第十七話 黙って死ね
数はラチュを含めて十一人。
ラチュは顔面に青筋を浮かべながらも動かず、その他の十人が襲ってきた。
その十人それぞれの周りに色とりどりの光が飛んでいる。
あれはスピリッツのガディ。
もう二度と油断なんてしねぇ。
一年前と同じ轍を踏まねぇぞ。ある程度こっちはパルキア先生が予習させてくれてんだ。
スピリッツなら、使ってくる魔法さえ理解出来ちまえばなんとかなるはず。
そして一番最初に俺の元へ猛進してきたのは。
「孤浪ぉぉぉお!!!お前だけは絶対に殺すっ!あの時みてぇに逃げられると思うなよっ!!!ぅうりゃぁぁぁっ!!!」
ジトだ。
餌を待てされた猛獣が、良し。をされた様にに飛びかかってくる。前と同じ岩がくっ付いてる右手を大きく振り上げて。
「だからお前はいちいちうるせぇんだよ」
タネが分かってればこんなもんただ拳がでかいだけのテレフォンパンチだ。冗談抜きで目を瞑ってても避けられる。
いつもと同じ様に最小限の動きで岩の拳をギリギリで躱し、高速の手捌きてジトの首元に深くナイフの刃を差し込み走らせる。
「黙って死ね」
声帯を深く裂かれ首から血が大量に吹き出し、おかしな空気の抜ける音だけがジトの口から聞こえた。
まずは一人。
「はい次」
出来れば今の様に一撃で殺しておきたい。
どんな能力を持ったガディがいるか分からない以上、無駄に手数を増やしてもジリ貧になる可能性が高い。殺せなくても戦闘不能にさせるのがマスト。
「ジトォ!……テメェガキィ!」
「オイっ!外から撃ちまくれ!」
「“ファイヤーバレット”!」
「“アーショット”!」
まぁ、遠距離タイプもいるだろうな。
だが、そんなカッスカスの弾幕当たる理由がねぇ。
避けて魔法を放った直後の術者の元へ行き、首を刎ねる。
次いで、もう一人の術者の元へ行くと
「調子に乗るなよ。二人減ってもこの人数!魔法も無しに勝てるわけねぇだろ!」
「テメェらを殺せば……俺達は」
「ヤってやる!!」
三人か。
もう少し。
「お前らの攻撃は当たんねぇよ」
後ろに一回飛んで三人を引きつける。そのまま三人に背を向けたまま走る。向かう先にはまごまごした別の二人がそこにいる。
そこへ突っ込み一閃。
二人の首をはねた。
そのまま俺は動きを止めずに走りラチュの元へ。後ろでまたガタガタ言って追いかけてきているが無視して。
「パル!今だ!」
合図を送ると、それが分かっていたかのようにパルとミラの二人が一斉に走り出す。
合計四人殺し、三人引きつけ不安要素の高いラチュの元へ来た。これで確実にあいつらを逃がせる。
「“オオシ”逃すな」
〝おう〟
ラチュが何か呟くと、青い拳大の光がパルとミラの方へ飛んでいく。
やべぇっ!
「パル!後ろからなんか来んぞ!」
そう叫び、ラチュに飛びかかると。
「お前も俺を舐めすぎだ」
そう、ラチュが呟く。
すると目の前にいたはずの姿が消えた。
そう思った瞬間、顎に強烈な衝撃が走る。
速ぇ。
しゃがみこんで、俺の視界から外れて一気に俺の顎を刈り取りに来やがった。
驚くべきは俺の視界から消える為にしゃがみこんだ時のスピード。
普通じゃねぇ。
衝撃も束の間、パルとミラの悲鳴が聞こえ、そちらへ目をやるとパルがミラを庇うように二人倒れ込んでいた。
その状況を作ったであろう青い光はラチュの元へふわふわと飛んで戻ってくる。
「紹介しよう。コイツはオオシ。俺様のガディだ。風のフェアリークラスで、タイプは見ての通りバードだ。スピリッツとはワケがちげぇだろぉ?」
クソが、寝てる場合じゃねぇだろ俺。
どうするっ!
考えろ。
まずは状況の整理だ。
残る敵は七人。その中の一人はフェアリークラスのガディを持ってる。こいつの能力はまだ判断しきれない。
だが、残りの六人の能力は下級魔法を行使できる程度。
こっちは、ミラが足を怪我してんな。
パルはボロボロ。風の魔法でやられたか。
だが、そんなに深い傷ではないみたいだな。俺の目と合うパルの目は死んでない。俺の行動を待ってる。
そうだ。
こんな俺を信じて待ってくれてる。
「おぉ。今のを食らって立つかぁ」
痛ぇ。
まだ目がチカチカしやがる
「突然だったから驚きはしたが、大したことねぇな。しかしフェアリークラスのガディも憐れだな。お前みてぇな奴が主人でよ」
「口の減らねぇガキがぁ、いい加減にしろよぉ!」
ラチュがキレてオオシと呼ばれたガディが、人の顔程の風の礫を作り出す。
頼むから今のうちに逃げてくれ。
今の俺にはこうやって挑発かけて周りを見えなくさせる事で精一杯なんだ。
今ならラチュもオオシも周りの奴らも意識が俺に向かってる。
今逃げてなかったら後でぶん殴ってやる。
「死ね」
そう吐かれた言葉と同時にオオシが風の礫を吐き出した。
衝撃に備え腕を十字に顔と体の急所を守るように構えた。
すると、右半身に強烈な突風が吹き付けられ思いっきり吹っ飛んだ。
なんだ!?
五メートル程無様に転がり飛んだがダメージは無い。
何が起きたか分からずに、俺が元いた場所を見ると直径三メートル程のクレーターが出来ていた。
これは、痛いじゃ済まなかった、かもしれない。
そんなこと思っていたら、そのクレーターの淵にボロボロのパルが立っていた。
「バカ兄貴!今のうちにに逃げろとでも思ったか!?どうせ逃げなかったらぶん殴るくらい思ってただろ!?今のを食らってたら痛いじゃ済まないだろ!!!死んだら殴る事も出来ないんだからな!」
エスパーですか?
内心全部サトラレちゃってますか?
思った事全部分かられちまってるのは恥ずいなおい。
しかしそうか。
パルが俺を魔法で吹っ飛ばしてくれたのか。
俺を守る為に。
「パル」
「何」
めちゃくちゃ怒ってんなぁ。
当たり前か。
こんな情けねぇ兄貴見てたらイラつくのも当然だ。
なら、兄の威厳を取り戻してやる。
ゆっくり歩きラチュを睨みながらパルの横へ立つ。
「やるぞ。二人で」
「当たり前だよ。次僕達の前で死のうとしたら許さないからね」
「約束する」
「ミラちゃんにもだよ」
「あぁ」
離れたところにいるミラの方を見ると、頬を膨らませ腕を組んで、怪我をした足を投げ出し座っている。
やっぱ怒ってんなぁ。
さっさとケリつけて機嫌とらねぇとな。
「魔法使えんのかぁ。どこまでも俺様をコケにしやがって」
ラチュはイラつきすぎて俯き、震えながらそう言った。
周りの奴らは気づけばラチュの周りに集まって、どうしたらいいか分からないんだろう、オロオロしている。
「今がチャンスだ。俺は何にも考えないで突っ込むから援護しろ」
「全く、無茶苦茶な作戦だよ。でも、任せて。兄さんには誰も触れさせない」
さぁ行くぞ。
第二ラウンドだ。




