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最後の結婚式――わたしたちが幸せになる方法なんてあるの?  作者: 赤城ハルナ/アサマ
第四部 過去の清算

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ラストじゃないラストダンス

三人の男性との関係を改めて考えるセレーナです。

 年が明け、王宮が主催する新年の舞踏会の日が来た。

 首都と近郊の貴族たちが総出で出席する、それはそれは華やかなパーティーだ。


 昨年に次いで二回目のわたしは、今回はラファエル様にエスコートされて参加した。前回は父とだった。ラファエル様はメリディアナ皇国使節団の一員なので、無条件で参加することができる。

 ヴィセンテ家当主になったにも関わらず相変わらずノルデン国にいる彼は、わたしの婚約者になったわけではない。従兄だということでエスコートしてもらったのだ。

 ヴィセンテであっても亡くなったわたしの実父とは関係ないということで、ソアレス侯爵家からもアールグレン父からも(一応)認めてもらっている。


 実父のことは……正直どう思っていいのか分からない。

 今まで会ったこともない人を父ですと言われてもね。

 墓参りへは行こうと思っている。『マリア』といういい名前をもらったし。





 ファーストダンスは今日のエスコート役、従兄のラファエル様と。


 黒髪をキッチリ切り揃えて後ろになでつけた高身長な彼は、ノルデン国ではひときわ目立っている。彫りの深い濃い風貌も。ラテン系(?)のような感じ。髪と目の色はわたしと同じだけれど、母方の柔らかな雰囲気を持つわたしとは少し違う。

 どんな黒よりも黒い漆黒のテイルコートは、たぶん最上級の仕立てだと思う。カフスとボタンはゴールドにエメラルド。これはわたしの母の目の色だとか。

 わたしの髪飾りはヴィセンテ公爵家から贈られた、ティアラのような空色のヘッドジュエリー。田舎娘のわたしに似合うかどうかは……?


「セレーナ嬢、ファーストダンスを受けていただき、光栄です」

「どういたしまして」

「僕はまもなくメリディアナ皇国に帰国します。ヴィセンテ家を継がなければならないので、使節としての役割は降りなければなりません」

「もうあまり会えないんですね」

「そんなことはありません。僕の当主引き継ぎとセレーナ嬢のお披露目パーティーを、来年ヴィセンテ家で行います。そのつもりで準備をしています」

「はい、手紙を読みました」

「そうすればセレーナ嬢はヴィセンテ家の令嬢として、書類だけではなく内外に認められる。もちろん出席してくれますね?」

「……はい」


 相変わらず強引な人。

 周りが好奇の目でわたしたちを見ているけれど、気にしない。大好きな家族が支えてくれるから気にならない。


「できればそのとき、僕の婚約者としても紹介したいのです」

「えっ? わたしたちそんな関係では……あの、というか、まだその返事はできないかな、と……」

「これからそういう関係になればいいのです」

「えぇ……どうして?」

「僕は正当なヴィセンテになりたい。それに、セレーナ嬢の漆黒の髪と濃紺の瞳が好きだ」

「……(うわわっ、ミスター・ミハイロフよりも強敵だった!)」


 わたしにメリディアナ皇国へ嫁げと?

 公爵家だよ? エントランスの大理石像につぶされて死ぬ未来しか見えない。

 壁が厚すぎる……ラファエル様は嫌いではないけれど……。

 わたしの出生の秘密を打ち明ける必要もないし、従兄だから仲良くできればと思ってはいるけれど……。


 そしたらわたしのギフトブックはどうなるの?


 それにしても密着度すごいんですけど。ラファエル様に抱かれているみたい。これではまるで……。


「僕たち、恋人同士のようですね」

 そうそう、それそれ。

「僕はヴィセンテ家では孤独です。セレーナ嬢をこのまま皇国へ連れ帰りたい」


 それって社交辞令?





 セカンドダンスはミスター・ミハイロフと。

 彼は外国人だけどハンソン家とつながりのある貴族だから、レディー・カリーナのパートナーとしてエスコート役をしている。


 今日の彼は……おおっ、濃紺のテイルコートにホワイト蝶ネクタイ、ゴールドにブルートパーズのカフスとボタン。こんな嫌味なほどおしゃれな服を新調できるのだから、相当儲けているんだわ。何人の女性をたらしこんでいるのかな。

 愛人第何号までいるのかな。


 わたしのイヤリングはミスター・ミハイロフから。淡い水色のオパール。さりげなさそうでいて目立つところが彼っぽい。


「ハンソン夫人と一緒ではなかったんですか?」

「彼女とのダンスはもう終わったんだ」

「もう?」

「僕は最初、何年かで次の国へ行こうかと思っていた……んだが、気が変わったよ」

「それなら、これからどうするんです?」

「ノルデン国で画商をしながら、セレーナ嬢のギフトブックの制作をしようかなと思っている」

「そうなんですね、嬉しいです。これからもよろしくお願いします」

「よろしく、公女様」

「その言い方、好きではありませんの」

「フッ、では、僕の可愛いレディー」

「参りましたわ、ミスター・ミハイロフ」


 わたしの秘密を知る数少ない人のひとり――というか、秘密そのもの。今となれば父やクリス叔父様も知っているとは思うけど。


「もしも、もしもだよ、セレーナ嬢がどうにもならない状況に陥ったら、僕のところへおいで」

「えっ、ミスター・ミハイロフのところに行ってもいいの(駆け込み寺)?」

「もちろん、いつでも歓迎するよ。僕が今借りている家はそれなりの広さはあるから。いずれは郊外の屋敷を買おうかな。そしたら使用人も増やそうと思う」


 それはミスター・ミハイロフの夢? 妻がいて子供がいる当たり前の家庭?


