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灯火。  作者: みつ


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8/9

【10分前】

殿畑さんが言う。

「オフレコで御願いね♪

他言無用で聴いてほしいんだけど、

富美子(とみこ)さん、

まさに、名を体現するような方であってな…

貴婦人であって、優しい旦那さん、

子宝にも恵まれた…。

『心配性(しんぱいしょう)』って、かんじだったのかな…う~ん、『憂い病』って、やつかな?

人ってさ、

私が思うに、

やっぱ生まれ持った気質って、あるんだな…

富美子さん、

とくに不幸があったわけでなく、

加齢と共に、段々、情緒不安定に、

なってきてね。

本人が意思表示して、

入院することに、

なったんよ。

主治医が、ちゃんと、ついて、

彼女、

自身が良くなるように、

主治医の言うことを、

ちゃんときいて過ごされたわ…。

で、

『生まれてくる御孫さんに会いたい!』って、

そりゃ、いつも、

それを口にしていた。

面会にさ、

たまに、

髪の色、明るい女子大生みたいなコ、

1人で来るだろ?

彼女が、その御孫さん。」


「そうだったんですね!

富美子さん、やったー!!!!」


「…里村くんには、モニター業務と他の雑務、いろいろやってもらって、

こっち本当に感謝しててさ♪

…その、

里村くんが、

分からんのもムリないと思うんだけど、

D棟で生活されてる方って、少ないじゃん。

その、D棟の方は、

もう己が己で誰なのか、

なぜ、己は、ここにいるのか、

も分からなくなっている方だけなんよ。」


 僕は…

今までの自身の半生から、

理解したつもり…に、なる危うさを知っていた。

だから、

殿畑さんに訊いた。

「…富美子さん、

ああやって、

御孫さんは、会いに来ているけど、

富美子さん、

彼女が、

自身の御孫さんだと、もう分からない…と。」


「100%そうなんだわ…。」

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