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最後の結婚式――わたしたちが幸せになる方法なんてあるの?  作者: 赤城ハルナ/アサマ
第四部 過去の清算

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二度目のお見合いは自慢のカーテンで

最終章の第四部は今まで出会った男性たちとの後日談と両親のその後です。

あと五話だけお付き合いくださいm(_ _)m。

トーマスは自分で選んだカーテンがご自慢です、エッヘン!

「アールグレン家の娘、セレーナ・マリア・アールグレンでございます。本日はよろしくお願いします」


 わたしは実父からいただいた名前『マリア』を入れて挨拶をした。

 結構気に入っているのよね、マリアっていう名前。


 メリディアナ皇国から帰国して五日ほどになるかな。ついこの前のことなのに、何だか遠い過去みたい。


 この日はトーマス・ヘイデンと二度目のお見合いをすることになったのだ。

 まだギリ社交シーズンなので、場所は首都のヘイデン家タウンハウスで、今回は二日間だけ。

 移動は馬車で二十分ちょっと。

 ヘイデン家が馬車で迎えに来てくれたのだ。

 今回も侍女に擬態したソーニャと一緒である。ソーニャはわたしが前回みたいなアホをしでかさないかの監視役なのだ。


『今回は絶対大人しくしてもらいますからね、セレーナ。前回のようなことをやらかしたら、一か月のあいだお菓子だけで自室謹慎ですのよ』

『イチゴやベリーやジュースは含まれるの?』

『果物もダメ、ショートブレッドと水だけにしてあげる』

『殺す気か!?』


 くっ、アールグレン父のスパイめ!


「ようこそヘイデン家へ、姫」


(また姫?)


「最初にお会いしたときは大変無礼な対応をしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。今回は謝罪も兼ね、そのときの埋め合わせをしたいと思っています。何なりと、ぼく、いいえ、姫のしもべに要求してください」


 しもべ? ロデム? もしかして変身するの?

 にゃにゃにゃにゃにゃ〜ん。


「こちらこそ、先日はわざわざメリディアナ皇国まで迎えに来てくださり、感謝しています。ノルデン国に帰るきっかけになりました」

「あれは……アールグレン伯爵の頼みでしたので」

 そう言うと、トーマスは自らわたしをエスコートして屋敷の中へ案内した。


(前回とは段違いだわ……もっとも前回は顔合わせさえしなかったし、お見合いとはいえなかったんだけど)


 トーマス・ヘイデンは応接間のソファにわたしを座らせて跪き、片手を取って軽く唇に触れる仕草をした。

 仕草だけなのね、超紳士だわ。直接キスしたラファエル様が情熱的すぎるんだわ。しかも結構ハードだったのよ??

 あのときのことを思い出すと手がムズムズするし、恥ずかしくて仕方ない。


 前回はお見合いとは言えなかったから(何だったんだろうねぇ……)、今回が実質一回目のお見合いになる。


「改めて自己紹介させてください、ヘイデン伯爵家のトーマスです」

「アールグレン家の娘、セレーナ・マリア・アールグレンでございます。短い間ですが、お世話になります」


 ヘイデン領主屋敷とは違い、ここは雰囲気が柔らかい感じ。

 あっちはまるでホラーハウスだったものね。それはそれで小説の舞台になりそうだから筆が進んだけど。今回は二日間だけなので小説を書くなんて悠長なことはしていられないし、そんなことをしたら一か月お菓子と水だけという拷問が待っている。


 ひととおり挨拶のティータイムが終わると、わたしと侍女服のソーニャは客室に通された。


「こちらがセレーナ嬢に滞在していただく客間です」とメイド長に案内されたので、以前と同じ言葉をつぶやいた。

「わたし、もっと小さいお部屋でいいのです、ここは広すぎますから」

 とたんに(ちょっとセレーナ、だめよ!)とソーニャに耳打ちされた。


「セレーナ嬢……それは……」

 メイド長は驚いて、執事に一瞥した。

 あれっ、見た事のある、すだれハゲ……領主屋敷にいた執事だったかも?

「いいえ、お嬢様、以前のような失礼なことは今後一切しませんとお約束いたします。もしお嬢様に対して適切ではない態度をとった者に対しては、すぐにわたくしに申し付けてください、お願い申し上げます」と、執事は真っ青な顔をして言った。


(まさか、最初のわたしの態度は逆効果だったの? 結婚したくなかったから悪女を装ったのに。そのあと虐げられた令嬢を気取ったのに)


 仕方ないので、今回は何に対しても『はい』という曖昧な返事をし、婚約には興味がないという態度をとることにした。


(だ、だって、ここまでされたら婚約に進んでしまうじゃない……そしたら即結婚じゃない……まだ婚約とか結婚は怖いのよ)


(わたしはミスター・ミハイロフの元で作家としてやっていきたいのに……アールグレン屋敷で母の様子を見ながらのほほんと暮らしたいのに……伯爵家の奥様なんて荷が重すぎる……わたしはソーニャみたいにはなれない。公爵家よりはマシかもしれないけれど、無理無理……!)


「ご覧ください。屋敷全体をセレーナ嬢に相応しく明るめの内装にしました……ダマスク織の花柄カーテンとか……いかがでしょうか?」


 カーテン?





 貴族御用達の高級レストランで晩餐をとり、ヘイデン家のタウンハウスに帰ってからは、二人の使用人にお世話された。

 トーマス様との話もそれなりに……したかな? メリディアナ皇国からの帰り道と、カーテンと調度品の話ばかりしていたような……。

 そうそう、一回目のお見合いのとき何があったかを(一部を隠して)打ち明け合ったら、謝罪の応酬になったっけ。


「セレーナ嬢はメリディアナ皇国公爵家の令嬢でもあったんですね」

「はい」


 トーマス・ヘイデンがヴィセンテ家へ迎えに来た時点でバレたよね。悪く言えば私生児。良く言えば両家の血筋。どっちに取るかは個人の思惑次第。

 ハァ……。


「そのようなご令嬢とお近付きになれ、ぼくは大変光栄です」

 トーマス様はそういう風に受け取ってくれるの?

「はい。ですが、わたしはあくまでもアールグレンです」


 わたしはただの田舎貴族だからね?

 アールグレン領はヘイデン領よりも田舎だからね?


「あ、あの、いきなりこんなことを申し出て不躾なのかもしれないのですが……ぼくは、できましたらセレーナ嬢と結婚したいと思っています……考えていただけたら幸いです」

「あっ……今はまだお返事できませんが、考えるだけなら……」


 あぁ、とうとう『結婚』というワードが聞こえたわ。

 ラファエル様に次いで二人目。

 どうすればいいの?


『虐げられた令嬢――勘違いからの求婚?』



* * * * * * * * * *

『万が一セレーネがヴィセンテへ嫁ぐことになったら、〇〇〇……』

 そんな手紙を読んだ、頭頂部の怪しい伯爵は頭を抱えた。

「いやいや、『ラリサとセレーナが幸せになってくれればそれでいいんだ』と仰ってましたよね?」

* * * * * * * * * *

☞トーマス・ヘイデンに対してはまだまだ猫かぶりなセレーナでした。本性を現したときトーマスが耐えられるかどうかは??

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