれで僕の仕事は終わりかな?はぁ〜ぁ〟
と、思ったら僕の首にだらし無く垂れ下がり、欠伸をして目を閉じてしまった。兄さんを見ると無残だった姿が元通りとまではいかなくとも生気のある顔で寝息を立てている。
「お疲れ様。これからどうしたらいいかな?」
〝知らないよ。ふぁ〜ぁ。ほれはパル君の仕事でしょ。僕は久し振りに甘い紅茶を飲みたいからお家に着いたら起こし、て……ね〟
「え、ちょ、リーシャ?」
本当に寝ちゃった。
僕のガディは優秀すぎる程出来る奴だけど、甘いものが好きな脱力系ガディみたいだ。
はぁ。どうしよこれから。




