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最後の結婚式――わたしたちが幸せになる方法なんてあるの?  作者: 赤城ハルナ/アサマ
第三部 ヴィセンテ公爵家

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20/32

出会いのガーデンパーティー

最後にセレーナ争奪戦に名乗りを上げたラファエル。本当の目的は……。

 自室に閉じ込められて三日目。


 思い切り泣きはらした結果、だいぶ落ち着いた。

 娘を監禁するなんて酷い父親。DV反対!

 さすがは養父だね、わたしへの愛情なんてないのよ……と思ったけれど、ひとりで考える時間を持たせたかったのかもしれない。少し冷静になれたから。


 こうなったら家出して好き勝手しようかな。

 どうせ結婚なんてする気ないし。

 そんなことに夢を見る自分ではないし。

 前世は独身のまま事故死したけど、独身でも仕事をしながらそれなりに楽しく暮らしていた。


 祖父母からのお金でアパートを借りて、ギフトブックの売り上げで細々と暮らせればいいかな。


 あぁでも……頼りのミスター・ミハイロフはいないんだった……いつ戻って来るのか分からないんだった。

 ハァ……。


「セレーナ、旦那様のお許しが出たわ。ここでアフタヌーンティーしましょ!」


 ラズベリータルトとジンジャークッキー、紅茶のセットを載せたワゴンを自らゴロゴロ引きずり、ソーニャが部屋に入って来た。

 美味しそうだけど、イマイチ食欲が……。


「お許しって……」

「謹慎処分は解かれたわ。気晴らしに、わたしたちと一緒にパーティーへ行きましょうよ。来週テオレル家でちょっとしたガーデンパーティーがあるんですって。そこにクリストフが招待されたの」

「ガーデンパーティー……行きたくない。ミスター・ミハイロフがいないのに……」

「あの方は外国の貴族だから、お付き合いとなるとややこしいことになってしまうわ。ましてや結婚なんて。セーヴェラ国は遠いのよ。この国の殿方を見つけましょう。ほら、例の坊やとのお見合いもあることだし」

「坊や……だけど日にちは決まってないはずよ」

「セレーナは覚えていないと思うけど、あれから大変だったんだから。坊やはセレーナの手を離さないし」


 トーマス・ヘイデンと会うたびに怪我しているし、手を握られてない?

 わたしはあのときの感触を思い出すように、両手を握り締めた。


「ヘイデン家はお隣だから、旦那様もクリストフもわたくしも安心だわ」

「何が安心なの?」

「セレーナがアホっぽいことをしでかさないように監視できるからよ」

「酷い!」


 そんなこんなでソーニャとクリス叔父様とで出席したガーデンパーティーにて、新たな出会いがあったのです。





 真夏の昼下がり。

 ビュッフェスタイルの軽食を並べた大きなテント、多数の白いテーブルと椅子。アフタヌーンティーを楽しむご令嬢やローンテニスに興じるご令息、散歩を楽しむカップル。

 明らかに婚活パーティーじゃない。

 婚約者のいるクリス叔父様が招待されたのはなぜ?


 殿方そっちのけでソーニャとおしゃべりし、お菓子に夢中になっていたら、クリス叔父様に『いい加減にしなさい二人とも、みっともない』と諫められてしまった。

 だってここのお菓子、美味しいんだもの。


 そのとき後ろから聞きなれない男性の声がした。


「あぁっ、奇跡だ!」


 えっ? 誰?


「あなたは……もしかしたら、レディー・ラリサのお嬢様ではありませんか?」

「えっ(何なの)?」


『ラリサ』はわたしの母の名前だけど。

 母を知っているなんて、何者?

「やっと見つけました、ヴィセンテの姫……」

「ヴィセンテの姫?? うひゃぁっ……」

 いきなり手首をつかまれたわたしがバランスを崩してよろけた途端、ウエストごと抱きかかえられた。目と目がバッチリ合う……いや、いきなり何ごと?

 ミスター・ミハイロフにさえこんなことされなかったのに。

「あ、あのっ?」

「あっ、失礼しました、レディー」


 わたしと同じ漆黒の髪に空色の目をした男性がいた。

 クリス叔父様よりは背が高くて若い感じ。眼力が強く、情熱に満ちた表情に加え高い知性を感じる……決してクリス叔父様の知性が低いと言っているわけではないのよ、ホホホ。


 ――彫りの深い、濃い感じの風貌は――ソアレス侯爵家のご親戚?