「もしものときはよろしくお願いします。もしも、ということがあるのなら」

「こちらこそ、レディー。お待ちしております」


 フフフッと一緒に微笑む。

 秘密を共有しているみたい。

 もちろんギフトブックのことは、夫になる人には打ち明けるつもり。





 ミスター・ミハイロフとのダンスが終わると、トーマス様がわたしの前に現れた。緊張しているのか、無理して微笑んでいるみたい。


 彼も漆黒のテイルコート、たぶん最上級の仕立て。カフスとボタンはシルバーにサファイア。ヘイデン領はアールグレン領よりも広くて都会だものね、資産が多いのかも。

 白バラをモチーフにした左手のブレスレットはトーマス様から。地味であまり主張しないのが彼らしい。チェーンはシルバーだから、彼のカフスやボタンとお揃いといえなくもない。


「セレーナ嬢、ぼくとダンスをお願いできますか」

「喜んで」


 最後のダンスはトーマス・ヘイデンと。


 ――地味で不器用で勘違い野郎だけど、誠実な人。

 今なら母の気持ちが少しだけわかる。婚約を破棄されたあと、どうして異国の、それも目立たないフツメン父に付いて来たのか。


「メリディアナ皇国の公女様とダンスできるなんて、光栄です」

「う~ん、そういうことになりましたけれど、わたしはあくまでもアールグレンですよ?」

「そう言っていただけると安心します。セレーナ嬢が遠くへ行ってしまったみたいで心細かったから」

「皇国へは行かないと思います(ギフトブックのことがあるから)」


「それなら……今度正式にアールグレン家へ訪問してもいいですか?」


 正式に訪問……ということは、まさかのプロポーズ?


「お分かりだと思うんですけど、わたしは複雑な立場なんです。こんなわたしでもいいんですか?」

「ぼくは気にしません」

「わたし……何もできないアホの子なんですけど」

「そんなことは……ご自分のことをそんな風に言っては……」

「だって本当なんだもの。刺繍や縫物もできないし、ピアノもあまり弾けないし……(平面的な)絵は描けますけど……詩も少しは書けるかも?」

「か、構いません。セレーナ嬢はぼくにとって幸福の女神なんです」


 私生児モドキでもいいの?

 何もできなくてもいいの?

 ホントに?


 そういえば母も伯爵夫人としては何もしていない……というか、何もできなかった。父も社交界は苦手らしく、パーティーへはほとんど行かなかった。この舞踏会だって、母を気遣って参加していない。

 その代わりにソーニャとクリス叔父様が全部背負ってしまったのよね。

 クリス叔父様は遊んでいるようでいて、ちゃんと社交をしているもの。


(苦労かけてしまってごめんなさい、ソーニャ、クリス叔父様。わたしは甘えてばかりだった)


「わたしは信頼できる、絶対にわたしを裏切らない人がいいです……」

「僕はセレーナ嬢を一生涯守ります、裏切りません!」


 そうかな?

 そうなのかな?

 信じていいのかな?

 こんなわたしでも結婚できるのかな?

 お母様と離れても大丈夫なのかな?


「……近いうちに(いつとは言ってない)お返事します」


 どうしよう?





「お父様はどうして婚約破棄されたお母様に求婚したの? 一度も会ったことがなかったのに」

「成り行きだよ」

「は? 成り行き?」

「だって、ものすごく美しい人だったからさ、婚約破棄された今がチャンスだと思ってね」

「そ、そんな理由で……?」

「結婚なんてそんなものじゃないかな、勢いだよ(お陰でえらく大変な目にあったが)」

「えぇぇ……」


「セレーナは……もしもラリサのようになってしまったら、と思ってるんじゃないのか?」

「……」

「そんなことは心配しなくていいし、そんなことには(滅多に)ならないよ。セレーナは自分の幸せを考えればいい」


 恐怖心がフッと解けた気がした。


「わたし、結婚するのならお父様みたいな人がいいかも」

「娘にそんなことを言ってもらえるとは、嬉しいね」

「今までわたしを育ててくれてありがとう、お父様」

「急にどうした?」

「言いたかっただけ」

「そうか……」

☞次回で最終回です。作者的には、目立たないけれど真のヒーロー、ユリウス・アールグレンの回想で終わります。


☞今後どのように転んでも、セレーナにはもれなくビジネスパートナーのミスター・ミハイロフがくっついて来ます。また、情熱の国の従兄ラファエルはセレーナを奪おうとします。フツメントーマスは強敵に立ち向かうことができるのでしょうか。


☞エピソード別アクセス数を見ると、「オヤジ回はアクセスが少ない!=人気がない!」ことが分かりました(T_T)。最終回はオヤジ回ですが、ラリサとユリウスの結婚がどんなものだったのか、それとほのぼのアールグレン家のその後がちょこっとだけ出てきますので、何とぞお読みくださいませm(_ _;)m。

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