第十六話 最悪の始まり
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最悪だ。
「その目つき変わらねぇなぁ孤浪よぉ。お友達もあの時と同じじゃねぇかぁ」
「テメェの方は随分とお友達が増えたか?ラチュ」
これはやべぇ。
ラチュが出てくるまで全く気付けなかったぞ。まだ姿を現してないが完全に囲まれてやがる。
十人くらいいるか?
「余裕だなぁおい。あんまり大人を舐めるもんじゃねぇぞ?ガキィ」
「そのガキ相手に何人連れてきてんだよテメェは」
「いいじゃねぇか。楽しいことは皆で分かち合わねぇとな?」
ラチュがそう言うと周りの茂みからぞろぞろと身なりの悪い連中が姿を現した。その中にはやはりジトもいる。今にも殴りかかってきそうな剣幕だが不思議と黙って大人しくしてやがる。
「兄さん。この人達って」
「あぁ、あん時の奴らだな」
「あっ!一年前にミラの髪飾り盗って、ミラとパル捕まえてお金取ろうとした汚いところに住んでる不潔な人達だ!」
はい、ミラ説明ありがとう。
まさかこんなにタイミング良く出会っちまうとはなぁ…………って、んなわけねぇだろ。
タイミング良くコイツらが、この人数集めていた時に俺達が皇都を出た?そんな滅多な事はない。
コイツらは俺達がここに来るのを知っててこの人数を集めた。
じゃあ、俺達がここに来た事をどう知ったか。
俺達がここに来るのを決めたのは今日だ。そしてそれは、俺たちの誰も他の第三者に伝えてない。だから、ここに俺達が来る事を誰かから聞いた可能性は薄い。
もしあるとすれば。
「俺達を監視してたのか」
「……すげぇな。もうそこまで考え付いたのかよ。マジでどんなガキだよ」
だが、俺達がいるのは貴族街だ。コイツらがおいそれと簡単に入れる場所ではないし、入ったとしてもずっと俺に気付かれず監視をしていた?コイツらが?
流石に冗談がキツイ。
「お前らに協力者がいる……若しくはお前らが協力者、か?」
「っ!?……孤浪よぉ。そこまでいくと気持ちが悪ぃなぁ…………なぁ。最後にもう一度だけチャンスをやる。こっちに戻って来い。なに、悪いようにはしない。約束する」
クソが。
前者か後者どちらかは分かっておきたい。
だが、間違いなくどちらかではある。
前者ならば、こいつの粘着質な恨みでひたすら俺を殺す為に情報を集め回っていた。
だとするなら、どうにかここをバックれて貴族街に帰れたら勝ち。欲を言えばラチュは潰しておきたいが。
だが、後者になるとかなり面倒だ。
おそらく狙いは俺ではなく、パルかミラ、それかうちのジジィになる。
いわゆる貴族同士の陰謀的なやつ。
そうなると、コイツらから逃げるにしても潰すにしても今は何の解決にもならない。
だからまずはっきりさせなきゃならない。
「何が約束する、だ。そっちに戻った時点で俺からすりゃもう悪いようになってんだよ馬鹿野郎」
「死ぬよりぁマシだろぉ?」
「戻ったとしてもどうせ死ぬ役回りだろ」
「いや、お前の能力を買ってるってのは事実だ。だからお前は俺の有能な駒として末永く働いてもらう」
「パルとミラはまた攫ってくのか?」
「いや、そいつらはころ、っ!?」
突如ラチュの目の前に何者かが現れた。
ラチュの言葉を遮ったのは明らかにスラムの人間ではない。綺麗な黒いローブで全身を纏い隠している怪しげな奴。
「無駄話が過ぎます。予定通り三人共今すぐ消してください」
平たすぎる無機質な声。男女の区別も付かない。冷たく人の声ではないかの様な生気の薄い声だった。
「ぅっ、居たのかよ。分かった」
「よろしくお願いしますね」
正体不明の黒ローブはそう言い残しまた消えた。
しかしあのラチュが文句一つ言わずに言う事を聞く、か。何者かどうかは置いといて、これではっきりしたな。
確実に後者。
私怨では無く貴族絡みの面倒事って事だ。
そうじゃなければ貴族の子供を的にして即決殺すにはならない。
つまりパルかミラを消したい奴らが期を伺い俺達を監視していた。そして期が訪れ用意周到に足の付かないスラムのゴミを集めて金でゴミに的を消させる。
多分遠からずこんな感じだな。理由と、的がパルかミラかは分かんねぇけど、生きて戻って二人に話せば大方分かるはずだ。
それよりもあの黒ローブの正体が分かれば一番早いんだが
「えらい素直じゃねぇか。今のはお前のママか?」
「孤浪……あんまり俺を舐めるもんじゃじゃねぇぞ。立場を理解しろ。お前は今から殺されんだよぉ!」
ダメか。
まぁ、そんなことより本気でここから逃げなきゃならないんだが割とキツそうだな。ガディっつったか。あの魔法生物は正直まだよく分からん。ここはシカクではないからコイツら全員使ってくんだろうな。
それに引き換えこっちは体力馬鹿と魔法ビビりとおミソの三人。
控えめに言って詰んでるな。
「ミラ、頭抱えてしゃがんでろ。パルは何があってもミラを守れ。そんで合図したら開いた道から一気に走り抜けて助けを呼べ。」
「ダメだよ兄さん!」
「お前も戦うってか?じゃあミラはどうすんだ?」
「そ、それは……」
「大丈夫。俺を信じろ。だか、もし万が一ミラを安全な場所まで連れてっても俺がまだ戻らなければ、その時はパルキア、助けてくれ」
「……分かった」
「ミラも分かった。オーカとパルを信じる」
さて。
これで俺の仕事は決まった。
道をこじ開けて魔法ビビりとおミソの逃走補助。
サクッと終わらせて柔らけぇいつものベッドで寝る。
いいモチベーションだ。
更に盛り上げるなら明日はミラのデザート付き大盛りランチだと思って頑張りますか。
「よし!オメェらぁ!ガキを三人消す簡単なお仕事だ!!!」
「ギャーギャーうるせぇなぁ。まだ、ブラシープの方が行儀がいいぜ」
一斉に何かがキレた音が鳴り響き、それが開戦のゴングとなった。
「殺れぇぇぇ!!!」
「「「「おおぉぉぉ!!!!」」」」