「失礼ですが……」

 クリス叔父様がわたしの前に立った。


「あぁ、無礼なことをしてしまい大変失礼いたしました。僕はメリディアナ皇国のラファエル・デ・ヴィセンテと申します。現在外交使節団としてノルデン国に長期滞在しております。

 ご令嬢が僕の存じております女性と雰囲気が似ていたものですから……もっとも、レディー・ラリサをお見かけしたのは十八年以上も前のことで……」

「……勘違いではありませんか。こちらは私の姪で、ノルデン国の者です。メリディアナ皇国とは関係ありません。失礼いたします」


『行こうか』とクリス叔父様に背中を押され、その場を去った。


「お待ちください!」





「知っている人だったのかな、クリス叔父様?」

「メリディアナ皇国ということはソアレス侯爵家と関係があるのかもしれないが……兄を通してでないと関わることはできないな。兄はメリディアナ皇国のこととなると神経質になるんだ」

「お祖父様と関係があるの? 確かに髪の毛の色は同じだけど、家名は違うわ」

「皇国に関しては、ソアレス侯爵家以外と関わってはいけないと兄から釘をさされている。こんな内輪のガーデンパーティーに皇国関係者がいるとは思わなかったよ、まいったなぁ」

「そうなの……」

「早く帰って旦那様に知らせましょう。セレーナに何かあったらソアレス家から怖い大佐様が飛んで来るわ」


 ヴィセンテの姫――わたしのこと?

 母の知り合い?

 もしかしたら、わたしの実父を知っている?

 だとしたら……会ってみたい。


 そして帰り際、黒髪の男性からそっと一通の手紙を渡された。





「お父様、パーティーで出会った男性にお手紙をいただいたの。お父様にって」

「どんな人だったかな?」

「黒髪の男性だった。彫りが深くて……髪と目の色がわたしに似ていたような……」


 顔をしかめながら父は眼鏡を掛けて手紙を読んだ。そりゃあもう、真剣に。

 やがて表情が厳しくなり、しまいには般若面になった。


「何だと! 今さら会いたいだと!? ふざけるな!!」

 こ、怖い、父のこんな顔、見たことない。

「えっ、どうかしたの?」

「あ……あんなことをしでかしたくせに、今さら……!!」


 父が本気で怒るところなんてはじめて見た。誰よりも温厚な人だもの。


「あんな奴、さっさと死んでしまえ!!」


 えっ、えぇ~っ……。





「セレーナ、しばらくメリディアナ皇国へ行くといい。旅行だと思って」

 パーティーの翌日、そんなことを父から言われた。


「どうして? 確かにパーティーで会った人は皇国の人だったけど。わたしは皇国に招待されたの?」

「あぁ、そうだ。一人では危険だから、クリスとソーニャを連れて行くといい」

「旅行……なのよね?」

「そうだ。ラファエル・デ・ヴィセンテという男性に招待された。滞在先はたぶん公爵家だ」

「皇国の公爵家ですって、そんな凄いお屋敷へ!? お父様は行かないの?」

「あんなところ、招かれても行かないね」

「そうですか……」


 皇国が嫌いなのかな?

 お母様の故郷なんだけど。

 それにしても、侯爵家ではなく、なぜ公爵家?


「返事を書くから旅の準備をしなさい。クリスとソーニャにも伝えておく」

「はい」

「あちらでヴィセンテ家の当主に会ったら、金をしこたま分捕って来なさい」

「金……?」

「そうだ。なるべく多く分捕るようにな。アウグストはもう虫の息らしいから、ハハハハハッ!」

「はいぃ?」


 お父様、頭大丈夫?

 頭頂部が薄い悪の帝王になってるけど?

 ソアレス侯爵家なら分かるけど、わたしとヴィセンテ家にはどんな関係があるんだろう。


 ヴィセンテ……。



* * * * * * * * * *

『昨日のガーデンパーティーにて、ヴィセンテ家がセレーナに接触しました。皇国に招待されたようです』

 頭頂部の怪しい伯爵は、白髪気味の侯爵に速達を出した。

* * * * * * * * * *

☞セレーナの行動は全て筒抜けです。チクり犯人はあのソーニャです。彼女はセレーナとその父のダブルスパイ(両方から賄賂をもらっている)をしているわけです。ギフトブックのこともバレていましたので、父は禁書決議に反対したのでした。

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